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ぽかぽか春庭「ホテル・カルフォルニア イーグルスvsなかにし礼超訳」

2012-09-16 00:00:01 | 映画演劇舞踊
2012/09/16
ぽかぽか春庭ことばのYa!ちまた>空に月、地に草、唇に歌-踊るために歌を覚える(2)地に草、ホテル・カルフォルニア(イーグルスvsなかにし礼超訳)

 ジャズダンス発表会。ダンス仲間のミサイルママが踊った曲は、「ホテルカリフォルニア」
 2年前の2010年に発表した曲の復習曲。ミサイルママがこの曲を舞台で披露するのは、2011年秋、2012年春に続き3度目ですから、振り付けもしっかり身についていて、動きもきれい。とてもじょうずでした。

 この曲、歌詞の意味を知る前は、カリフォルニアで休暇を楽しむすてきなホテルの歌かと思っていました。しかし、この曲は、アメリカのヒッピーたちが自由な活力を失って精神荒廃の中に沈み、経済優先のアメリカ精神に敗れ、暗い部屋に閉じ込められたまま逃げ場がない、ということを歌ったシリアスな歌でした。
 この歌が今でも少しも古びないのは、アメリカには今もこのホテルカリフォルニアの中に閉じ込められていると感じている人々が暮らしているからでしょう。
 
 この曲を、どうして私たち日本人は「カリフォルニアで休暇を楽しむすてきなホテル」の歌と思って聞いてきたのか、ということを、今回さぐってみたら、日本語訳の歌詞を最初に頭に入れて聴いたからだ、ということがわかりました。

 英語の歌詞は、以下のとおり。
 草(グラス)の匂いに満ちた荒れ野の向こうに立つ、ホテルカルフォルニア。
 ヘロイン中毒で死んだジャニスが、自由の女神のように、灯りを掲げてドアに立っています。天国なのか地獄なのか、1969年からスピリットを失ったままのアメリカで、人は自分自身を囚人にする。さあ、不在証明を持って、ホテルの部屋で宴会だ。
 朦朧とした意識ですごすこのホテルを出て最初の場所にもどろうとしても、決して逃げ出すことはできない。チェックアウトはできるけれど、ここから逃れることはできないのです。

 スピリットということばが、蒸留酒(spirits)と、アメリカ精神(American sprits)との掛詞になっていることに気づくと、この曲のテーマが浮かび上がってきます。
 
 一生、出ていけない囚人となった自分は、ホテルカリフォルニアに住み続けるしかない。この、スピリットを切らしたままのホテルに。

ホテルカリフォルニア(Hotel California イーグルス 春庭拙訳)
http://www.youtube.com/watch?v=7_Wcbts8jzY

ギター前奏8beat が8つ。そのあと、8beatが8,4,8,4, 8 ギター後奏8beat が16

8beat×8 ギター前奏 
1(8beat×8)
1-8 On a dark desert highway, Cool wind in my hair, 暗い荒れ野のハイウェイ、クールな風が髪にふれる

2-8 Warm smell of “colitas”Rising up through the air, 生あたたかいコリタス草の匂いがあたりに立ちのぼる(*colitasは、glass=草と呼ばれるマリファナなどと同類のもの)

3-8 Up ahead in the distance, I saw a shimmering light, 遙か向こうに顔を向けるとゆらめく光が見えてきた

4-8 My head grew heavy and my sight grew dim, I had to stop for the night. 頭が重くて視界はぼんやり 今夜はここで泊まらなくちゃ 

5-8 There she stood in the doorway, I heard the mission bell. ドアのところに彼女が立ってる ミッションベルが聞こえている(彼女=ヘロイン過剰摂取で1970年に27歳で亡くなった伝説のロック歌手ジャニス・ジョプリンを指す)(mission bell=教会の鐘→ミッション(任務)開始&終了を告げるベル)

6-8 And I was thinkin’to myself : “This could be heaven and this could be hell”自分のために考えている ここは天国?それとも地獄か

7-8 Then she lit up a candle, And she showed me the way,すると彼女は灯りをともして 私に行く手を示してくれた

8-8 There were voices down the corridor, I thought I heard them say 廊下をいくといろんな声がする、やつらの声が聞こえた気がする

2(8beat×4)
1-8 Welcome to the Hotel California, Such a lovely place, ようこそ、ホテルカリフォルニアへ ここはすてきなところだよ

2-8 Such a lovely place Such a lovely face ここはすてきなところだよ イカシた面々

3-8 Plenty of room at the Hotel California,  ホテルカリフォルニアには、部屋がいっぱい

4-8 Any time of year,(Any time of year) You can find it here 年中いつでもどんなときでも あんたの部屋はここで見つかる

3(8beat×8)
1-8 Her mind is Tiffany-twisted, She got the Mercedes Bends, 彼女の心はティファニー捻れ、彼女はひん曲がりメルセデスを手に入れた(*曲がったメルセデスMercedes BendsとMercedes-Benzを掛けている )

2-8 She got a lot of pretty, pretty boys she calls friends 彼女にはトモダチがいっぱい。おトモダチって呼ぶのははかわいいボーイたち(* boy=愛人、男娼)

3-8 How they dance in the courtyard, Sweet summer sweat中庭でダンスを踊ってる スィート・サマーが汗(スェット)になるまで

4-8 Some dance to remember, Some dance to forget 忘れないためにダンスを踊る奴もいるし 忘れるために踊るやつもいる

5-8 So I called up the Captain“Please bring me my wine” He said, それでキャプテン(給仕長)を呼んだのさ 「俺のワインを持ってきてくれないか、この俺に」返事はこうだ

6-8“We haven’t had that spirit here Since nineteen sixty-nine”「あいにくと、切らしております。そのスピリット(酒/精神)は、1969年から

