春庭Annex カフェらパンセソバージュ~~~~~~~~~春庭の日常茶飯事典

今日のいろいろ
ことばのYa!ちまた
ことばの知恵の輪
春庭ブックスタンド
春庭@アート散歩

ぽかぽか春庭「武田五一&妻木頼黄」

2013-10-20 00:00:01 | エッセイ、コラム
2013/10/20
ぽかぽか春庭アート散歩>建築さんぽ2008-2013(2)武田五一&妻木頼黄

 東京大学建築学科教授であり東京大学関連の建築を手がけた内田祥三の建物は、都内各所に見に行けるのですが、私にはなかなか見に行けない建築家のひとりが、武田五一(1872-1938)です。(なかなか行けない理由は、遠出の旅費がないからです。

 武田五一は、京都大学建築学科の育ての親であり、建築作品も関西名古屋近辺に、京都大学本部本館、京都府立図書館、同志社女子大学ジェームズ館などが残されています。いつか、関西旅行に行けたときには見て歩きたいと思っています。

 都内に残されている武田五一の作品は、文京区本郷の求道会館(1915(大正4)年竣工)。
 浄土真宗大谷派の僧侶近角常観が、ヨーロッパの教会のように誰でも入れて僧侶の話を聞けるような宗教施設をめざしたのに応えて、武田は正面には円柱、内部にはステンドグラスが意匠された建物を作りました。これまでの仏教施設とは異なる洋風の設計です。
 明治の学校建物の紹介として、和洋折衷の話をしましたが、仏教施設でこのような思い切った和洋折衷を取り入れたのも、やはり時代の精神だったのでしょう。

 私が2011年秋に訪れたときは、本郷にある徳田秋声宅を見に行ったついでだったので、内部には入れなかったし、もう一度内部を見られるときに訪問したいと思っています。(yokochann、見学日は毎月第四土曜日だそうです)

求道会館(武田五一1915)


 

 大蔵省臨時建築部で働いていたときの武田五一の上司が、建築部部長妻木頼黄(つまきよりなか1859 - 1916)です。武田は妻木のもとで大熊喜邦とともに、旧山口県会議事堂、県庁舎(1916年竣工)を建てました。(大熊は、志半ばで死去した妻木に代わって国会議事堂を完成させた人です)

 妻木頼黄と武田五一の共同作品といえる、日本勧業銀行(1899年竣工)は、現在は千葉市に移築され、千葉トヨペットの社屋として使用されています。

旧日本勧業銀行本店1899(明治32)年竣工(現・千葉トヨペット本社)
千葉トヨペット本社HRの画像より


 妻木頼黄は、「明治三巨匠」と言われたのに、他の二人、辰野や片山に比べて地味な印象です。日本銀行本店や東京駅の辰野金吾(1854 - 1919)、東京国立博物館表慶館、赤坂離宮(迎賓館)の片山東熊(1854 - 1917)は、建築関係以外の人にも名をしられているのに、国内に大建築物がないせいかもしれませんし、建築史や近代建築がブームになるまで、誰が建てたのかなどは話題にもならない作品が多かったこともあります。たとえば、半田市に残る旧カブトビール赤レンガ倉庫も、市民による保存運動が高まるまで、「取り壊し寸前」のところでした。

 妻木は、辰野や片山とともに、コンドルに学んだ最初の6人の弟子の一人です。官庁建築の組織を作り上げ、明治大正の公の建物に数多く関わりました。国会議事堂の設計にとりかかるも、ライバルの辰野金吾が「設計を競争にし、当選作を選ぶべきだ」と反対。妻木の支持者であった桂太郎内閣がつぶれたために、妻木の計画は頓挫。国会議事堂設計競争では、宮内省技官の渡邊福三が当選したにもかかわらず、当選直後に渡辺が死去したため、官僚合同チームが議事堂の設計をやりなおし、渡辺の設計とは異なる姿に。

 妻木頼黄作品は、国内のものはあまり残っていなくて、中国・大連市中山広場に1909年竣工の旧横浜正金銀行大連支店(現・中国銀行遼寧省分行)が残っています。

戦前の古写真に残る旧横浜正金銀行大連支店


 都内に残された妻木の建物、私が毎年桜を見に行く場所です。ドイツに留学した妻木はビール党だったらしく、上記の半田市の丸三麦酒醸造所(丸三ビール→カブトビール)の建物をはじめ、醸造関係の建物に関わっています。(カブトビールはジブリアニメ映画『風立ちぬ』にもちらりと登場するそうです)

 旧醸造試験場(妻木頼黄1904年竣工 現酒類総合研究所東京事務所)花見に出かけ、桜の写真を取りに行ったら、内部の見学会をやっていました。


内部


 旧横浜正金銀行本店(1904年、現神奈川県立歴史博物館、ファイルの中で行方不明。見つかったらUPします。
 画像は、古写真絵葉書に残る戦前の横浜正金銀行本店(神奈川県立博物館のミュージアムショップで買った絵葉書です)



<つづく>
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする