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ぽかぽか春庭「アーティスト・アギー」

2012-09-20 00:00:01 | 映画演劇舞踊
2012/09/20
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>(1)アーティスト・アギー

 8月最後の日は、映画を見てすごしました。
 31日は、最初、新文芸座で山田五十鈴の追悼特集最終日を見るつもりで、池袋に行きました。
 しかし、北口から地下通路を通って東口へ出て、「なぜ、毎回毎回、新文芸座に行くのに迷うのだろう」と思いながら歩いていて、また迷い、おかしいなあ、こっちが近道と思ったのに、と歩いていったら、豊島区民センターへ出てしまった。ありゃ、こっちじゃない。

 駅前まで戻り、映画開始に遅れてやっと文芸座の入り口に出たら「ただ今の時間、『流れる』はお立ち見です。次の『東京慕情』も、お早めにご来場ください」という表示が出ている。しかたないので、地下鉄で飯田橋へ行きました。西口の東武スパイス2でゆっくりお昼ご飯食べているんじゃなかったと後悔しながら。久しぶりに「食べ放題」のランチ店に入ったので、貧乏性の私としては、千円分のもとをとらなければと思って、デザートまでしっかり食べたのでした。

 8月31日、飯田橋ギンレイは、「アーティスト」と「「幕末太陽傳」2本立上映の最終日。「幕末太陽傳」はデジタルリマスター。「アーティスト」は、第84回アカデミー賞では作品賞、監督賞(ミシェル・アザナヴィシウス)、主演男優賞(ジャン・デュジャルダン)など5部門の受賞。
 ギンレイは、同じ主演俳優の2本立てとか監督作品の2本という並べ方だったり、内容が似ている作品が2本並んでいるという方式の2本立てなのだけれど、今回は「白黒映画」という以外の共通点はない。以下、ネタバレ含む紹介です

 「アーティスト」と84回アカデミー賞を争った「ヒューゴの不思議な発明」を6月に見たのですが、ギンレイで2D上映で見ました。2Dだから、がらがらでしたが、私は3Dでなくても十分楽しめました。
 「ヒューゴ」は映画の父メリエスへの直接のオマージュに満ち、「アーティスト」は、サイレントムービーはじめ、多くの歴史的な映画へのオマージュが感じられる作りになっているのですが、私は「ヒューゴ」が好きでした。映画の出来不出来については、素人の私にはわからない。単に、私の好みが「女が男を慕い続ける」というストーリーよりも、「父への敬慕を貫く少年の成長物語」のほうにシンパサイズされるから、というものにすぎないだろうと思うのですが。

 「アーティスト」のストーリー。自分が女優としてのし上がるきっかけを作ってくれた、かってのスターが落ちぶれたあとも、男に変わらぬ愛を寄せる新進スター、という実にわかりやすい物語。台詞なくても楽しめましたが、台詞がなくてもわかる話にするために、ストーリーが単純で、これをカラー&トーキーでやられたら、途中で飽きたと思う。
 「ヒューゴ」は、3Dでなくても楽しめたけれど、「アーティスト」は、白黒無声映画という形なしには楽しめなかったと思います。

 トーキー映画への切り替えができず、人気凋落した映画スター、ジョージ・ヴァレンテイン。モデルは、ルドルフ・ヴァレンチノ。サイレント映画の大人気スターでしたが、31歳で亡くなっているので、トーキー時代に没落したという点では異なっていますが。

 ジョージが起死回生を狙って、全財産をなげうって作ったサイレント映画「愛の涙」のラスト。
 主人公が底なし流砂の中に落ち込んでしまい、男が沈んでいくのをヒロインはただ涙で見送るのです。自分の服を脱いでつなげて投げるとか、何かしたらいいのに、涙で見送るだけとは、サイレント映画の末路のようなシーンなのだけれど、この無声映画「愛の涙」がコケてしまうのは、サイレントだったからではなくて、その陳腐なストーリーゆえ。

 ところが、「アーティスト」のほうは、その陳腐なストーリーをものともせず、アカデミー作品賞やら監督賞やら受賞。
 この映画がアカデミー作品賞になったのは、「サイレント」という映画の表現方法を再発見させる意欲に対してだったど思います。「サイレント映画へのオマージュ」という枠がなければ、この映画に新味はなく、犬のアギーの演技がとても上手という以外に「ヒューゴ」よりも勝っていた部分は決して多くはなかったと思います。

 主演のジャン・デュジャルダン、落ちぶれたあとのヨレヨレの上着の汚れ具合などもよかったし、ラストシーンで踊るタップダンスは、フレッド・アステアみたいに軽やかで上手だった。でも何と言っても一番いいのは、アギー。

 アギーは、2002年アメリカフロリダに捨てられていたジャックラッセルテリア種。殺処分される直前、プロの動物トレーナーのオーマー・ヴォン・ミューラーに引き取られ、タレント犬として訓練を受けました。たちまち才能を発揮し、ドックフード、車、ビール等のCMに出演。スケートボードに乗る芸も身につけてドックショーで中米を回り、1歳半で映画デビユー。「ワサップ」ディズニーの「ライフ・イズ・ワン!ダフル」「恋人たちのパレード」などに出演しました。残念ながら、アーティスト以後は引退し、病気療養に努めるそうです。すでに10歳で、人間なら70歳。老犬の仲間入りですからね。でも、「主演作」を撮ってほしかった。

 アートは、日本語ではおもに「芸術」と訳され、絵画や彫刻などを意味すると解釈されることが多いですが、もともとアートには、「技術・技巧」「術、わざ」を表すことばでした。
 アーティストの中で、最も印象的なワザを披露したのは、「アギーの演技」というオチ。「アーティスト・アギー」よかったです。
 
<つづく>
コメント (4)
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