2012/09/26
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>2012年9月(1)故郷の方言&雅楽演奏披露・得意技発表会
毎回、集中講義の最終日は、各学生がもっとも得意としていることや興味があることがらについて発表をしてもらいます。日本語教師養成コースに登録した日本人学生、今回は女子学生のみの受講で、和気藹々のクラスになりました。
自己アピールができないようでは、個性の強い留学生に対して自己確立した教師として対峙できない、アイデンティティをしっかりと持っておらず、付和雷同で生きているような人間は、世界で通用しない、という私の信念から、日本語教師志望者でも、企業への就職活動をめざすのでも、日本文化や日本社会についてしっかりとした考えを持つこと、外へ向かって自分自身の中味を発信していけること、このふたつを学生に課しているのです。
昨年の発表では、お菓子作りが好きだという学生が、自宅で作ってきたクッキーをクラスメートに配ってレシピを説明した、というのもありました。
これまで、茶道のお点前を実演した学生、神道のお祓いのやり方と祝詞を紹介した学生、筆を持って来て書道の腕前を披露した学生、演劇部に所属している学生が、発声練習でよく行われる「ういろう売り」の口上を披露するなど、それぞれ持ち味を生かした発表をして、私も学生から啓発を受けてきました。
今年はどんな発表かなと楽しみにして、最終日を迎えました。
ひとりは、ふるさとの祭りのようすと、地元の方言について発表して、私もこの町にいつか行ってみたい、と思いました。大型の太鼓を打ち鳴らす祭りのようすをyoutubeで見せてくれました。NHK2000年の朝ドラ「さくら」のオープニングに登場した町の中を流れる川。小学校の行き帰りに3回落ちたことがある、と話していました。狭い路地の中の水路のような川、深さは30センチくらいなので、溺れたりはしないものの、鯉がたくさんいて、観光客が投げ入れる餌を食べ過ぎて太っているので、小学生の体、鯉の餌にされてしまうかと恐怖を感じたそうです。、、、、それなのに、学習せずに3度も落ちたのね、、、、。
学生が落ちたことがあるという町のなかを流れる川。豪雪地帯なので、 冬になれば、この川も雪に埋もれるそうです。

ひとりは、大学のサークル活動でやっている雅楽の紹介と楽器の演奏を披露しました。越天楽の演奏をyoutubeで見た後、ひちりきを演奏し、越天楽の楽譜を見せてくれました。楽譜には「越殿楽」と書いてありました。
姉が亡くなって10年たちますが、姉が若い頃お琴を習っていたのを思い出します。生田流の事の楽譜の読み方を姉に習ったことがあります。一から十までの漢数字と十一は「斗」十二は「為」十三が「巾」と書かれたいました。
雅楽の楽譜は初めて見ました。「くち三味線」方式みたいで、チラロルと歌いながら節拍子を覚えるみたいです。

チラロルと歌っていってちゃんと合わないとき、「呂律がまわらない」ということになる。雅楽の拍子「呂」と「律」という音階が合わないこと。「ことばがうまく発音できないときの「ろれつが回らぬ」の語源です。
そのほか、「塩梅(あんばい)をたしかめる」「打ち合わせる」などの慣用句は、雅楽の用語からきている、という語源についても発表がありました。
「打ち合わせ」は、雅楽の打ち物(打楽器)を拍子を合わせて演奏すること。ものごとの決まりや進め方について、前もって話を合わせておくことの意味に使われるようになりました。
「塩梅」は、現在では料理の味加減の梅酢と塩の混ぜ具合が料理の味の決め手になること、というのが語源として流布しています。塩と酢は、確かに味の決め手ではあったのかもしれませんが、私は、どうして米酢などの一般的によく使われる酢ではなく、梅酢が登場するのかと不思議に思っていました。
雅楽の語源を聞くと、「篳篥(ひちりき)」の演奏方法に「塩梅」という奏法があります。これは指の押さえ方を変えずに、吹き方の加減で音の高低を変えて吹く奏法で、篳篥の旋律を特徴付けるものxそうです。発表学生は、サークルでたんとうしているひちりきを吹いて、同じ指押さえで息を調節し、音の高さを変えて聞かせてくれました。
この塩梅は、雅楽では「えんばい」と読み、通例慣用句では「あんばい」と読むのですが、さて、雅楽の音が本になったのか、調味の加減がもとになったのか、知りたいところです。
<つづく>
ぽかぽか春庭ニッポニアニッポン語教師日誌>2012年9月(1)故郷の方言&雅楽演奏披露・得意技発表会
毎回、集中講義の最終日は、各学生がもっとも得意としていることや興味があることがらについて発表をしてもらいます。日本語教師養成コースに登録した日本人学生、今回は女子学生のみの受講で、和気藹々のクラスになりました。
自己アピールができないようでは、個性の強い留学生に対して自己確立した教師として対峙できない、アイデンティティをしっかりと持っておらず、付和雷同で生きているような人間は、世界で通用しない、という私の信念から、日本語教師志望者でも、企業への就職活動をめざすのでも、日本文化や日本社会についてしっかりとした考えを持つこと、外へ向かって自分自身の中味を発信していけること、このふたつを学生に課しているのです。
昨年の発表では、お菓子作りが好きだという学生が、自宅で作ってきたクッキーをクラスメートに配ってレシピを説明した、というのもありました。
これまで、茶道のお点前を実演した学生、神道のお祓いのやり方と祝詞を紹介した学生、筆を持って来て書道の腕前を披露した学生、演劇部に所属している学生が、発声練習でよく行われる「ういろう売り」の口上を披露するなど、それぞれ持ち味を生かした発表をして、私も学生から啓発を受けてきました。
今年はどんな発表かなと楽しみにして、最終日を迎えました。
ひとりは、ふるさとの祭りのようすと、地元の方言について発表して、私もこの町にいつか行ってみたい、と思いました。大型の太鼓を打ち鳴らす祭りのようすをyoutubeで見せてくれました。NHK2000年の朝ドラ「さくら」のオープニングに登場した町の中を流れる川。小学校の行き帰りに3回落ちたことがある、と話していました。狭い路地の中の水路のような川、深さは30センチくらいなので、溺れたりはしないものの、鯉がたくさんいて、観光客が投げ入れる餌を食べ過ぎて太っているので、小学生の体、鯉の餌にされてしまうかと恐怖を感じたそうです。、、、、それなのに、学習せずに3度も落ちたのね、、、、。
学生が落ちたことがあるという町のなかを流れる川。豪雪地帯なので、 冬になれば、この川も雪に埋もれるそうです。

ひとりは、大学のサークル活動でやっている雅楽の紹介と楽器の演奏を披露しました。越天楽の演奏をyoutubeで見た後、ひちりきを演奏し、越天楽の楽譜を見せてくれました。楽譜には「越殿楽」と書いてありました。
姉が亡くなって10年たちますが、姉が若い頃お琴を習っていたのを思い出します。生田流の事の楽譜の読み方を姉に習ったことがあります。一から十までの漢数字と十一は「斗」十二は「為」十三が「巾」と書かれたいました。
雅楽の楽譜は初めて見ました。「くち三味線」方式みたいで、チラロルと歌いながら節拍子を覚えるみたいです。

チラロルと歌っていってちゃんと合わないとき、「呂律がまわらない」ということになる。雅楽の拍子「呂」と「律」という音階が合わないこと。「ことばがうまく発音できないときの「ろれつが回らぬ」の語源です。
そのほか、「塩梅(あんばい)をたしかめる」「打ち合わせる」などの慣用句は、雅楽の用語からきている、という語源についても発表がありました。
「打ち合わせ」は、雅楽の打ち物(打楽器)を拍子を合わせて演奏すること。ものごとの決まりや進め方について、前もって話を合わせておくことの意味に使われるようになりました。
「塩梅」は、現在では料理の味加減の梅酢と塩の混ぜ具合が料理の味の決め手になること、というのが語源として流布しています。塩と酢は、確かに味の決め手ではあったのかもしれませんが、私は、どうして米酢などの一般的によく使われる酢ではなく、梅酢が登場するのかと不思議に思っていました。
雅楽の語源を聞くと、「篳篥(ひちりき)」の演奏方法に「塩梅」という奏法があります。これは指の押さえ方を変えずに、吹き方の加減で音の高低を変えて吹く奏法で、篳篥の旋律を特徴付けるものxそうです。発表学生は、サークルでたんとうしているひちりきを吹いて、同じ指押さえで息を調節し、音の高さを変えて聞かせてくれました。
この塩梅は、雅楽では「えんばい」と読み、通例慣用句では「あんばい」と読むのですが、さて、雅楽の音が本になったのか、調味の加減がもとになったのか、知りたいところです。
<つづく>