2013/10/06
ぽかぽか春庭@アート散歩>アート散歩2013年9月(1)地中海展&福田美蘭展in東京都美術館
夏旅の日本海、おいしいもので満腹したあとは、秋の芸術、地中海で目の保養。東京都美術館で開催されていた「ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―」展、夏休み中、暑くて出かけるのをためらっていて、会期終わりになってようやく見ることができました。同時開催中の福田美蘭展も見て、よい一日になりました。

地中海展は、ルーブル美術館からの貸出しで、エジプトメソポタミア、ギリシャローマ、近代のグランドツアーブームまで四千年の、地中海をめぐる美術を概観する、という企画です。
一番の目玉が「ギャビーのディアナ」
像の元は、ギリシャで彫刻された狩猟と月の女神アルテミスです。ローマ時代に模刻され、18世紀にスコットランドの画家であるハミルトンが、ローマ近郊のギャビーというところで発掘したため、ギャビーのディアナ(=ダイアナ)と呼ばれています。
「ギャビーのディアナ」は、一方からだけの観覧ではなく、石像の周囲をぐるりと回ることができるようになっていたので、前後左右、好きな角度で見ることができました。

館内撮影禁止ですが、主な作品は東京都美術館HPで見ることができます。
http://louvre2013.jp/highlight.html
私の観覧方法は、これまでと同じく、館内が混んでいるうちは、人の頭越しにささっと一巡。二巡目は、絵の前の人垣が少ないところを選びながらB1から2階までまわる。そして、閉館30分前からが狙い目。30分前になると入口が閉められて、もう人が入ってこないので、ごく少数の人数しかいないフロアで観覧できます。終わりごろになると、「閉館時間となりました。出口へお急ぎください」という係員のおいたての声に抗いながら見て回ることになりますが、閉館時間になるまでは遠慮することはありません。ささっと回った時に、「これをもう一度みよう」と、決めていた作品の前で、ゆっくりと鑑賞できます。
館内を三巡することになるので疲れますが、大勢の人といっしょに流れにそってささっと通り過ぎても、印象に残りません。
観光客としてパリにいって、ルーブルを見る人は数多いでしょうに、たぶん、今回展示されている作品のうち、ルーブルでギャビーのディアナ以外の作品の前を、ほとんどの観光客はささっとスルーして通り過ぎたのではないかと思います。あるいは全然たちよらない館の収蔵品であったか。モナリザとかミロのビーナスを見たら、すぐにツアーの集合時間になってしまう。

ルーブルではこんなにしげしげとは見てもらえない4000年にわたる地中海沿岸の美術品たちが、押すな押すなの見物客に見つめられて、4000年分の視線を感じたことでしょう。10万人以上のお客さんが見たそうですから。
地中海展を見て、あまりの混み具合にちょっと苛立ち、「この中のどれだけが真に地中海沿岸の歴史や美術にこれからも関心を持ってくれるのだろうか。ただ一日の物見遊山で楽しむのだって美術の楽しみ方だとはおもうのだけれど」というような、なんだかもやもやした心持ちが残っていて、へんだなあ、よい展示物を見たら、心豊かな気分になるはずなのに、と思いました。
地中海展の前に見て、おもしろく感じたのが、福田美蘭展でした。

入口から入って、最初に長すぎる胡蝶蘭の造花が目に入ります。よく個展の入り口などに胡蝶蘭の鉢植えがいくつも置かれていて、値段の高さを競っているようなのがあります。福田美蘭は、アートフラワー作品としてありえない長さの胡蝶蘭を作って、「人造の花」のキッチュな存在を示していて、最初からワハハ、と思いました。これから、個展やら書道展の入口に胡蝶蘭を見るたびに、「どうせなら、5mくらいの胡蝶蘭を飾り給えよ」と思うだろうな。
地階1階ふきぬけの彫刻展示室(ギャラリーA)、1階、2階とテーマごとに展示があります。撮影禁止とあるなか、ギャラリーAの入口には「この部屋の展示は撮影できます。ブログなどへの掲載もできます。ただし、新聞雑誌への掲載は要相談」という意味の注意書きがありました。
「今日を生きるまなざし」が展示されているギャラリーAでカメラを構えていると、バシッと音がして、痛みを感じるほど強く肩が叩かれました。私の肩、老化による肩関節炎が痛いのに、そんなに強く叩かなくても。
60代か70代の年配男性が大きな声で「撮影禁止だぞっ」と睨みつけています。ああ、またか、と思いました。自分が世界唯一の正義だと思い込み、自分の主張を疑ってみることもしない人種。よくいます、自分より弱そうな者には強く出るこういうオヤジ。
私はギャラリーAの入口を指差し「あそこを見てくださいね。この部屋は撮影可能と書いてありますよ」と言いました。オヤジは「え?」と言っただけで、私の前からささっという感じで立ち去りました。
福田美蘭展のあとでルーブル地中海展を見たのですが、混み合っている会場で、私の姿を見かけて、こそこそと姿を隠したオッサンがいました。顔はメガネをかけていたことくらいしか覚えていなかったのですが、シャツに見覚えがあります。さきほどの「撮影禁止!」のオッサンりでした。こそこそ逃げていったのは、私に顔をみられたくなかったのでしょう。
先ほどの、肩を一撃された痛みを思い出しました。ああ、あの男の人をとっつかまえて、「人を非難しようなんて思ったら、よくよく注意して、自分の非難が正当かどうかよく確認することですね。そして、自分のしたことが不当な非難だったとわかったら、素直に謝るのが大人のする態度でしょう。自分が間違った非難をして、人に不愉快な思いをさせておいて、謝罪もせずにこそこそ逃げるだけとは、あなたこそ恥ずべき大人ですね」と、言いたかったのだと、思い至りました。
地中海展を見ているあいだのもやもや不愉快な思いの原因がわかりました。
いつも、私は他者に言いたいことがいえなくて、あとでうじうじするのです。文字で書くならいくらでも大音声で書き連ねることができるのに、対面では口ごもってしまう。
でも、私の顔を見てこそこそ姿を隠したということは、本人も自分が不当な行動をとってしまったということを自覚したのだ、と思うことにしました。
言いたいことが言えなかったもやもやの原因がわかって、あとはゆったり展示をみることができました。
「福田美蘭展」つづく。
<つづく>
ぽかぽか春庭@アート散歩>アート散歩2013年9月(1)地中海展&福田美蘭展in東京都美術館
夏旅の日本海、おいしいもので満腹したあとは、秋の芸術、地中海で目の保養。東京都美術館で開催されていた「ルーヴル美術館展 ―地中海 四千年のものがたり―」展、夏休み中、暑くて出かけるのをためらっていて、会期終わりになってようやく見ることができました。同時開催中の福田美蘭展も見て、よい一日になりました。

地中海展は、ルーブル美術館からの貸出しで、エジプトメソポタミア、ギリシャローマ、近代のグランドツアーブームまで四千年の、地中海をめぐる美術を概観する、という企画です。
一番の目玉が「ギャビーのディアナ」
像の元は、ギリシャで彫刻された狩猟と月の女神アルテミスです。ローマ時代に模刻され、18世紀にスコットランドの画家であるハミルトンが、ローマ近郊のギャビーというところで発掘したため、ギャビーのディアナ(=ダイアナ)と呼ばれています。
「ギャビーのディアナ」は、一方からだけの観覧ではなく、石像の周囲をぐるりと回ることができるようになっていたので、前後左右、好きな角度で見ることができました。

館内撮影禁止ですが、主な作品は東京都美術館HPで見ることができます。
http://louvre2013.jp/highlight.html
私の観覧方法は、これまでと同じく、館内が混んでいるうちは、人の頭越しにささっと一巡。二巡目は、絵の前の人垣が少ないところを選びながらB1から2階までまわる。そして、閉館30分前からが狙い目。30分前になると入口が閉められて、もう人が入ってこないので、ごく少数の人数しかいないフロアで観覧できます。終わりごろになると、「閉館時間となりました。出口へお急ぎください」という係員のおいたての声に抗いながら見て回ることになりますが、閉館時間になるまでは遠慮することはありません。ささっと回った時に、「これをもう一度みよう」と、決めていた作品の前で、ゆっくりと鑑賞できます。
館内を三巡することになるので疲れますが、大勢の人といっしょに流れにそってささっと通り過ぎても、印象に残りません。
観光客としてパリにいって、ルーブルを見る人は数多いでしょうに、たぶん、今回展示されている作品のうち、ルーブルでギャビーのディアナ以外の作品の前を、ほとんどの観光客はささっとスルーして通り過ぎたのではないかと思います。あるいは全然たちよらない館の収蔵品であったか。モナリザとかミロのビーナスを見たら、すぐにツアーの集合時間になってしまう。

ルーブルではこんなにしげしげとは見てもらえない4000年にわたる地中海沿岸の美術品たちが、押すな押すなの見物客に見つめられて、4000年分の視線を感じたことでしょう。10万人以上のお客さんが見たそうですから。
地中海展を見て、あまりの混み具合にちょっと苛立ち、「この中のどれだけが真に地中海沿岸の歴史や美術にこれからも関心を持ってくれるのだろうか。ただ一日の物見遊山で楽しむのだって美術の楽しみ方だとはおもうのだけれど」というような、なんだかもやもやした心持ちが残っていて、へんだなあ、よい展示物を見たら、心豊かな気分になるはずなのに、と思いました。
地中海展の前に見て、おもしろく感じたのが、福田美蘭展でした。

入口から入って、最初に長すぎる胡蝶蘭の造花が目に入ります。よく個展の入り口などに胡蝶蘭の鉢植えがいくつも置かれていて、値段の高さを競っているようなのがあります。福田美蘭は、アートフラワー作品としてありえない長さの胡蝶蘭を作って、「人造の花」のキッチュな存在を示していて、最初からワハハ、と思いました。これから、個展やら書道展の入口に胡蝶蘭を見るたびに、「どうせなら、5mくらいの胡蝶蘭を飾り給えよ」と思うだろうな。
地階1階ふきぬけの彫刻展示室(ギャラリーA)、1階、2階とテーマごとに展示があります。撮影禁止とあるなか、ギャラリーAの入口には「この部屋の展示は撮影できます。ブログなどへの掲載もできます。ただし、新聞雑誌への掲載は要相談」という意味の注意書きがありました。
「今日を生きるまなざし」が展示されているギャラリーAでカメラを構えていると、バシッと音がして、痛みを感じるほど強く肩が叩かれました。私の肩、老化による肩関節炎が痛いのに、そんなに強く叩かなくても。
60代か70代の年配男性が大きな声で「撮影禁止だぞっ」と睨みつけています。ああ、またか、と思いました。自分が世界唯一の正義だと思い込み、自分の主張を疑ってみることもしない人種。よくいます、自分より弱そうな者には強く出るこういうオヤジ。
私はギャラリーAの入口を指差し「あそこを見てくださいね。この部屋は撮影可能と書いてありますよ」と言いました。オヤジは「え?」と言っただけで、私の前からささっという感じで立ち去りました。
福田美蘭展のあとでルーブル地中海展を見たのですが、混み合っている会場で、私の姿を見かけて、こそこそと姿を隠したオッサンがいました。顔はメガネをかけていたことくらいしか覚えていなかったのですが、シャツに見覚えがあります。さきほどの「撮影禁止!」のオッサンりでした。こそこそ逃げていったのは、私に顔をみられたくなかったのでしょう。
先ほどの、肩を一撃された痛みを思い出しました。ああ、あの男の人をとっつかまえて、「人を非難しようなんて思ったら、よくよく注意して、自分の非難が正当かどうかよく確認することですね。そして、自分のしたことが不当な非難だったとわかったら、素直に謝るのが大人のする態度でしょう。自分が間違った非難をして、人に不愉快な思いをさせておいて、謝罪もせずにこそこそ逃げるだけとは、あなたこそ恥ずべき大人ですね」と、言いたかったのだと、思い至りました。
地中海展を見ているあいだのもやもや不愉快な思いの原因がわかりました。
いつも、私は他者に言いたいことがいえなくて、あとでうじうじするのです。文字で書くならいくらでも大音声で書き連ねることができるのに、対面では口ごもってしまう。
でも、私の顔を見てこそこそ姿を隠したということは、本人も自分が不当な行動をとってしまったということを自覚したのだ、と思うことにしました。
言いたいことが言えなかったもやもやの原因がわかって、あとはゆったり展示をみることができました。
「福田美蘭展」つづく。
<つづく>