田宮二郎主演、山本薩夫監督の大作。モノクロ画像のなかで手術シーンが連発する。田宮のテレビ版(曽我廼家明蝶の舅役はよかったなあ)にしても、唐沢寿明の近作にしても、グロい映像が魅力のひとつだったことは確かだろう。昭和四十年代の大阪の風景だけでも一見の価値がある。愛人役の小川真由美がものすごく魅力的。
自殺した田宮の不幸は「他人がバカに見えてしまうこと」だったらしい☆☆☆★★★
田宮二郎主演、山本薩夫監督の大作。モノクロ画像のなかで手術シーンが連発する。田宮のテレビ版(曽我廼家明蝶の舅役はよかったなあ)にしても、唐沢寿明の近作にしても、グロい映像が魅力のひとつだったことは確かだろう。昭和四十年代の大阪の風景だけでも一見の価値がある。愛人役の小川真由美がものすごく魅力的。
自殺した田宮の不幸は「他人がバカに見えてしまうこと」だったらしい☆☆☆★★★
「風と共に去りぬ」篇はこちら。
さあ、いよいよ「なんでこんなダメダメな本がベストセラーになってしまったんだっ!」篇です。みなさまおなじみの本がクソミソにけなされています。覚悟はよろしいか?
「知的生活の方法」 渡部昇一 昭和52年
豊崎 この人の若き日のありようってオウムに走った理系の秀才に感じがよく似てませんか?だって東京の大学に通ってて、自分の大学と寮と古本屋しか知らないとか言ってんですよ。
岡野 ところがたまげるようなことはいっぱい知っている。とにかくたいへんに「知的」な人です。<ものの本によって知るだけだが、(略)女性のオルガスムスははなはだしい場合は一週間、十日とその余韻が続くとも言う>って、知らなかったぁ。
豊崎 そうそう。だからわたしたち女性は、日常生活できないんです。OLなんかお勤めもできないんです……んなわけねえだろ。十日も感じ続けてたら、正気保てねえよオレら。
岡野 論理の飛び方についてゆけない知的パワーが随所に展開されます。自分は絶対本を売らないとエバリつつ、ある外国文学者について、<あっさり蔵書を売り払える学者の書いたものがどんなものか、という変な好奇心からその人の論文を読んでみたが、やはりひどいものであった>。こんなの、インネンをつけてるのと変わらないと思う。でも、この先生はかわいいとこもあるんだ。知的な食べ物はチーズとワインだって言い張ってさ、これに変えたらご飯の量が減った、と。<つい数年前までは、夕食は四、五杯食べることがよくあった>って(笑)。
豊崎 渡部、食べ過ぎ!
……またしても地元の偉人をサンプルにしてしまった。というか、渡部昇一ってどうしようもなくない?子どもの頃、家族に溺愛されて独りで靴下もはくことができなかった(しかもそのことを得々と語る)野郎は、有名人ではあっても偉人じゃ全然ない。よく山形新聞に寄稿しているけれど、これがまたひどいのだ。
「(小泉外交の評価に関して)ある男は家庭内では多少行儀が悪く、湯上がりにはパンツ一つで家の中を歩いたりする。しかし外の仕事には成功し、家族の者には世間で肩身の広い思いをさせている。また別の男は家庭内では行儀のよいパパであるが、外の仕事では失敗して、家族の者には世間で肩身のせまい思いをさせている。家族にとって、どっちの男がよいか。」
……気のきいた比喩のつもりなのだろうか。知的とは奥深いものなり。ナイス渡部。
次回は「気くばりのすすめ」。
「ワールド・エンド」はこちら。
とにかく、ジョニー・デップだ。オーランド・ブルームとキーラ・ナイトレイ(酒田でロケをした「SILK」の主演女優でもある)なんて絵に描いたような美男美女と共演しながら、そんなことはまるでお構いなし。デップはデップのままで孤高に存在する。ズルズルニチャニチャと生理的嫌悪感をちりばめた怪物や海賊たちのなかでも、ひときわ不潔で小狡くありながら(笑)、しかしそれでもデップの魅力は微動だにしない。
実はそれ以外には何にもない映画なんだけど、それで十分。むしろ余計な小細工は作品の魅力を減ずるだけだろう。“余計なものが何もなかったからこそ”10億ドルなんて馬鹿げた興収を世界中で荒稼ぎすることができたんだと思う。観ている間だけは涼しく、楽しく、入場料だけはしっかり取られ、後には何も残らない。まるで海賊が通り過ぎたように。
「三太郎の日記」罵倒篇はこちら。
このブックガイド(一応)の最大の効用は「古典を“読まなければならない”」という呪縛から解き放ってくれることだ。各社の文庫が「夏の100冊!」とか特集を組むけれど、毎年リストアップされる古典が、マジで面白いのか、ひょっとして「ためになる」なんて教養主義がその背景にあるのでは?といつも思っていた。久しぶりに本を手にとり、楽しい数時間を過ごしたいと考えた夏の朝、たとえばこんな作品を選んだとしたら……
「風と共に去りぬ」 M.ミッチェル 昭和24年
豊崎 (スカーレットが)知能なし、長期記憶なし、あるのは美貌と押し出しの強さだけ。しかも、根性悪で凶暴。社会病質者みたいなキャラなんですよね。
岡野 で、またアシュレが駄目なヤツなんだよ。南北戦争前は芸術に造詣の深いお坊っちゃんでよかったのかもしれないけど、生き馬の目を抜く戦後になるや、ただの役立たず。
豊崎 レット・バトラーにしてもアホ丸出し。単なる子煩悩。
岡野 だから、こいつの言うことならスカーレットにも理解できるんだよ。知能指数合わせて100未満カップル。
……ファンも多い作品なのにここまで言わなくても(笑)。実はわたしもスカーレットにはついて行けないものを感じていて(罵倒もここまでくると、彼女の「明日考えるわ」が別の意味をもっているみたい)、どうして女性たちはこの作品が好きなのかなあと不思議に思っていた。読まなくてもいいか無理して。
誤解されると困るのだが、「百年の誤読」は罵倒ばかりの書ではない。ほめるところはキッチリ評価している。
その絶賛組には夏目漱石、泉鏡花、堀辰雄、内田百閒、芥川龍之介、江戸川乱歩、中島敦、谷崎潤一郎、村上春樹、深沢七郎、さくらももこなどがいる。
逆にボロクソに言われているのは森鴎外、志賀直哉、尾崎士郎の「人生劇場」、サルトル、石原慎太郎、曽野綾子など。こんなことを言うと怒られそうだが、非常に納得できる結果。
さて、次号からは罵倒の本領「なんでこんな本が売れてしまったんだ」篇に突入する。いやはやこれが凄いのだ。
ということで次回は「知的生活の方法」うわ、また郷土の偉人(笑)を……