2013/04/27
ぽかぽか春庭感激観劇日記>演じられた母たち(6)鼬のおかじ
2012年に友人K子さんが出演した劇『鼬-いたち-』が再演されることになり、小劇場がひしめく下北沢のなかでも、客席26席というミニミニ劇場で上演されています。東京ノーヴィーレパートリーシアター、4月23日~28日。
4月25日7時の回を見ました。
再演の「鼬」は舞台装置も初演とは少し変わり、初演とは役者が変わった役もありましたが、K子さんは、初演に引き続き、老いた母おかじの役です。
おかじは、東北地方のさびれた宿場町の、おちぶれた旧家のおっかあです。かっては、参勤交代で江戸への往復に、ご家老様の定宿だったというのに、今や「だるま屋」は、借金返済ができず、家屋敷を手放す寸前です。古畳までもが引きはがされ、襖しょうじに至るまで、貸し主たちに運び去られようとしています。
おかじの息子万三郎は、「南洋で一旗揚げ、家を立て直す資金を稼いでくる」と言って家を出たきり、3年も音沙汰なし。娘のおしまは、ろくでなしの亭主とくっついで家出のあげく、亭主はやくざの出入りで牢屋入り。実家に帰ってきたおしまは、朝から酒をくらって隣近所に迷惑をかけてくるありさま。
さびれた村もお盆には笛や太鼓の音が響き、人々はつかのま活気づいています。そんな中、おかじの死んだ亭主の妹、おとりが盆の線香立てにもどってきます。宿場の飯炊き女郎をして家の面汚しとされ、実家には10年も顔出しをしてこなかった。それが、どういうわけか帰ってきて、昔と同じように、ことごとく小姑のおかじと対立してしまいます。金ぴかの着物を着込んだおとりは、どうやら立ち行かなくなった実家を自分の手に入れようと画策しているようす。
そこへ、万三郎が南洋から帰ってきます。家の借金のカタをつけるために帰省したと思ったのに、万三郎が持っているお金は、人絹工場を成功させたおとりが万三郎に貸したものでした。おかじには「おとりから借りた金」であることを秘密にしてほしい万三郎。おとりは、秘密を守ると見せかけて、家屋敷をそっくり自分のものにしてしまう腹です。
おかじは自分の育ててきた鶏を大切にしてきました。たちの悪い鼬が鶏を狙っているのを、おかじはやっと追い払います。おかじにとって、おとりも「家を狙うどろぼう鼬」に見えます。
村人たちは、借金のカタに押さえる物件をめぐって腹を探り合います。鼬を追い払うことができたおかじも、むすめむすこの行く末の始末はできません。
万三郎が成功者になどなっていないことを知ったおかじは、鶏小屋を守ろうとしつつ息絶えます。
1934年に初演された真船豊の代表作。登場人物ひとりひとりがくっきりと造型されていて、人間模様の織り上げが、精緻な図柄となって浮かび上がっていました。
前回K子さんに会ったとき、役作りのため、文鳥を育てていることを語っていました。「鼬」の母おかじの心が少しでもわかるよう、小鳥を手の上にのせて息子の呼び名「まんず(万三郎の略)」と呼んでかわいがっている、と、おかじの役作りに入れ込んでいたK子さん。
K子さん、再演の「おかじ」、とてもよかったです。公務員を定年退職してから取り組んできた演劇活動、これからもよい作品と巡り会って、芝居をみせてもらいたいです。
<おわり>
ぽかぽか春庭感激観劇日記>演じられた母たち(6)鼬のおかじ
2012年に友人K子さんが出演した劇『鼬-いたち-』が再演されることになり、小劇場がひしめく下北沢のなかでも、客席26席というミニミニ劇場で上演されています。東京ノーヴィーレパートリーシアター、4月23日~28日。
4月25日7時の回を見ました。
再演の「鼬」は舞台装置も初演とは少し変わり、初演とは役者が変わった役もありましたが、K子さんは、初演に引き続き、老いた母おかじの役です。
おかじは、東北地方のさびれた宿場町の、おちぶれた旧家のおっかあです。かっては、参勤交代で江戸への往復に、ご家老様の定宿だったというのに、今や「だるま屋」は、借金返済ができず、家屋敷を手放す寸前です。古畳までもが引きはがされ、襖しょうじに至るまで、貸し主たちに運び去られようとしています。
おかじの息子万三郎は、「南洋で一旗揚げ、家を立て直す資金を稼いでくる」と言って家を出たきり、3年も音沙汰なし。娘のおしまは、ろくでなしの亭主とくっついで家出のあげく、亭主はやくざの出入りで牢屋入り。実家に帰ってきたおしまは、朝から酒をくらって隣近所に迷惑をかけてくるありさま。
さびれた村もお盆には笛や太鼓の音が響き、人々はつかのま活気づいています。そんな中、おかじの死んだ亭主の妹、おとりが盆の線香立てにもどってきます。宿場の飯炊き女郎をして家の面汚しとされ、実家には10年も顔出しをしてこなかった。それが、どういうわけか帰ってきて、昔と同じように、ことごとく小姑のおかじと対立してしまいます。金ぴかの着物を着込んだおとりは、どうやら立ち行かなくなった実家を自分の手に入れようと画策しているようす。
そこへ、万三郎が南洋から帰ってきます。家の借金のカタをつけるために帰省したと思ったのに、万三郎が持っているお金は、人絹工場を成功させたおとりが万三郎に貸したものでした。おかじには「おとりから借りた金」であることを秘密にしてほしい万三郎。おとりは、秘密を守ると見せかけて、家屋敷をそっくり自分のものにしてしまう腹です。
おかじは自分の育ててきた鶏を大切にしてきました。たちの悪い鼬が鶏を狙っているのを、おかじはやっと追い払います。おかじにとって、おとりも「家を狙うどろぼう鼬」に見えます。
村人たちは、借金のカタに押さえる物件をめぐって腹を探り合います。鼬を追い払うことができたおかじも、むすめむすこの行く末の始末はできません。
万三郎が成功者になどなっていないことを知ったおかじは、鶏小屋を守ろうとしつつ息絶えます。
1934年に初演された真船豊の代表作。登場人物ひとりひとりがくっきりと造型されていて、人間模様の織り上げが、精緻な図柄となって浮かび上がっていました。
前回K子さんに会ったとき、役作りのため、文鳥を育てていることを語っていました。「鼬」の母おかじの心が少しでもわかるよう、小鳥を手の上にのせて息子の呼び名「まんず(万三郎の略)」と呼んでかわいがっている、と、おかじの役作りに入れ込んでいたK子さん。
K子さん、再演の「おかじ」、とてもよかったです。公務員を定年退職してから取り組んできた演劇活動、これからもよい作品と巡り会って、芝居をみせてもらいたいです。
<おわり>