その2はこちら。
(マリリン・モンローその1)
BW(ビリー・ワイルダー):「お熱いのがお好き」の初日のラッシュを見たモンローが言った。「がっかりだわ。カラーの映画だとばかり思ってた。私はカラーの方がよく映えるのに」そこで彼女に言ってやった。「いや、カラーも試しているんだ。テストもした。」これは嘘。「いいかい、男に女の扮装をさせるときは、白粉もあつくメイクも濃くしてひげ剃りあとの目立つ男の肌を隠さないといけない。だから白黒で撮ってみたんだ」
CC(キャメロン・クロウ):それを彼女は鵜呑みにした?
BW:そう、鵜呑みにした(笑)。
(レイモンド・チャンドラーとアガサ・クリスティ)
BW:レイモンド・チャンドラーからは、まずいちばん最初に、真のセリフとはどういうものかを学んだ。彼に書けるのはそれだけだったから。それと独特の叙述。「男の耳からのびた毛は蛾をとらえるほど長かった」とか、他にも私の好きな、例えば「水の入っていないプールほど空虚なものはない」といったものをね。でも彼には構築する力はまるでなかった。一緒に仕事をした頃(「深夜の告白」)、チャン ドラーは六十才くらい。彼にはどこか片手間仕事の意識があったようだ。チャンドラーはアガサ・クリスティも嫌いだった。でもあの二人は互いの欠けたところをもちあっている。クリスティは構築することを知っている。ストーリーの細部はときにあまりに月並みだったけれど、構成力はあった。詩心にも欠けていたがね。
(スターとの関係)
CC:レンズを通して見たとき、ある意味で、ディートリッヒに心を奪われないでいるのはむずかしいと思いますが?
BW:私は惚れなかったよ。スターとは寝ないんだ。私の大原則だ。映画作りに忙しくてそれどころじゃない。もしもそっちの方向に気持ちがうずいてしょうがないとしたら……そのときはスタンドインと寝るね。遊ぶ楽しさは女優とかわらず、そしてそれ以上だ。女優ならあとで髪を整えないといけない。その分撮影によけい時間がかかる(笑)。
この大嘘つきが
その4につづく。