探偵沢崎の初登場作。というより原尞のデビュー作でもある。
徹底した推敲の果てに(十年かかったという)、この作品を持ちこまれた早川書房は驚いたろう。いきなりの大傑作。しかも最初からポケミスの段組みで書かれていた!(意図的なものではなかったとあとがきで解説されています)
わたしは原の大ファンだから、もちろんすべて単行本の段階で読んでいる。しかしポケミスでの再刊はほんとうにうれしい。まもなく2000冊に及ぼうというポケミスの歴史のなかで、日本のミステリが刊行されるのは4冊目だとか。
前の三作は浜尾四郎の「殺人鬼」、小栗虫太郎の「黒死館殺人事件」、そして夢野久作の「ドグラ・マグラ」……つまりこの傑作群に比肩する作品だと認められたわけだ。
にしてもこの作品に、これだけ本格ミステリ的なトリックが満載だったとは……そりゃあ寡作にもなるって。