70年代のパニック映画(これは日本の造語で、実際にはディザスタームービー)ブームのさなかに公開された作品。監督は「脱走特急」「アバランチエクスプレス」のマーク・ロブスン。
主演はチャールトン・ヘストンとエヴァ・ガードナーの熟年コンビ。すでに心の離れてしまった夫婦を演じています。そしてパニック映画にかかせないジョージ・ケネディ。
これだけ高齢のキャストをカバーするためか、ヘストンの愛人役で「コーマ」のジュヌヴィエーヴ・ビジョルドが起用されています。
題名からもわかるように「大空港」(Airport)の直系なので、悠揚たるメロドラマが展開されます。不倫も礼儀正しい(笑)。
地震の予兆があり、しかし(わたしたちがそうであったように)災害が目前に迫ってもみんな目を背ける。そして実際に大地震が起こってドラマは転調し、恋愛も地震によってある結末を迎える。
「ゴッドファーザー」のマリオ・プーゾが脚本を書いたからか(あるいはリライトしたからか)、セリフは味わい深いけれども、しかしやっぱりドラマとしてはもの足りない。
でも、この映画のキモは画面にはなかったんです。音なんですよ。
ユニバーサルが親会社(当時)のMCAと共同開発した音響システム「センサラウンド」こそが売り。化けものみたいなウーファーで重低音を再生し、この映画の場合は地震をリアルに感じさせたわけ。
わたしは中学生のころに酒田グリーンハウスでこの作品を見たのだけれど、1列目と2列目の客席を取り外し、ずらりと黒いウーファーを鎮座させた光景はいまでもおぼえています。こういう、3Dだとか4DXみたいな、仕掛けで客を驚かせようという姿勢は……わたし、大好きなんです(笑)。