7-8 And still those voices are calling from far away, そしてまた、奴らの声が遠くから呼びかけてくる

8-8 Wake you up in the middle of the night Just to hear them say: 真夜中でもおまえは起こされる ほら、その声が聞こえてくる

4(8beat×4)
1-8 Welcome to the Hotel California, ようこそ、ホテルカリフォルニアへ
2-8 Such a lovely place, Such a lovely face すてきなところさ イカシた面々が
3-8 They’re livin’ it up at the Hotel California, ここに住み替え
4-8 What a nice surprise, (What a nice surprise) Bring your alibis なんてイカシたサプライズ あんたのアリバイ持っといで(alibisアリバイ=不在証明書)

5(8beat×8)
1-8 Mirrors on the ceiling, The pink champagne on ice, and she said: 天井のミラー 氷の中のピンクのシャンペン。彼女は言った

2-8 “We are all just prisoners here, Of our own device” 「ここじゃ皆が囚人だわ、自分から縛られた囚人

3-8 And in the master’s chambers They gathered for the feast, さ、牢名主の部屋に皆で集まり祝宴だ

4-8 They stabbed it with their steely knives, But they just can’t kill the beast とがったナイフで皆が突き刺す、だけど獣は殺せない

5-8 Last thing I remember,  I was running for the door, 覚えている最後のことは ドアに向かって走っていたこと

6-8 I had to find the passage back to the place I was before, もとの場所に戻る通路を見つけなきゃならないんだ

7-8“Relax,” said the night man, “We are programmed to receive,「リラックスして」と夜警が言った 「受け入れるってことはもうプログラミングされてるのさ

8-8 You can check out anytime you like…but you can never leave” 好きなときにいつでも(この世を)チェックアウトできるさ でも決してここからは逃れられない、、、、、」

8beat×16 ギター後奏

 ホテルカリフォルニアが私のなかで、まったく原曲とは異なるリゾートホテルにイメージされていたのは、なぜか。

 おそらく、「たんぽぽ」という女性デュオがカバーした日本語バージョンのせいだと思います。なかにし礼の訳詞です。

 なかにし礼の訳詞は、シャンソンの訳詞でも英語の詩でも、日本語をメロディにのせるため、いつも「超訳」になっていますが、ホテルカリフォルニアも、原曲とはまったく異なる雰囲気の日本語詞になっています。
 たんぽぽのさわやかな歌声に合わせてのことなのか、なかにし礼の訳詞にあわせてたんぽぽが選ばれたのか分かりませんが。

 以下の訳詞掲載、ニコニコ動画の歌から春庭が再録しました。
http://www.nicozon.net/watch/sm16629615   (ニコニコ動画)

 このシリーズ「踊るために歌を覚える」全体の3分の1を超えない長さですから、引用の範囲内として、この訳詞は掲載を認められると思います。

超訳 ホテルカリフォルニア byなかにし礼 歌:たんぽぽ

悲しいことやなやみごと あるときなど、
ぼくは いつも 暗いハイウェイ 車とばして ホテルカリフォルニアへ ひとり 行くのさ

そのホテルには 酒もあるし 女もいるし
生きることに あくせくする 自分自身が わけもなく ばからしく見える そんな場所さ

わかったね ホテルカリフォルニア さあどうぞ いらっしゃい
遊んでおゆき ホテルカリフォルニア ひとときの幸せが ここにある

ここは最高 誰もみな 友だちだよ
帰り支度するやつらなどは 誰にきいても どこを探してみても ひとりもいない

一日中 祭りのように 恋とワインに 酔いしれながら 踊るのさ
ここは男の 天国さ 眠りを知らない 楽園だよ

わかったね ホテルカリフォルニア  さあどうぞ いらっしゃい
遊んでおゆき ホテルカリフォルニア  ひとときの幸せがここにある

つらい過去に 泣く男や 夢に傷ついた若者が
日暮れになると このホテルへ来る ドアをひらいて 今日もやってくる

歌をうたい、酒を飲んで 時の流れを 忘れよう
ぼくらはみんな このホテルが好き  そうさ、ほんとうに ここが好きなのさ

*くりかえし
*わかったね ホテルカリフォルニア さあどうぞ いらっしゃい
遊んでおゆき ホテルカリフォルニア
ひとときの幸せが、ここにある  さあ、どうぞいらっしゃい


 原詩の、「ヒッピー崩れのけだるさ」「1970年代の、経済優先のアメリカ社会から逃げ出したくても出られない鬱屈」「出口のないホテルに囚人のように閉じ込められる」という意味が、見事に換骨奪胎されています。

 いまだ経済成長が続いており「ジャパンアズNo.1」という幻想の中でバブル崩壊前の乱痴気騒ぎを続けている日本社会に、イーグルスの詩は受け入れられないとなかにし礼の嗅覚が選んだ訳語なのでしょう。

 仕事に疲れて、女や酒に癒しを求めたいおっさんや、恋に破れて、自分では大いに傷ついたつもりのワカゾーの気持ちに沿った、ノーテンキな訳詞。「ここは男の天国」とは、バブル前の安キャバレーや一杯飲み屋のおっさんが言いそうな台詞です。

 さて、抜け出しがたい居心地のいいホテルのような、この安穏国から抜けだして、グラスが風になびく荒野に出て行こうとする者は、いるのでしょうか。
 何も考えずなにも変えようと思わなければ、ここは、他国の紛争や貧困はすべて「よそごと」として過ごしていられそうな、この世の天国みたいです。

 ♪好きなときにいつでも(この世を)チェックアウトできるさ でも決してここからは逃れられない、、、、、

<つづく>
コメント (7)
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