そしてもう一人の天才、宮崎駿の手塚批判とはこんな感じだ。
『彼がアニメーションでやったことは間違いだと僕は思うんです。彼は本来ヒューマニズムではないのに、そのヒューマニズムのふりをするでしょう。それが破綻をきたしてるんですよ、「ジャングル大帝」なんかでね。』
『昭和二十年代の彼が単行本で出した世界の持ってる衝撃っていうのは恐ろしいものだったわけですよ。で、それを(鉄腕)アトムがメジャーになった途端にね、ヒューマニズムにすり替えたんですよ。で、それが彼の商売感覚だと思うんです。』
『夜中に編集をウチに呼び込んでラッシュをめちゃめちゃにつなぎ換えて……ラッシュなんかめちゃめちゃにつなぎ換えたらネガの編集ができないんですよ。そういうことを平気でやっちゃう人なんですよ。それで後で大騒ぎになってね』
『で、周りは結局イエスマンだけになるでしょう。だから、手塚さんが虫プロと別れて手塚プロを作ったっていっても、本当ゴミみたいなスタッフしか集まらないですよ。それから、例えば彼が50万円でテレビ・アニメを始めたためにねえ……50万円ですよ、あの人は(笑)……周りの者がどれほどの損害を被ったことか(笑)』
『その人物が死ぬとね、安心して褒めだす人たちがいるんです。僕は今でも手塚さんと闘っているんだと思ってるから。死んだと思って、安心して褒めたくないんですよ。あの人の中に、その後のこの国の大衆文化の光と闇が凝縮されてあると思うんです。』
-「風の帰る場所」~ナウシカから千尋までの軌跡
しかしこの宮崎も、手塚との比較でもう一人の天才アニメ作家、押井守からこんなことを言われている。
『宮さんって人はね、指導者なの。組織を動かす能力を持ってる人なの。あの人のずば抜けた管理能力、誰もそれをいまだに語らないわけだけど、それはこのアニメの世界でも希有なもののひとつなんだよ。どんだけ細かいことまでやってたかってさ、「あいつの隣にあいつを座らせろ」って、席替えばっかりやってたんだよね。「女の子はあそことあそこに配置しろ」とか。自分で全部席順表作るんだよ。誰が今どこで何をやってるか全部管理したがったの。「おまえどこ行くんだ」って「ちょっとトイレ」って感じでね、5分以内に帰ってくるかどうか確認してるの。で、自分の机を出入り口の側にして、というふうなことまでやった人なんだよ。で、それが実際できた。もちろん不平不満は鬱積してくる。でもあの人が作ったものがそれをねじ伏せてただけで……』
すごいな宮崎!さすが元組合運動家。どこかのぼんくら支部長とはえらい違いだ(笑)。
この、手塚(アストロ・ボーイ)→宮崎(ハウルの動く城)→押井(イノセンス)という天才の連鎖を、来年から楽しむことができる。これは……ちょっと死ねないなあ。
2007年までにハウルとイノセンスは実現したけれど、アストロ・ボーイの方はどうなっているんだろう。まさかと思っていたドラゴンボールの実写版まで実現しそうだというのに。
鉄腕アトムに関しては、その後浦沢直樹が「PLUTO」という形で手塚への【回答】を続けている。