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ぽかぽか春庭「箱根ガラスの森美術館」

2012-09-08 00:00:01 | エッセイ、コラム
2012/09/08
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>十二単日記2012夏(5)箱根ガラスの森美術館

 8月の末に、「娘とふたりで温泉一泊」を楽しみました。

 8月も下旬すぎて、息子がいきなり「来週月曜日から、去年と同じに高野山のお寺に古文書整理のお手伝いに行く」と言いました。「もっと早く言ってくれれば、その間私たちもどこかに出かける予定を組んだのに」と言いながら、ダメ元で、区民保養所に電話をしてみたら、月曜夜なら宿泊可能だというのです。25日に予約を入れて27日月曜日に泊まることになりました。夏休み中の区民保養所なんて、半年も前に予約を入れなければダメと思っていたので、急な予約なのに泊まれることになり、ラッキー。

 区民保養所は、箱根にあります。2年前に姑を連れてきたとき泊まって、食事もおいしかったし、ケーブルカー駅の目の前にあって歩かずに行けるので、また来ようねと言っていたのです。今回は急遽の申し込みだったので、私と娘のふたりだけ。
 この夏、体調崩した姑の病院通いに、娘が何度も付き添ってくれ、お祖母ちゃん孝行をしてくれたので、おばあちゃんのお世話をしてくれたことへの「ごほうび旅行」ということにしました。
 
 急な温泉行き決定なので、とりあえず一日目はガラスの森美術館で手作りガラスアクセサリー作り、2日目は駒ヶ岳へロープウエイで登る、という計画をたてました。宿でのんびり、というのが最大の目的。宿は2日前の予約で一部屋とれましたが、ロマンスカーは、1日前の予約で、並びの席がとれませんでした。行きは、1号車2号者に別れて座りました。

 前回のはこね旅のテーマは「定番観光」で、今回は「通俗とは何か」です。
  観光地が俗化したかどうかの指標は、その地にオルゴール博物館とガラス美術館ができたかどうかでわかる、というのが尺度だというので、どうにもガラス美術館は気恥ずかしい。ルネ・ラリックとかエミール・ガレのガラスは、あちこちの美術館で展示を見てきて好きなんだけれど、観光地のガラス美術館はこれまで入ったことはありませんでした。(観光地のオルゴール博物館は、清里高原「萌木の村」へ行ったとき妹といっしょに体験済み)

 温泉一泊とか観光地でのガラス美術館、なんていうのは「娘へのごほうび」とでも言わないと、私ひとりではちょっと気恥ずかしくて出来ない旅のスタイル。
 一人でリュックしょって、どこにでも寝泊まりする、というバックパッカースタイルこそ我が旅、と思って暮らしてきたので、「ビンボー自慢こそ気恥ずかしい」という世代の娘とは感覚が異なります。

 2年前は強羅公園のクラフトセンターで、吹きガラス製作に挑戦し、娘はお皿を息子はビヤジョッキを作りました。3・11の地震のとき、食器棚のガラスコップやお茶碗がずいぶん割れてしまったときも、割れずに残り幸いでした。
 手作りの品は、世界でひとつだけのものだから、バカラのグラスやセーブルの皿より自分にとっては大切な一品になります。
 今回、娘はガラスのアクセサリー作りをしたいと、ガラスの森美術館の工房へ行きました。
 
 ガラスの森美術館の工房。隣の席は夏休み工作の宿題に提出するらしい小学生の女の子。ガラスを組み合わせて、ひまわり模様を作っていました。娘はクローバー模様を選んで自分なりにデザインして、キーホルダーにしました。とてもすてきなキーホルダーが出来上がりました。
 
 1時からガラスの森美術館の中にあるレストランでお昼ご飯を食べようとしたら、列が並んでいます。待っている間、レストランのサービスコンサートであるカンツォーネの演奏を聞いていました。キーボードの演奏に乗せて、毎時00分から15分間の歌のサービスです。私たちが聞いた日はキーボードがPaolo Mattiello 、歌が Roberto Morgantiでした。

