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「そういえばお前、最後に映画館行ったのっていつだ?」
「うーん。オレはあんまり行かないからなあ」
むかし、クミアイの役員をいっしょにやっていた事務職員は、しかし飲みながらいきなり語り出した。
「でもさ、あの映画は大好きなんだ。ほら、脱獄の話……えーとなんだっけ、そうだ『ショーシャンクの空に』!オレのベストワンはあれで決定。」
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原作スティーブン・キング、監督フランク・ダラボンとくればその「ショーシャンクの空に」と「グリーンマイル」。でもあの路線を期待して今回の「ミスト」を観たらたまげると思う。特にラスト。カタルシスと救済でうならせた前二作品と違い……。
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構成は驚くほどパニック映画の教科書「ポセイドン・アドベンチャー」に似ている。背景は、豪華客船の転覆と、密閉されたスーパーマーケットにしのびよる謎の霧(=mist)と大違いだが、災厄に人間たちがどう立ち向かい、どう脱出するかのベクトルはいっしょ。現状のまま救助を待とうと主張する者、わずかな可能性に賭けて合理的脱出方法をさぐる者に二分される経過までいっしょである。「ミスト」では、出て行くなと主張する方が宗教者であることで、ポセイドンとは逆になっているけれど。
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“霧”のなかに潜むモンスターがなぜ生じたかは、正直どうでもいい(笑えますよ)。ダラボンが描きたかったのは、追いつめられた群衆が、最初は嫌悪していた狂信的原理主義者のおばさんに次第に惹かれていくプロセスだったのだろう。“宗教が生まれる現場”を見せつけられた思いだ。聖書のフレーズをふんだんに引用し、神の怒りを映画というメディアで具象化したい……そんな意図はわからないではない。でも、神が決して公平ではないことまで『娯楽』である映画に引用しなくてもよかったのでは?因果応報が、ハリウッドの方程式どおりには現実に行われないことを、わたしたちは近年の自然災害で重々承知しているのだし。どうも脚本家(ダラボンはインディ・ジョーンズの新作の脚本にもかんでいる)が監督する弊害がでた作品のような気がする。
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登場人物たちがマヌケに見えるあたりもつらい。伏線もほとんど機能していないので、パニック映画としては明らかに二流。まあ、あのとんでもないラスト(ヒント→地獄行きのノアの方舟)ではパニック映画を名のることができようはずもないが。見終わったらいっしょに映画館に行った人と論戦必至。まちがってもデートムービーに選んではいけない。
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