事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

フランシーヌの場合 その2

2007-12-17 | 受験・学校

Shintani  彼女は女性マネージャーと二人であらわれた。迎えるこちらはわたしと書記長、前期と後期の女性部長の四人。

 接待のコンセプトは、いわゆるオヤジ系のご接待にはしたくないということ。日本酒を注ぎつ注がれつ、ちょっとしたタニマチ(笑)気分を味わうなどということだけはしたくなかったのだ。したがって日本酒なし、名刺交換なし、写真撮影なし。フランクな食事にしたいということだ。

 こいつは当たりだったみたい。芸能人、とか業界人ということばから遠いところにいる彼女たちに、いかにもリラックスした感じは好感触だった。

新谷さんは妻と同郷の函館出身だったこともあり、
「奥さんはどこの生まれ?」と予想どおりの質問をうけ、きちんと予習して前日に妻に初めて(^o^)きいていたので

「舟見町だそうです。」
「あ、知ってる。函館山の方ね。わたしは末広町。」

Sintani こんなジャブから入り、島根出身のマネージャーさんは
「わたし今まで山形県は太平洋側にあるもんだと思ってました」という気の遠くなる発言にみな笑い(列車で眺めていた夕陽を不思議に思わなかったのだろうか)、こっちは「島根と鳥取の位置関係がよくわかんないんですよね」と返す。

御馳走は酒田名物寒鱈づくし。内臓いれまくりのどんがら汁や精巣を生で食べるダダミ。全員が日本海側の生まれだし、「これ(ダダミ)は北海道じゃあタツっていうんですよ」というローカルネタでも盛り上がる。だいたいお酒を飲まないはずだったのに「あーのど乾いちゃった」とビール飲みだすし。

 マジな話も。

「わたし、歌を歌うのがすごくイヤになるときがあるんです」
戦場で傷ついた人々や阪神大震災の現場などに行くと、ほんとうにせっぱ詰まった場面での歌の無力さを思い知らされるのだという。
「でも、わたしら組合の人間からすれば、歌、っていうメソッドを持っていることの羨ましさはありますよ。」これは正直な話。

「失礼なことを言っちゃダメってこのNくんから言われているんですけど、ラブ&ピースっていうお題目には、やっぱりある種の胡散臭さがあるじゃないですか」
論戦を挑んでどうしようというのだ。
でも、彼女はその胡散臭さにすら意識的なのだった。この生き方はつらいだろう。かなりつらいはずだ。新婚の彼女の旦那だってここまで意識的な連れ合いはきついはず。「だからたまに身をよじって泣いたりすることになるの。」そうだろうなあ。

なんか、ものすごく充実した気分で彼女たちをタクシーに乗せる。接待大成功。ヌードの話もちゃんと我慢したし。伊豆菊の仲居さんに
「今の、『フランシーヌの場合』歌ってた人だって気づいた?」ときくと
「なんでもっと早く教えてくれないんですか!」
と怒られてしまった。フランシーヌおそるべし

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フランシーヌの場合 その1

2007-12-17 | 受験・学校

Bgeo369 今回は私の出会った有名人シリーズスペシャル。

フランシーヌの場合」の新谷のり子を酒田に呼ぼうという話になったのは、県教組の女性部のイベントが寒河江であり、酒田からは女性部長と書記長が参加し、あまりに感激した女性部長が「酒田でもやれないのかしら」とつぶやいたことに始まる。

こんなとき無類の行動力を発揮する書記長は、この(2003年)1月18日に彼女を呼び、コメットでコンサートをやる計画をまとめあげた。とってもいいことだよなー。でも女性部のイベントだからオレの出る幕はないんだろうな、と油断していたら、あいさつは仕方がないとして「前日の夕方に酒田に着きますから、ご接待申し上げるということで」え?いやーそーゆーの苦手なんだよなー。「でも色んな裏話が聞けますよ」う。書記長オレの弱点をすっかりつかんでいる。

「でも失礼な話とかして帰られたらどうしよう」
「失礼な話って……例のヌードの件ですか?あれはまずいでしょう」

すっかりメディアから遠ざかっていた新谷のり子は、81年に平凡パンチでヌードになっており、わたしはたまたまそれを見ていたのである。こんなおいしいネタ、本人に言わずにいられるものだろうか……。

「じゃ、17日の6時半に伊豆菊ということで」
「はーい。」

軽くうけたが結構ナーバスになる。芸能人の接待などという経験、まあおおかたの人はしたことがないだろう。だいたい芸能人とお食事をともにする(酒は飲まない、という向こうの話だった)ことも初体験だ。おまけに反戦歌でデビューし、ボランティアやパレスチナの話で全国をまわっている左翼系歌手である。教条的、とかセクト、とかいうイメージがまず浮かばない?まっすぐな反体制人間って、ある意味いちばん扱いにくい人間だしさあ。

