事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「実録・連合赤軍」その2

2008-06-13 | 邦画

その1はこちら

「実録・連合赤軍」は、ナレーターの原田芳雄(監督の若松孝二とはいいコンビ)の、懇切丁寧な現代史の解説が入るのでそれだけでも面白いのだが、連合赤軍の不幸は、この組織がまさしく“連合”であったあたりにある。若い読者は背景がわからないだろうからちょっと解説します。

 60年安保闘争の敗北後(岸信介の退陣などのおまけはあったが)、学生運動は既成政党である社会党や共産党と離れ、分裂をくりかえす。明治大学を拠点にした共産主義者同盟(通称ブント)が、中核派、解放派などと手を組んだのが三派系全学連。この、いわゆる全学連が学生運動の中心となっていく。

 東大安田講堂の攻防、新宿騒乱など、60年代末に学生運動が盛りあがるなか、ブント内部で塩見孝也が主導する関西派が【赤軍派】を形成する。が、彼らは大菩薩峠で軍事訓練中に主要幹部が検挙されてしまう(まるでお遊びのような訓練なのが学生の“気分”をよくあらわしている)。残ったメンバーのうち、重信房子はレバノンに脱出し、田宮高麿らはよど号をハイジャックして北朝鮮に渡る。

 主力を欠いた赤軍派の中心となったのが森恒夫。彼は初期の闘争の際に、おびえて脱走した過去があったことが描かれる。つまり、臆病者だったがゆえに、過度に力強いリーダーを演じなければならないあたりが悲劇の伏線だと若松はわかりやすく語っている。この、いわば弱体化した彼ら赤軍派と、文化大革命に同調する革命左派(リーダーは永田洋子)が手を組んだのが“連合”赤軍だったのだ。

 悲劇の発端が“水筒”だったことはよく知られている。赤軍派と革命左派が群馬県の山中で合同山岳軍事訓練を行うときに、永田洋子ひきいる革命左派の方が水筒を用意していなかったことを赤軍派に批判される。永田はこう思ったはずだ。「山岳訓練ではこちらの方に一日の長があったはずなのに、こんなことで赤軍派におくれをとってしまうなんて」と。ささいなミスを取り返すために、プライドの高い彼女はメンバーのどんな失点も見逃さず、どんどん訓練は過激になっていく。そんなきわどい連合の行き着いた果てが、あの『総括』だった。以下次号

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「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程」

2008-06-13 | 邦画

 高校生のころ、図書室で新任の副担任と話していた。
「60年安保のとき、東大生がひとり死んだでしょう?あの人の苗字の読み方がわからないんだ。」
「ああ、白樺の樺ね。あたしもわからないなぁ。」
正解は樺(かんば)美智子。わたしより5年ほど年長であるだけで、彼女の名前すら読めないノンポリ世代が台頭していたわけだ。

「新左翼の連中なんてものは、ありゃ人間じゃないから。」
社会人になって初めての職場では、アンチ日教組な教員が平然と言い放っていた。長い通勤路でハンドルを握りながら、「社会人と学生の言い分が真っ向からぶつかったとき、正しいのははたしてどっちなんだ」と考えた。結論は即座に出る。「“生活”に惑わされていない分、これは理屈として学生の圧勝だろう」と。

“人間じゃない”とまで新左翼が思われた背景に、1972年2月の「あさま山荘事件」があることはまちがいない。連合赤軍の“兵士”が、軽井沢のあさま山荘に立てこもり、1500人もの警官隊に包囲された攻防戦は、十日間ぶっとおしでテレビ中継され、NHK、民放を合わせた視聴率は90%超。NHKの10時間の報道特別番組は平均50.8%を記録している。これは現在にいたるまで、報道の視聴率日本記録(Wikipediaより)。要するに、当時の日本人はみんなこの“左翼の敗北”の現場を見ていたのだ。わたしは小学6年生で、学級文集だかの印刷のために日曜に登校しており、職員室のテレビで当時の担任と中継を見ていたのをおぼえている。

 あのとき、赤軍の側に死者が出ていたら(赤軍が樺美智子のようなシンボルになったら)、それからの左翼事情は大きく変わっていただろう。しかし後藤田正晴警察庁長官が指揮した警察は、警察官2名、民間人1名の死者を出したものの、歴史的に見れば圧勝したといえる。あさま山荘事件を、警察の側から描いたのが原田真人の「突入せよ!あさま山荘事件」(’02)であり、この映画を観て激昂し、若松孝二監督が赤軍の側から描いて見せたのが「実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)」なのだ。

 平日の朝イチの上映であるにもかかわらず、山形フォーラムには団塊の世代を中心に20名ほどの観客が入っている。ひょっとしたら、自分の世代の闘争にまだケリをつけられずにいる人も駆けつけたのかもしれない。以下次号

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