つぶや句

夢追いおっさんの近況および思うことを気まぐれに。

街は春めいて

2009-02-23 03:04:13 | 絵・まんが
久々に中央の街へ出た。
拙作4点が展示されてる店に行くためだ。

4点とはいえ作者にとって作品は不肖の子供みたいなもので、
時間が許す限り行ってちょっと隅から覗き見ている。
だーれも見てくれなかったら寂しかろうに、という親バカチャンリンの
心情なのだ。

まあここは喫茶店なので、お客はけっこうやってくるのだが、ギャラリー専門の
会場と違って絵の鑑賞が目的ではないので、ちら…と一瞥するぐらいで、
すぐ新聞に目を落とす人や、一瞥もなくオシャベリに夢中になる人も少なくない。
2時間ほど居て店を後にした。

この日の空は晴れ渡り、ポカポカ陽気だった。時間は昼の12時頃なので
昼飯を食べて帰ろうかと噴水のある公園を通りかかったところ、一組の
バンドが路上ライブをやろうとしているところだった。

ここではいつもいろんなバンドが路上ライブをやっているのだ。
やっているのはいいんだが、どれもこれもありきたりの音で、
何だか似たり寄ったりのもろアマチュアレベルなのである。(まあ…
わたしもたまにここを通るだけなのだが…)

この日は男3人女1人の4人グループで、楽器の前で何やらジャレあっている。
またか…「いかに路上とはいえ、なあなあの感じでやるんじゃないぞ、気合を
入れてメジャーを目指さんかい」と、心でちょっと叱咤激励しつつ通り過ぎようと
した。

するといきなり「ドン!ドン!」とドラムの音がした。これはいわゆるドラマーが
足で踏んでたたくやつなのだが、この何でもないような音がわたしの胸に
響き渡り、通り過ぎようとしたわたしの足は歩こうと上げたままピタリと
止まったのだ。

続いて「ビヤーン!」とリードギターの音が鳴り、いきなり演奏が始まり出した。
わたしはまだ足を上げたまま止まっている。やがてボーカルの女性が歌い出した。
わたしの足はやっと下がったが、そのまま後ろ歩きでバンドのほうへ戻り出したのである。

全体の音、ボーカルの声、一枚違うレベルを感じたのだ。
しばし一曲聴いた後、チラシを配っていたので、もらって見ると、
「○○堂オーディション最優秀グランプリ獲得!」と書いてあった。

「へ~やっぱり違うんだ」と感心しつつ、もう一曲聴いてその場を後にした。
やっぱり音楽はスゴイと思った。一発の音でわたしの足を止め、後ずさりまで
させてその場に釘付けにしてしまったのである。また音楽コンプレックスが
頭をもたげてきた。

確かに音楽は人間の五感の中の聴覚と視覚の2感を獲得できるので、視覚だけの
絵に比べれば有利だと思うのだが、その不利をなげいてばかりはいられない。
絵は一瞥をもらったときに、その目をくぎづけにできるようなものを描かなければ
いけないのだ。

ついさっきの我が展示作品が、一瞥をもらったにもかかわらず、その目を
くぎづけにできなかったのである。あ~あ情けなや…。

春めいた街のざわめきは、肩を落として歩くわたしにズシリとのしかかってきた。




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