「いやー、あのオープニングがかっこいいんだよねー」
「うん。その日のドラマをちびちびっと見せるんだよ」
「けっこうそれが長いんだ。10分ぐらい。」
「主役がまた良くて」
「あんな危機一髪のときにそーゆーキザなセリフ吐くかー!って」
……ウチの職場のTV版「マイアミ・バイス」のファンたちは、一度も見たことのないわたしにボイラー室で説明してくれる。二十年ほど前に山形でも深夜に放映されていたのだ。
「映画の方はどうだったの?」今度はわたしが説明する番。
「いやー映像は重いのに音楽が軽くって……」
「主役はやっぱりドン・ジョンソン?」
「なわけないじゃん。あれから何年たってるんだよ」
「いや、あいつならやりかねん。」どんな野郎なんだ。
わたしが不思議に思うのは、テレビ版も映画版もクリエイトしたマイケル・マンという存在だ。「ヒート」「インサイダー」「ALI」「コラテラル」など、重い題材をあつかいながら、しかし片側ではいつもポップな音楽が始終使われているという印象。
今回も、コリーン・ファレル、ジェイミー・フォックスの刑事コンビと、わたしには「始皇帝暗殺」以来のコン・リーの三人を、んもーどうしてそこまで、と言いたくなるぐらい接写し、夜のマイアミ(この街が舞台なのは中南米との親和性が強いからだろうか)の暗さと相まって重い重い。しかしドラマが終わった途端に流れるのがフィル・コリンズの名作「夜の囁き」の軽快なカバー。このミスマッチがよくわからない。バランスをとっているのか、あるいは指向がMTVと重厚なドラマに分裂しているのか。
しかも、最後の銃撃戦は実戦さながら。観客にここまでの臨場感が必要なのか、と思うぐらいだ。映画館を出るときはさすがにグッタリ。これまた、いつものマイケル・マンなのだった。今度テレビ版を借りて、いったいどんなものだったのかチェックしてみよう。まさか毎週毎週視聴者を疲れさせてたんじゃないよね?