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ぽかぽか春庭「音楽映画・オーケストラ」

2012-12-04 00:00:01 | 映画演劇舞踊
2012/12/04
ぽかぽか春庭シネマパラダイス>音楽映画(1)オーケストラ

 今回のシリーズ「春庭シネマパラダイス」は、「音楽映画」「悪人映画」「難民映画」というラインナップです。
 まずは、音楽映画。最初はチャイコフスキー。

 チャイコフスキー映画は、1970年ソ連の伝記映画の『チャイコフスキー』ではなく、ブレジネフ時代からソ連崩壊時のエピソードをつづった『オーケストラ 原題:Le Concert)』(2010公開)をご紹介。(以下ネタバレ含む紹介です

 アンドレイ・フィリポフは、30年前には若手指揮者として成功を収めた人です。しかし、共産党政権が強行したユダヤ人芸術家排斥に与しなかったために楽団を追放され、今では劇場清掃係。30年間、劇場を掃除して生きてきたアンドレイの楽しみは、楽団のリハーサル時にホールに潜り込んで、自分が指揮しているつもりになることです。
 ある日、アンドレイは、パリの劇場が探しているオケのなりすましを計画します。パリシャトレ劇場で穴のあいたスケジュールを埋めるため急遽ボリショイ交響楽団の派遣を要請する、というファックスを手に入れたアンドレイが、彼と同じように政府から音楽家としてのキャリアを奪われた仲間を集め、パリに乗り込むというストーリー。
 寄せ集め楽士によるニセの交響楽団がホンコンで演奏会を開いたという実話を元にし、崩壊前のソ連の音楽と政治の裏話が語られます。

 演奏するのはチャイコフスキーのバイオリン協奏曲。
 30年前に音楽界から追われた元楽団員達の、パリ到着までの珍道中やら演奏会までのてんやわんやで笑える映画なのですが、ラストのチャイコフスキー演奏は圧巻。
 アンドレイが指名した若く美しいバイオリンソリストには、出生の秘密がありました。

 リハーサルもすっぽかす楽団員たちが、アンドレイのひとことで劇場に集まり,若いソリストの演奏が聞こえると、皆で名演奏を行う。リハーサルなしに演奏するっていうのは、「アリエネー!」だけれど、そんなことは問題じゃない。「音楽の持つ力」を表現するにはとてもいい映画だったと思います。
 酷寒のシベリアで、見えないバイオリンから確かに音が聞こえてくるシーン、泣けます。この「音楽映画」の白眉の音シーンは、「エア・バイオリンから心に響いてくる音」でした。

「オーケストラ予告編」
http://www.youtube.com/watch?v=jyxtWUsvBBM

 「オーケストラ」のラストシーン」
 寄せ集めオケの演奏のひどさは笑えるけれど、バイオリンソロはすばらしい。ソロの音が響いたとたん、オケ一同はシャキ~ンとして、音がたちまち向上します。現実にそんなことはないだろうけれど。
 映画「オーケストラ」の若手バイオリニスト、アンヌ=マリー・ジャケ役を演じたメラニー・ロランは、画面で見る限りでは、指使い弓使いが実にきちんとしていました。

 バイオリンの吹き替えしたのは、フランス国立管弦楽団のサラ・ネムタヌSarah Nemtanuという若い女性演奏者です。
 ジャケ役を演じたメラニー・ロランは、サラから4~5ヶ月も演奏法の指導を受けたのだそうです。吹き替え演奏者直々の指導があったのだとわかり納得。さらに、メラニーの指導者として、ロン=ティボー国際コンクール・バイオリン部門第4位入賞のマチルド・ボルサレロ-エルマンが手取り足取りしたのだそうです。

 Sarah Nemtanuの演奏、フランスのバラエティ番組に出演して演奏しているようすがyoutubeにUPされています。サラの演奏のあとは、『オーケストラ』の監督(脚本も)のラデュ・ミヘイレアニュが映画について語っています。
http://www.youtube.com/watch?v=8MIeMmigDeE&feature=player_embedded#!

 また、映画の中では、ジプシーバイオリンが重要なポイントになっています。サラ・ネムタヌが演奏するジプシーバイオリン。
http://www.youtube.com/watch?v=o8Dufi-6kSY&feature=relmfu

 ミヘイレアニュ監督が言う「悲劇を笑いで語る」と言う音楽映画の成功のひとつの鍵は、「吹き替えの成功」そして、酷寒のシベリアに響く「エアバイオリンの音」だろうと思います。

<つづく>
コメント (2)
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