現在のアメリカは、愚劣な大統領のもとに愚劣で露骨な政治が行われているわけだが、少し前までは、日本の政治家には絶対にかなわない美質があった。
スピーチがうまいのだ。
洗練された(あるいは意図的に洗練されていないふりをした)警句を用いて、スピーチそれ自体で人の心を動かす。他民族国家であるアメリカは、だから過剰にアメリカ的であろうとふるまう。その手段としてスピーチは有効な手段だったのだろう。
この映画においても、ジョンソン大統領はケネディのスピーチライターの残留を強く望み、スタッフ(おおなんとクリス・トーマス・ハウエルじゃないですか)はそのライターを励ます。
「一般教書演説であり、(ケネディの)追悼演説であり、就任演説をあと21時間で書け」
「無理ですよ」
「君ならできる」
「いったいどうやって?」
「いつもどおりの、君のやり方で」
……こういうやりとりにはしびれます。
ジョンソン大統領のお話。わたしがものごころついた時のアメリカ大統領は彼でした。
「国際ニュース」で(これはジャンルという意味ではなくて、夜6時55分から山形放送で……ということは日テレで放映されていた番組)常連のように彼は登場した。ヤン坊マー坊天気予報の次のレギュラーって感じ。そして彼にはいつもこの言葉がつきまとった。
「北爆」
ベトナム戦争が、彼の不人気を決定づけたのだが……うわ、言いたいことはもっとある。以下次号。