いい日本映画を見つけるコツは、かつては山田孝之が出る作品を選べばよかった。いまでも彼の作品選択はおみごとだけれども、近ごろはこれに池松壮亮が加わる。
「ぼくたちの家族」「ディストラクションベイビーズ」「海よりもまだ深く」「永い言い訳」「続・深夜食堂」「夜空はいつでも最高密度の青色だ」「万引き家族」「散り椿」……彼が出る映画には、なにか“ある”じゃないですか。
そんな池松が、塚本晋也の作品に出る。しかもオール庄内ロケ。これで期待しないほうが無理。
でもわたしは塚本晋也のいい客ではなくて、監督作は「鉄男」しか見ていません(笑)。あの、機械と肉体が融合していくカルト作は、大友克洋の「AKIRA」の影響下にあったんだろうか。あっちも融合するのは鉄雄だしね。
この映画でも、ギョッとする場面がふたつほど仕込んであって、鶴岡まちなかキネマの高齢観客たちは驚愕しただろう。
しかしその他はセディックの「おしん」の家や金峰山あたりのおなじみのロケ地にわくわく。画面がひたすら美しくて、「ICHI」のときのように脚立が映りこんでいるんじゃないかと不安に思うこともありませんでした。
Facebook仲間がエキストラで参加していて、蒼井優とからんだと自慢。斬る(笑)。さすが女優で、テストのときからボロボロ涙を流していたそう。すごい。
その、池松壮亮・蒼井優・塚本晋也のほぼ3人芝居。食いつめて百姓の家で働かせてもらっている若き浪人が、開国か攘夷でゆれる世にあせる剣豪に連れられ江戸へ向かうことになる。そこから京に向かうとなれば、新撰組的な存在になるのだろう……しかし。
人を斬ることが命を奪うことなのにどうしてもなじめない浪人。彼に剣豪は勝負をしかける。
サウンドが実にすばらしい。剣豪に無残に斬り殺されるならず者に、「龍馬伝」の最終話で龍馬の暗殺者としてシオンといっしょに登場した中村達也がもっと悪相で登場。
「散り椿」につづいて、池松壮亮には剣が似合う。あ、彼のデビュー作は「ラストサムライ」だったんだよね。忘れてた。やっぱり彼の映画にはなにかある。