ロベルトさんとパオロさんの演奏youtubeで。
http://www.youtube.com/watch?v=5EqKlI7VKnk&feature=relmfu

 演奏が終わって席につき、娘はローストビーフランチ(ローストビーフ・サラダ・パン・紅茶・シフォンケーキ) のランチセット3680円。私はパスタランチ(からすみとアスパラのクリームパスタ・コーヒー1500円)を注文。

 貧乏性を承知で言うけれど、この「公式ランチ写真」に比べて、実際のビーフはずっと薄かった。

 ちょっとずつ分け合って、両方味見しました。娘が言うには、ローストビーフはまあまあの味だけどだけど、パスタは、クリームソースの味があまり好みではないとの評。味オンチの私も、「アスパラとからすみ」と銘打っているのに、からすみの味は消えていると思いました。
 でも、娘と違って味にうるさくない私は、食事が終わってデザート食べる頃にもう一度カンツォーネの演奏があって、歌を聞きながら楽しく食事できたというだけで十分でした。

 ランチのあとは、ヴェネチアンガラスのグラスやアクセサリーの展示を見てまわり、美術館の中で行われているグラスハープのミニコンサートを聞きました。最初に14:30~14:45の回で4曲きき、1時間かけて館内を見たあと15:30~15:45の回で4曲聞いて、グラスハープもたっぷり聞き、美術館なのに展示よりも音楽が印象に残りました。

クリスタルトリオ

 イゴール・スカアロヴとかウラジミール・ポプラスという名とグリンカ音楽院出身という経歴紹介から見て、3人ともロシア出身と思われます。

 グラスハープというのは、ワイングラスをたくさん並べて、グラスのフチをこすって音を出す楽器です。ガラス美術館に出演のクリスタルトリオのグラスハープは38個のグラス。子どものころ、コップを並べて水を入れて音階を調節し、お箸で叩いて演奏したことを思い出します。グラスハープのグラスはよい音が出るように特別に作られているそうで、手に水をつけてぬらしグラスのフチをこすることによって音を出します。

 こんな音色。
楽器の紹介とユモレスク
http://www.youtube.com/watch?v=24rk7bMf4Lc&feature=fvwrel
モーツァルトのトルコ行進曲
http://www.youtube.com/watch?v=k9yGnKArCAU&feature=related

 井上陽水の少年時代などをグラスハープの美しい音色で聞いたり、「お客さんもいっしょに歌ってください」というので、娘と「ふるさと」を歌ったり、楽しかったです。

 ガラスの森美術館の「クリスタルガラスのアーチ光の回廊」も、お日様にキラキラ光るのを、「わぁ、きれい、きれい」と大喜びで見て来ました。
 いかにも「女、子どもの喜びそうな」という感じの光の回廊も「ローストビーフ食べてカンツォーネ聞いてきらきらガラスアーチを見て喜ぶ」という「通俗とはなんぞや」のテーマの中では、「いいんじゃない」と、思えます。侘び寂びもいいけれど、ま、キラキラクリスタルもたまにはね、というところ。

娘がケータイで撮影した光の回廊

真ん中にいるのは私じゃありません。(こんなに細くない)

 「ヨーロッパ貴族の館」がコンセプトというガラスの森美術館、ひとりで見物したら実に居心地悪かったろうと思うので、娘といっしょに見ることができてよかったです。
 「侘び寂び」の旅なら、一人で居ても駄句のひとつもひねっていればすごせる。けれど、「本物の貴族や現代富裕層には縁のない現代日本の庶民をして、俗流貴族っぽい雰囲気にひたらせる」というコンセプトの中、一人だと落ち着いて俗にひたってはいられなかったでしょう。娘とふたりで、「わぁ、ガラスがキラキラしててきれい!」と言い、「温泉つかってのんびり」と言っていられる平俗平穏の生活をかみしめました。シリアなど、紛争によって市民が殺される事態も続く中、世界中の皆が平和に暮らせますように、と、夕陽の沈む富士山にお願いしました。
 
 結論。「ひとりで通俗をやってサマになるまでには、まだまだ修行が足りない」。

<つづく>
コメント
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