『美術館の春まつり』 東京国立近代美術館

東京国立近代美術館
『美術館の春まつり』
2023/3/17~4/9



千鳥ヶ淵や北の丸公園など桜の名所に立地する東京国立近代美術館にて、桜や春にちなんだ作品を公開する『美術館の春まつり』が開かれています。


杉浦非水『非水百花譜』 1920〜22年 国立工芸館

まず目を引くのは杉浦非水の『非水百花譜』で、100種類の花を描いた多色摺木版100点と、それぞれに対応した花の説明書、また同じ花をモノクロームのシルエットにした100点からなる図案集の木版でした。


杉浦非水『非水百花譜』 1920〜22年 国立工芸館

そこにはばらやあぶらな、ひなげしにしゃくやくなどの草花が瑞々しい色彩を伴って描かれていて、細部も図鑑さながらに精緻に表されていました。いずれも非水が原画を担当し、当時の一流の版画家が版画に仕立てたもので、資料ケースには花の説明書も展示されていました。


菊池芳文『小雨ふる吉野』 1914年

桜の時期に相応しい名品といえるのが菊池芳文の『小雨ふる吉野』で、桜の名所である吉野の光景を手前から奥へと鳥瞰的に表していました。


菊池芳文『小雨ふる吉野』(部分) 1914年

タイトルに小雨とありながら、かなりの雨が桜を濡らしていて、水を含むような花びらの描写に魅力を感じました。


鈴木主子『和春』 1936年

梨の花をモチーフにした鈴木主子の『和春』も優品といえるかもしれません。白い花をつけた梨の木がたんぽぽなどが生える地面の上に枝を伸ばしていて、やや鋭く屈曲する枝などは御舟の晩年の表現を連想するものがありました。


鈴木主子『和春』(部分) 1936年

鈴木は生涯にわたって植物を得意としていた画家で、本作に関しては展覧会に出展の際、審査員を務めていた清方が「しっかりして描写が行き届いた佳作」と高く評価しました。


船田玉樹『花の夕』 1938年

こうしたいわば緻密な描写による作品とは異なり、独特の表現を見せているのが船田玉樹の『花の夕』でした。一見、絵具を無造作に垂らして描いているように見えつつ、実は花のひとつひとつを筆でかたちをとっていて、鮮烈なマゼンタ色にも濃淡があるようすを目にすることができました。


児玉靖枝 作品展示風景

この他、展示の高さを変え、複数の作品でインスタレーションのように表現した児玉靖枝の桜をモチーフとした絵画も魅力に満ちていたかもしれません。淡い桜色が光と混じるように広がる光景から春を感じることができました。


なお『美術館の春まつり』では会期中、「春まつりオンライン・トークラリー」が実施されるほか、前庭にお休み処などが設置され、フードのテイクアウトなども行われます。詳しくは同館のWEBサイトをご覧ください。

4月9日まで開催されています。

『美術館の春まつり』 東京国立近代美術館@MOMAT60th
会期:2023年3月17日(金)~4月9日(日)
時間:10:00~17:00。
 *金・土曜は20時まで開館。
 *入館は閉館の30分前まで。
休館:月曜日。ただし3月27日は開館。
料金:一般500(400)円、大学生250(200)円、高校生以下無料。
 *( )内は20名以上の団体料金。
 *『東京国立近代美術館70周年記念展 重要文化財の秘密』チケットでも観覧可。
住所:千代田区北の丸公園3-1
交通:東京メトロ東西線竹橋駅1b出口徒歩3分。
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