おなじみ、TBS磯山晶プロデューサー&脚本宮藤官九郎の最強コンビによるコメディ。ようやく地元のビデオ屋にDVDが入荷したのであらためて特集。
なにしろ設定がすごい。普通の主婦に文豪夏目漱石が“憑依した”ことによるドタバタ。これを昼メロの伝統枠【愛の劇場】でやろうというのがまず無茶だ。
この勝負にTBSが勝ったかどうかは微妙。視聴率は5%台。お昼の帯ドラマとしては及第点でも、磯山~宮藤のいつものパターン“放映終了後にブームになる”わけでもなかったようだから。
しかしホリ家では熱狂的に迎えられた。毎日義母がVHSで録画し、一週間まとまったところで妻とわたしが鑑賞させてもらう……こんなアナログな作業を全40回、8週間にわたって続けたのだから。
さて、夏目漱石が主婦にのりうつるという設定を保守的な(偏見?)専業主婦層に受け入れさせるために、宮藤官九郎はさまざまなドラマ的冒険をしこんでいる。
◇一種の“性倒錯”の実現
内面は37才の男性(まだ作家としてデビューしたばかりの漱石)だが、外面は同い年の女性であるフリークス的興味(「吾輩は男色家ではない!」と常に力説するが、そう言っているのが水蜜桃のような斉藤由貴である不健康さ。お笑い宝塚とでもいうか)。
◇タイムトラベルによる“浦島太郎”ギャグの連発
明治人である漱石が、どれだけ平成日本を憂えても、プリンやピザのうまさに抗しきれないあたりは爆笑。
しかし何といってもキャスティングの勝利だろうか。姑に竹下景子、嫁に斉藤由貴という、新旧の(若い読者には旧旧の、ですかね)グラビアアイドルを配し、夫役にはなんとベッシー及川光博!これはもう鉄壁の布陣ですね。しかもそれぞれ
竹下景子→ちゃらついた五十代らしくひたすら若作り
斉藤由貴→喫茶店でパートする設定なので、毎日彼女のメイドファッションがおがめる
及川光博→あのベッシーが地味な郵便配達ルックで登場(夜は赤パジャマ)
……こんな、お好きな方にはたまらないサービスが用意してあるので、およそ「愛の劇場」らしくはない。でも実は毎日のテーマが「不倫」だったり「セックスレス」だったり、王道のメロドラマでもあるのだ。以下下巻につづく。