2時限目はこちら。
「(ラジオ番組に出ていることを)まずいんじゃないか?っていう人はいなかったの?」
「んーでも結局ボランティアでやってるわけじゃないですか。完全に無報酬だし。」そりゃそうだ。
「週5日制になる前からやってたろう?あの頃は収録だったのかな?」
「そうです。金曜の夜7時とか。三人の都合のいい時間見つけて。で、それでもダメなら欠席ってことで。」
確かにそのあたりは徹底的にアバウトな番組だった。
「でも最初の頃はたいへんだったんですよ。佐藤も荒生も録音に慣れてなくて、30分番組録るのに4時間ぐらいかけたこともありましたから。」
「ふーん。で、毎週ネタは誰が考えてくるの?」
「そりゃ佐藤ですよ。オレはあいつの番組を“手伝ってる”んですから。」
そのユルユルの番組内容とは、変遷はあったものの、現在は毎回庄内弁の単語をいくつかとりあげて、その用法とかをたいしたポリシーもなく(笑)ダラダラと三人がしゃべくり合う、それだけ。
「それにしてもつくりがゆるいにも程ってものがないか、あの番組」
「でしょ(笑)」
「まあカチカチにしっかりした番組だったら、あの味は出ないだろうけどなあ」
そう。最後にはいつもただの世間話に堕してしまう志の低さこそこの番組の取り柄というものだ。この緩さは確かに癖になる。
Tokyo FMに「アヴァンティ」という“東京一の世間話”をうたう番組があるのをご存じだろうか。ちょっと前までジェイクさんというバーテンが出てたやつ(今はスターン)。
不思議にみんな聴いたことがある番組だが、あちらが東京一のとんがった内容なら、こちらは庄内ローカルのどこにでも転がっている話がスピーカーから流れているだけ、とはちょっと極言にすぎるかな。でも、その面白さはほとんどタメと言っていい。
おまけに、もっともプロらしい突っ込みをみせるのがIで、社員たちの方がよほど素人っぽいという珍しいパターン(笑)。
特に荒生由子という存在はほとんど凶器に近い。先日も
「ミミズ、って漢字あんなんよの」(ミミズ、って漢字あるんだよね)
「みみず?」
「あ、あたしおべっだ!」(あ、あたし知ってる!)荒生爆弾がそろそろ爆発する。
「ほお!」男性二人驚く。こんなに教養ゆたかな女性だったのか。いつもニュースをとちってばかりなのに。
「ほら、なっがさ耳っていう字入ったな」(ほら、なかに耳っていう字が入ってるでしょ)
「?」
「……耳ぃ?」
「よぐ釣具屋さんどがの前さのぼり立てっじゃん」(よく釣具屋さんとかの前に幟が立ってるでしょ?)
「のぼり?」
「『ミミズあります』って」
「……荒生、それミミズでねーぞ。『餌(エサ)あります』だろっ!」
ゆるい番組でなければ存在し得ないバカバカしさ。わたしはわざわざ車庫の車の中で聴いていたのだが、ハンドルを叩き、涙を流して笑っていたのだった。
4時限目につづく。