事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「ブラック・ダリア」The Black Dahlia

2008-06-12 | 洋画

Blackdahlia 前にジョン・ダニングのミステリを特集したときにもふれた話。ワイキキの書店に入ったわたしは、読めないながらに原書のペーパーバックを手にとってレジへ持って行った。店員は絵に描いたような金髪碧眼の美青年。わたしの購入する2冊をつくづくと眺め、「いい選択だ」とほめてくれた。そのグッドチョイスこそジョン・ダニングの「死の蔵書」とジェイムズ・エルロイの「ブラック・ダリア」だったのだ。金髪店員はいきおいこんで「このブラック・ダリア事件も入っている『ハリウッド・バビロンⅡ』はいらないか?」と誘ってくるが、あのスキャンダル集を持って税関を抜けるのも憂鬱だと断ったのだった。

母親が少年時代に惨殺された過去もあって“血塗られた作家”ともよばれるジェイムズ・エルロイの頂点「LA四部作」は以下の流れだ。

「ブラック・ダリア」The Black Dahlia(’87)
「ビッグ・ノーウェア」The Big Nowhere(’88)
「LAコンフィデンシャル」L.A. Confidential(’90)
「ホワイト・ジャズ」White Jazz(’92)

特に「ホワイト・ジャズ」は“読み終えてから二週間ほど他の本が読めな”くなるほどの傑作。その覚悟がおありなら、ぜひ一読を。共通点は、とにかく登場人物がすべて壊れていくことで、だから特定の人物に感情移入することがまずできないつくりになっている。

今回も主人公のファイヤー&アイスであるブライカートとブランチャード(原作を読んでいるときだってまぎらわしくて仕方がなかった)の壊れっぷりがあまりにすさまじいものだから、ミステリとしての完成度云々はわたしにとって二の次になってしまう。おかげでカーティス・ハンソンが「LAコンフィデンシャル」を映画化したとき、「あー、こういうお話だったんだ」と初めて気づいたくらい(笑)。

わたしが不思議に思うのは、「LA~」にしても「ブラック・ダリア」にしても、あのエルロイの原作がもとになっているにもかかわらず、なんでまた“普通にわかりやすくて面白い”ミステリ映画になってしまうのだろうということ。で、その結果「なんでお前はこの犯行現場に気づくんだよ。ハリウッドはそんなに狭いのかよ!」とか余計なことを考えてしまう。そのせいか、本国では客がほとんど入らず、製作費も回収できないといわれている。監督のブライアン・デ・パルマにとっては「虚栄のかがり火」(あれは、ひどい出来だった)以来の大コケ。おかげで「ホワイト・ジャズ」が映画化される可能性はなくなってしまったか。ちょっとさみしい。

ごひいきのスカーレット・ヨハンソンが出ているのに、彼女があまり魅力的に見えなかったのは、共演のジョシュ・ハートネットとできちゃったことにわたしが嫉妬しているからだけではないはず(T_T)。デ・パルマとエルロイは、火と水のように相性が悪かったのかも。それにしても、“あの人”が犯人だなんて、すっかり忘れてましたー。

※画像のポスターは秀逸。殺され方のヒントになっている。

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「メディア文化の街とアイドル」仲川秀樹著 学陽書房

2008-06-12 | まち歩き

518f1pezktl これ、学術書です。酒田出身の社会学者である仲川が、地元酒田を題材にリサーチした“地方の商店街”論。酒田大火の火元となった映画館グリーンハウスや、ローカルのアイドルとして評判になったSHIPなどを語っていて、酒田の人間としては興味深い。わたしが連載している雑誌の発行元である某出版社の編集にこの本の話をすると、「どわっ!学陽の本じゃないですか!(笑)」とライバル意識むき出しでした(シャレで言ってるんですけどね)。

同世代である仲川教授のリサーチには、わたしの同級生たちが手伝ったらしいのだが「いやー仲川ゼミの女の子たちは可愛い子ばっかりでさー」下心見え見え。
「オレ、あの本はもらったのがあるからやろうかホリ。」
「うるせー、オレはちゃんと買ったんだよ。」
われわれオヤジと学問の世界ははるかに隔たっている。

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「墨攻」(ぼっこう)~‘06 中・日・香港・韓~

2008-06-12 | 洋画

061016194042 戦国時代。趙と燕の国境にある粱城は、趙によって攻撃されようとしていた。10万の趙軍に対し、梁城の全住民はわずか4000人。頼みの綱は墨家の救援部隊だったが、間に合いそうもなく、粱王は降伏を決断する。墨家の革離(かくり)がたった1人で駆けつけたのはその直後だった。兵に関する全権を粱王から与えられ、早速城を守る準備に取りかかる革離。趙軍の指揮官・巷淹中は革離を好敵手と見なし、やがて激しい攻撃を開始する。

戦乱の世で「非攻」を掲げ、しかし弱者を守るためには戦闘のプロとなった思想集団・墨家。彼らは儒家と並ぶ勢力を誇ったが、秦の時代に忽然と消滅。その後2000年の間に、史料がほとんど失われてしまった墨家は、今では一切が謎に包まれた存在だ。そんな彼らを題材にした小説とコミック「墨攻」。日本で生まれたこの作品は、海外でも熱烈なファンを獲得。その1人だった監督の熱意により、日本、韓国、香港、中国の3カ国4地域が手を結んだビッグ・プロジェクトとして、映画化が実現。優れた分析能力と的確な判断力を持つ革離役に香港の大スターアンディ・ラウ、敵将の巷淹中役に韓国の国民的俳優アン・ソンギと、各国から豪華キャストが集結。
~goo映画より~

 見終わってちょっととまどう。酒見賢一の原作と微妙に肌合いが違っているなあと思ったので。てゆーか違いすぎ。ストーリーは上で紹介したとおりだけれど、言ってみれば理不尽なお話なのである。

 酒見の場合はそんな理不尽も「うーん、まあ、それも仕方ないかな」ととぼけてみせるのが常だが(中国の古代史なんかそんなスタンスでなければ納得できないでしょうや)、しかし映画は違う。歴史上初の博愛主義“兼愛”と“非攻”を掲げて突っ走る墨家のなかでも、原理原則ガチガチの主人公革離が粱の民をオルグし、兵站を整備、武器を改良し、城を守る。専守防衛が基本ながら、もっとも効率的な守備が“できるだけ敵を殺すこと”と片側では実利的な戦法をとる。このあたりの矛盾が面白いのだが、しかし映画のなかの革離はそのことで激しく悩んでしまうのだ。「あなたは正解だけを求めたがる」とヒロイン(けっこうかわいい)に諭される革離の苦悩をどう評価するかがこの映画のキーだと思う。

 にしても、中国語をまったく話せないアン・ソンギを起用したり、例によって人民解放軍が大挙して動員されていたりする大作映画の原作が日本のコミックであるあたり、現代。

※原作の、南伸坊のイラストは最高だった。あれを味わうだけでも読む価値はある。

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「泣き虫弱虫諸葛孔明」酒見賢一著 文藝春秋

2008-06-12 | 本と雑誌

51egss30sal 「陋巷に在り」で孔子の弟子、顔回を中心にエスパー合戦を描いて見せた酒見だけれど、これがなにしろ全13巻。孔明を題材にしたこのシリーズにしたって、こりゃいったい何巻出せば完結するんだか。とりあえずあらゆる「三国志」のバージョンのなかで史上最低の劉備だろう(笑)。

孔明人気ってのもよくわからないが、小池一夫が描いたマンガ「青春の尻尾」と併読すると趣深いかも。あれはエッチだったなあ。

第弐部はこちら

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