hokutoのきまぐれ散歩

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『土門拳の古寺巡礼』展を見に行く

2023-04-12 05:00:00 | 日記
ようやくコロナをあまり気にせず美術館巡りができるようになった。恵比寿の東京写真美術館で土門拳の『古寺巡礼』の展覧会をやっていると知り、早速行ってみた。



土門拳は日本で最も著名な写真家の1人であり、戦前から戦後すぐにかけては35mmのハンディカメラを持ち、初めは戦場、戦後混乱期の街角、特に戦災孤児、安保反対の闘争など社会派のカメラマンや日本の著名人のポートレート撮影家などとして活躍した。その後代表作に『ヒロシマ』『筑豊のこどもたち』がある。一方で文楽、仏像などの撮影も戦前から始めていた。

1960年に脳出血を発症、35mmカメラの撮影ができなくなったことから大型カメラを据え付けた『古寺巡礼』の撮影を開始した。会場には自ら書いた古寺巡礼の墨字も飾られ、彼が最初に撮影した室生寺、法隆寺などの写真が並ぶ。

(神護寺薬師如来)

(室生寺釈迦如来)

特に仏頭の写真が多く、土門が高く評価した京都・神護寺の薬師如来立像、中宮寺の弥勒菩薩坐像、薬師寺の観音菩薩立像、改修前の薬師寺東塔など殆どが実物を見たことのある仏像だが、土門拳の目を通すとここまで研ぎ澄まされるのかと驚く。しかも顔を正面から撮るばかりではなく、手の先、足のどっしりした様子、千手観音の手の凄さなど土門が意図したものが少し分かる気がする。
(浄瑠璃寺吉祥天)

(向源寺十一面観音)
他にも鳥取県三朝町にある三仏寺の投入堂や蔵王権現像、大分県臼杵市の石仏(頭部がまだ地面にある時の写真)など広範囲に活動していたこともよく分かる。また、琵琶湖の北側にある向源寺の十一面観音立像の大爆面について恐ろしい形相と評していたのは面白い。撮されている寺社、仏像は9割を見たことがあるが、実物を見ても気づかないことがあまり多いことに驚かされる。

(薬師寺観音菩薩)

室生寺は1935年最初に撮影したお寺だが、彼が何回逗留しても雪が降らなかった。しかし、辛抱強く待ち続け、静けさの中に雪が降る姿を捉えた写真には執念さえ感じることができた。写真集を買えばそれで済むと思われるかもしれないが、美術館にパネルを並べて、一つずつ凝視すると変わった姿が見えるのが不思議である。


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