 でもその偏見は、うれしい形で裏切られた。以下次号。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

不審電話

2007-12-17 | 受験・学校

T3  学校にはさまざまな電話がかかってくる。朝は欠席の連絡に忙殺され(わたしは遅刻ギリギリにならなければ出勤しないので、そのほとんどを知ることはない)、あるときは学校教育全般に対する怒りを近所だというだけでぶつけてくるトンデモ系じいさんの相手をしなければならず、またあるときは追い込みのために子どもの在籍から親の居場所を探ろうとする街金(マチキン)業者の恫喝もどきまで。

 近頃増えてきたのは“何の役に立つのかは知らないが、とにかく生徒や職員の情報を得ようとする”タイプ。笑ったのは(笑ってる場合じゃないが)『校門前でエンストしちゃった宅配業者なんですけどぉ、そちらの学校の二十代の男の先生から助けてもらったんです。お礼がしたいんでお名前だけでも知らせてもらえませんか?』というまことに手の込んだものまであり、市教育委員会から気をつけるように、という一斉FAXが入ったりした。

 ウチの学校にもまさしくこの電話があり、まんまとひっかかった職員が、該当するんじゃないかという教員の名をバラしてしまった。

 その結果どうなったか。

 さっそくその翌日、わけわからん名前の業者からその教員に電話があり、何かを売りつけようとのハラだったようだが、居留守を使わせるうちに、いつのまにか電話はこなくなった。手が込んでいるわりに根性なしである。

 読者のなかにも先日うまいこと引っかけられた事務職員もいたので、かなり組織的、広範にこんなことは行われているのだろう。
 先週もどこかの学校に不審電話があったらしく、教育委員会がFAXを回してきた。

【事案の内容】
 1月○○日の午前中、児童宅に「担任の○○ですが、緊急に家の人に伝えたいことがあるので、お母さんが何時頃お家に帰るか教えてほしい。」と男の声で電話があった。
 電話を受けた祖母が、児童の父親と代わると電話が切れた。
 不審に思い、学校に折り返し電話をすると、担任は授業中であり、その家庭に電話をかけていないことがわかった。

ん?いったいこの電話をかけてきた男の目的はなに?ひょっとして、これ、ただの不倫電話なんじゃ。
すいませんまたオヤジギャグで。

Tx2 画像は「ターミネーター3」(’03 米)
うーん苦しいな。どこがって、この三作目、すでにターミネーターの話になっていないのである。ジョン・コナーの陰鬱な覚醒の物語。シュワちゃんは文字通りロボット。単なる脇役。敵役の女ターミネーターも、身体から重火器出しちゃ反則だろう。確かに「痛い!」と思わせるアクションには感心するけれど、1,2作目よりはアイデアにおいて数段落ちる。でもただひとつ上回っているとすれば、それはうっとおしいリンダ・ハミルトンが消えてクレア・デーンズがヒロインになっていること。
     女ターミネーターの、トイレで格闘しながら鏡をチラッと見るシーンには笑った☆☆☆★

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「GOTH」 乙一著 角川書店刊

2007-12-17 | ミステリ

Goth 「GOTH」(乙一著。角川書店刊)を読んでまず頭に浮かんだのは「空飛ぶ馬」のことだった。共通しているのは、解決しない方がいい謎もある、という諦念や、日常に潜む悪意の掘り出し方とか。

 でも扱う事件は正反対だ。人間の手首を収集したり、人を生き埋めにせずにはおれないなどの快楽殺人の連続。【不快系】ですな。なによりも『探偵がいちばん異常』という仕掛けが見事。日本版ハンニバル・レクターである。

 鬱状態のなかでこんなものを読んだので、神経はだいじょうぶかと心配したが、読後、いっそさっぱりしたのには自分であきれた。まあ、ただひとり生き残るためにクラス全員が殺し合いをする「バトルロワイヤル」ごときに不快になったり、ネタバレになるので理由は言えないが、クリスティの「アクロイド殺し」に激怒するような人には、とても薦められる代物ではないのだが。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「空飛ぶ馬」 北村薫著

2007-12-17 | ミステリ

Soratobuuma  北村薫の「空飛ぶ馬」(創元推理文庫)というミステリをご存じだろうか。おそろしく地味な作風であるにも関わらず、刊行当時大きな反響をよんだのは、北村が“誰も死なない”ミステリを構築してみせたから。

・幼稚園にあった遊具の木馬がある一夜だけ移動したのはなぜか(空飛ぶ馬)

・喫茶店で砂糖をひたすら紅茶に入れ続ける女性たちの意図するものとは(砂糖合戦)

……といった日常の何気ない謎を“わたし”という女子大生と噺家の円紫師匠が解いていく趣向。

 北村に始まるこのテの【日常ミステリ】あるいはイヤな言い方だが【癒し系】の流れは、以降加納朋子や倉知淳、そして宮部みゆきに受け継がれている。ぜひお試しを。

※北村薫は当初性別さえ明らかにされない覆面作家だった。十代の女性心理をここまで微細に描けるのだから当然女流だろう、と多くの読者は思ったのだったが、実は(当時)現役の高校教師だったのである。しかもオッサン。ま、みごとなオチでした。創元の装幀画はあの高野文子。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする