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ぽかぽか春庭「T子さんのオペラアリア」

2013-10-01 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/10/01
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>街の歌声(1)T子さんのオペラアリア

 9月29日、ジャズダンス仲間のT子さんのオペラアリア発表会に行きました。去年きいて、T子さんの歌声に感激し、今年も楽しみにしていました。
 T子さんは、仕事リタイアのあと、週一回の仕事のほかは図書館での読み聞かせなどのボランティアを続けてきました。趣味の「オペラアリア」や合唱を無理なく続けようと「歌うための筋肉をおとろえさせないために」と、私の所属するジャズダンスサークルに加入しました。

 第一部が合唱。シューベルトのセレナーデやトスティのラ・セレナータ。
 第二部は重唱。T子さんは、指導者であるバリトン歌手水野先生とのデュエットでモーツォアルト「ドン・ジョバンニ」から「お手をどうぞ」を歌いました。

 ドンジョバンニは、フランスドイツスペインと女を口説きまわり、彼の手に落ちない女はいないと言われる稀代の放蕩者。マゼットと結婚したばかりの新婦ツェルリーナにも言い寄ります。最初は夫に向かって「私は大丈夫」と気丈にふるまっていたツェルリーナですが、ドンジョバンニとふたりだけになると、しだいに彼の甘いことばに惹かれていきます。さて、ツェルリーナは?(日本語歌詞は、イタリア語わからない私が、こんな内容かしらと適当につけたものです。)

(ドン)
Là ci darem la mano, お手をどうぞ、
Là mi dirai di sì 言っておくれ 「ええいいわ」と
Vedi, non è lontano, 見てごらん、遠くではない
Partiam, ben mio, da qui.  ともに行こう、ここを離れて
(ツェルリーナ)
Vorrei, e non vorrei,  行こうかしら、いいえダメよ
Mi trema un poco il cor; 心が揺れる、震えてくる
Felice, è ver, sarei, ほんきかしら
Ma può burlarmi ancor. からかわれているのかも

(ドン)Vieni mio bel diletto; 大切な美しい最愛の人
(ツxルリーナ)Mi fa pietà Masetto かわいそうなマゼット
(ドン)Io cangierò tua sorte; これは運命なんだ
(ツェルリーナ)Presto non son più forte; いそいで、より強く
(ドン)Andiam,Andiam 行こう、行こう
(ツェルリーナ)Andiam  行きましょう
(ふたり)Andiam,Andiam,mio bene, 行きましょう愛しい人
A ristorar le pene  恋の苦しみ
D'un innocente amor. この愛は穢れ無き愛

 複雑な女心を見せるツェルリーナの歌、T子さんは小柄小顔のかわいらしい印象の人ですが、ご主人と相思相愛、連れ添って40年以上というのを知っているので、大学でセラミック研究をしているというご主人も安心して聞いていたと思います。

 第三部の独唱、T子さんの歌は、プッチーニ「ラ・ボエーム」から、「私が街を歩くとQuando men vo'」
 自分の美しさが人々の賞賛を集め、男たちの瞳を釘付けにしてしまうことを知っているムゼッタが誇らしげに「みんなが振り返って私に見とれてしまう」と歌います。

 いつも優しくしとやかなT子さんが、オペラアリアになると変身して、先生との重唱では紺のブラウスに白いロングスカート、独唱ではかわいらしいピンクのドレスで歌いました。声もよく出ていて、筋肉鍛えて声帯強化をはかった成果が出ていました。

 出演者たちは、それぞれがお孫さんを持つ年配の方々。「今年の発表が終わると、次は来年の衣裳、何着ようかと考える」と、先生の挨拶にもありました。歌うアリアを決めて衣裳をどうするか考える、それが心の若さの秘訣なのかもしれません。

 もちろん素人のおばさん(おばあさん?)の歌なのですから、音程も外すし、声が出切らないところもありました。二部と三部の間30分の休憩時間にお客が帰ってしまわないように、お茶とサンドイッチでのおもてなし付き。
 私は、サンドイッチもいただいた上、プロのバリトンの歌声で4曲もきけたので、楽しかった。

 水野洋助さんの歌、「カルメン」の闘牛士の歌も聴き応えあったし、せひもう一曲とせがまれたという、武満徹「小さな空」を、アカペラで歌ったのがとてもよかったです。

 T子さん、素敵な歌声をありがとう。

<つづく> 

コメント (4)
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