2002年敗戦の日に。
DAISY CUTTER(ひな菊刈り)というふざけた名前を持つ爆弾をご存知だったろうか。わたしは辺見庸の告発を読んで初めて知った。重さ6㌧を超える大型破砕性燃料気化爆弾。あまりに重いため、爆撃機ではなく輸送機で投下せざるをえないしろもの。地上での衝撃は数㌔先まで届くという。はじめは名前のとおりヘリポートをジャングルに作る際に投下し、樹木を一掃させていたらしいが、現在は1発でアメリカンフットボール場(109×48㍍)5面分に相当するクレーターを作る。爆発の威力そのものも大きいが、爆発しなくても気化燃料が侵入したところでは酸素と反応して瞬時に爆発的に燃えるため、呼吸する生物はみな窒息する。目玉が飛び出したり、内臓が破裂したりと、正視に耐えない被害となる……
こんな無差別殺戮兵器を、アメリカはアフガンに投下している。確実に非戦闘員が大勢死んでいる。技術レベルは12世紀の、靴も履いていないタリバーンを“倒す”ために。
アフガンはどうやら、アメリカ軍事産業の新製品プレゼンの場と化したようだ。
読者の反感をかうことを承知で言ってやる。誰かあのブッシュとかいうクソ野郎を殴ってくれないか。自分の国がイスラム急進勢力を組織化し、大量の武器まで与えておいて、ほいで飼い犬が手を咬んだかのような“第三世界が西側にたいして初めて行った大規模テロ”に逆上し(もっとひどいことはパレスチナや東ティモールでさんざん行われた)、罪もない(まったく、罪はないぞ)非戦闘員もろともビン=ラディンを殺しにかかる。自分たちがアジア、中南米でどんなことをやってきたかの反省もなく。
だいたい根本的なことをひとつ。タリバンがあのテロをやったという本格的な証拠でもアメリカは提示したか?なんでアメリカはアフガンを爆撃せにゃならんのか、冷静になってみればおかしいことだらけだ。この件についてはあらためてまたやるけれど、辺見のアメリカ論とともに、爆撃にたいしてもっともまっとうだった意見は古館伊知郎の「かくまう奴はぶった斬る、っていうのじゃ、ますます戦争がヤクザの出入り化するじゃねえか」だった。まったくだ。
……2007年現在、標的はイラク(アフガン以上に意味がわからない)に変更され、結果的に世界の“コスト”が一気に高騰。原油価格を下げるには次期大統領選における共和党の敗北が必要、なんて情けない話まで出ている。
愚劣な王をいただいた国と無邪気にタッグを組んだ幼稚な国々。これが世界の現状と言えるのではないか。