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ぽかぽか春庭「コロナウイルスとハンチバック」

2020-03-07 00:00:01 | エッセイ、コラム
20200307
ぽかぽか春庭ことばのYaちまた>新語流行語2020(1)コロナウイルスとハンチバック

 コロナウイルス騒動、文科省からも一斉休校要請が出されました。春庭勤務校も教室閉鎖がきまりました。3月2日から学生は寮に待機。教職員のうち、電車利用出勤する者は出勤停止自宅勤務。
 自宅でパソコンのテレビ会議ソフト利用によるオンライン授業を行うということが申し渡されました。

 オンライン授業は、中国にいる学生との間で実施した経験はありますが、1対1でした。今回は複数の学生相手となるので、不安もいっぱいでした。
 オンライン授業を命じられたとき、不安以上に感じたのは不快です。
 「先生は通勤授業が長いから、コロナウイルスがうつる不安があります。学校にこなくてもいいです」「でも、学生が自宅にいるなら、学校内からオンライン授業をしてもいいのでは。私はパソコン操作が苦手ですから、操作がうまくできないとき、手伝ってもらわないと困ってしまいます」「だめです。学校にこないでください。先生は通勤時間長いですから」

 私が学校にウイルスを持ち込む張本人、病原菌運び屋である、という扱いになりました。開校したばかりの学校を守るためには、何でもする、ということであることはわかっているのですが、バイ菌運び屋のような扱いにいたく不愉快になりました。
 自宅待機中、オンライン授業のほかに、どんな仕事をしたのか、毎日報告メールをいれるように、と申し渡されました。

 買い物に出ると、ドラッグストアの前には長蛇の列。トイレットペーパーを手に提げて列に並んでいる人もいます。どうやら、おひとり様ひとつ限りという売り出しで、1個買った後もう一度列に並んでいるらしい。
 中国でコロナウイルス新型肺炎騒動が武漢から始まった時は対岸の火事だったのが、武漢からのチャーター機帰国者の罹患、大型客船ダイヤモンドプリンセス号乗客や職員の大量発症。各地での保菌発症者が続々と発表されて、今や日本中がパニック状態。みな不安の中で暮らしています。

 こんな中で、先月見たディズニー音楽コンサートで、歌のタイトルについて気づいたことをメモしておきます。

 こどものころ読んだB・ユーゴ―原作の「ノートルダムのせむし男」は、子供向けに編集されていたものでした。ユーゴ―の原作タイトルでは「パリのノートルダム」です。ディズニーアニメ化されたとき、日本公開タイトルは「ノートルダムの鐘」です。



 ディズニーがアニメ映画化に際して「ノートルダムの鐘」というタイトルにしたのだと思い込んでいました。しかし、ディズニーアニメは「 The Hunchback of Notre Dameノートルダムのせむし」というタイトルです。
 「ノートルダムの鐘」は、日本だけの変更です。「せむし」が放送禁止用語とされているゆえ。

 「めくら」や「白痴」など、障害を表す言葉の多くは、それが「差別用語」に当たるとされているけれど、自主規制らしいです。差別用語になるのは、その障害にたいして、差別的侮蔑的ニュアンスを持たせてしまった社会であることを、マスコミ側が敏感に取り入れてしまった結果だからです。

 かって「老人ボケ」「痴呆症」と言われた症状を、「ボケ」や「痴呆」は差別的侮辱的だとして「認知症」への言いかえが進みました。前より認知疾患への理解はすすんだと思いますが、「認知症」を差別的に使う人もいるのです。
 美輪明宏の「よいとまけの歌」も、歌詞に出てくる「ドカタ土方」という職業名が侮蔑的だとされ、長い間テレビで歌を披露することができませんでした。

 障害や病気を表す言葉に差別のニュアンスをもたせるのは、日本社会の「同調圧力」「仲間外れ」「いじめ」などに通じる 「異質なもの排除」しようとする社会の表れなのかなあと、The Hunchback of Notre Dameノートルダムのせむしを見て、思いました。

 カジモドが「ふつうの暮らしがしてみたい」「他の人と話してみたい」と願う歌に涙する人が、社会に戻ると自分と異なる人の存在を「異質」として排除しているんじゃないかなと思います。
 ハンセン氏病を忌避する世間の風潮を描いた「あん」もそうでしたが、コロナウイルス騒ぎで、「中国からの帰国者、客船下船者との接触、したくない」と言う人がいることも事実。客船からの下船者は、自宅に戻っても「ご近所の目が厳しいので、外出もできず、日常生活の買い物も通販でするしかない」という状態の方もいるそうです。

 感染が広がりだしたアメリカ本土でも、ネット言説では「悪はすべて中国からやって来る」「アジア人を町から追放せよ」「アジア人は本国に強制送還せよ」など、ヘイトクライム的書き込みがふえてきたそうです。トランプは株価下落=大統領選への悪影響を気にして、有効な手立てをおこなわないまま。次の一手は日本への渡航禁止、日本人のアメリカ入国禁止になるのだとか。デマかもしれないけれど。

 このままでは五輪開催も危ぶまれそうですけれど、どうなるのでしょう。
 4月いっぱいを目途に収束宣言が出せないと、5月には開催中止かどうかの判断がなされるということです。収束宣言というのは、最後の感染者発表から1ヶ月間、新たな感染者がでないこと、ということです。ということは、3月に最後の感染者が発表されてから1か月間新たな感染者がでないということ。でも、現実には、まだまだ感染者は広がっているみたいです。

 感染症などに自分が巻き込まれたくない気持ちは十分わかるし、私も病気にはなりたくない。でも、だからといって、長時間通勤者=ウイルス罹患危険者、みたいなことになって、わが身が「危険人物」扱いとなってみると、社会から身を隠して生きるカジモドの悲しみや、やっと「どら焼きづくり」で社会参加したのに、忌避された徳江さんのつらさが身にしみます。
 私自身は病気や障害を持つ人に寄り添いたいと思って生きてきたのに、自分が差別される側に回った時、その屈辱や悲しみをやはりわが身のこととしては感じていなかったのだろうなあと感じました。

 はやくおさまってほしい、コロナウイルスCOVID肺炎。

<つづく>
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