事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

おんな城主直虎 第3回「おとわ危機一髪」

2017-01-22 | 大河ドラマ

第2回「崖っぷちの少女」はこちら

前回の視聴率は15.5%とめずらしく的中。裏がさんまMCの「行列のできる法律相談所」スペシャルだったので大健闘かと。

むしろ蹴散らされたのは木村拓哉主演の「A LIFE」の方。あれだけのキャスト、あれだけの番宣をかましたのに初回14%台はしんどい。SMAP騒動におけるキムタクへの逆風はそんなに強かったのか。わたしは木村拓哉ファンなので応援してるけどね。ドラマは見ないけど(笑)

さて第3回。ようやく面白くなってきた。これまではあの子役(と乳母)のせいで拷問に近かった。今回も考えなしのガキのせいで大人たちが右往左往する展開はいっしょだけれど、むしろ腹黒い連中が子どもを利用する方向にお話が進む。

今川から強要された結婚を、出家すればすべて解決、父上たちはどうしてこんな簡単なことに気づかないのかしら、と小賢しいガキンチョは髪を切ることで得意満面。しかし今川は当然激怒してガキンチョを人質として差し出すように命令。井伊家では人質に関して、なぜかタブーのようになっていて……

ざっくり言うと、蹴鞠勝負になんとか勝利して人質となることをガキンチョは回避。さすが静岡はサッカー王国ですな。無邪気に喜ぶ親子だけれど、今川にとっては将来の三河攻めへの布石であり、軍師である禅寺の坊主たちの丁々発止が背景にある。

唯一の腹黒い存在だった筆頭家老(吹越満)を捨て駒としてしか考えていないあたり、今川義元は黒さのスケールが違う。ようやく昇太がセリフを発したのでむしろホッとしました。最後までしゃべらないのかと思っちゃいましたもの(笑)。

直情径行な井伊谷の面々のなかで、ひときわほんわかしている伯父役の刈谷俊介がなつかしい。「大都会」「西部警察」のあの人が、すっかり渋くなっている。いいですな。

今川屋敷のセットは金かかってるぞー。調子が出て来たので今回の視聴率は15%台キープと読みました。

第4回「女子にこそあれ次郎法師」につづく

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極私的大河ドラマ史PART5 太閤記ふたたび。

2017-01-21 | 大河ドラマ

PART4はこちら

「太閤記」は、原作に吉川英治の「新書太閤記」を使うことだけが決定していて、キャスティングはいい意味でいいかげんだったわけだ。しかしこのドラマが歴史に残っているのには他の要素もある。

演出にドキュメンタリー畑の吉田直哉を起用したのだ。彼は第一回のオープニングに新幹線が突っ走る映像を挿入。時代劇が始まると思っていた視聴者の度肝をぬいた。驚いたのは視聴者だけでなく、NHKの上役たちもびっくり。

吉田は特に驚かすつもりはなく、撮影した尺が足りなかったなどの事情もからんでいたようだし、川島雄三の「幕末太陽傳」も、現代の品川から江戸の遊郭に瞬間移動する手を使っていたわけなので、演出として不作法だったわけではない。

しかし、様式美のかたまりだった赤穂浪士とはまったく違う路線で行くんだ、というマニフェストとして十分に機能したのだろう。

想像でしか言えないんだけど、まだこのころ、さすがにリアルタイムで大河を見ていないのでしかたないです(笑)。まだものごころついてません。

フレッシュトリオをささえるキャストはまたしても豪華。

正室ねねに藤村志保。側室茶々、つまりのちの淀君に三田佳子。豊臣秀次が田村正和で黒田官兵衛に田村高廣の兄弟。お市の方が岸恵子で森蘭丸が片岡孝夫(仁左衛門)、明智光秀が佐藤慶で武田信玄がなんと早川雪州!

くわえて、曽呂利新左衛門(とんちの人ね)に有島一郎、今川義元に三国一朗、蜂須賀小六に山茶花究といった味のある配役を見ると……あああ見たかったなあこの大河、とつくづく。

平均視聴率は31.2%。最高視聴率は39.7%。戦国時代を描いた初の大河ドラマでもあった。

【源義経につづく

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「サンドリーヌ裁判」 トマス・H・クック著 ハヤカワ・ミステリ

2017-01-20 | ミステリ

東京都文京区の自宅で妻を殺害したとして、殺人容疑で逮捕された講談社の編集次長で韓国籍の朴鐘顕容疑者(41)は警視庁の調べに対し、「妻を手にかけるようなことはしていない」と容疑を否認した後、黙秘を続けている。同庁は、現場に残された証拠を積み重ね、どこまで殺害状況を特定できるかが今後の捜査の焦点となる。
2017年1月18日 読売新聞

……シンクロニシティとはあるものだとびっくり。この事件が報道されたとき、ほとんど展開がそっくりなミステリを読んでいたので。タイトルは「サンドリーヌ裁判」。著者は「緋色の記憶」など、地味だけれど心に沁みるミステリを書くトマス・H・クック。共通点は以下の通りだ。

・妻が死んだことを夫が自ら警察に連絡する。

・自殺であると主張。

・警察は、他殺であり、犯人は夫だという判断で逮捕

・物的証拠がなく、状況証拠の積み重ねによって起訴

現実の事件の方は、外部から侵入した形跡がなく、自宅にいたのは小学生と就学前の子どもだけで、首を絞める力があるのが朴容疑者だけだったということで逮捕に踏み切っている。これは無理筋に近いだろう。

「サンドリーヌ裁判」のほうも、有能なユダヤ人弁護士が夫につき、こんな逮捕はありえないとするが、数々の証言で夫は追いつめられていく。

被告である夫の一人称で語られる物語。夫も妻も大学教授。妻は誰からも愛される人だったが、夫は知識をひけらかすいけすかない人物。田舎の大学にくすぶっていることにいら立ち、陪審員を無教養な連中と見下していたのだが……

つくづく、裁判において被告にはなりたくないと痛感。自分だけでなく、家族や友人を次々に傷つけていく。

ラストで明かされる“犯人”“動機”に驚愕。事件が真の意味で解決するとき、読者として満足させられる仕組みになっている。はたして、文京区の方の真相は……。

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リーガルハイ (フジテレビ)

2017-01-19 | テレビ番組

真田丸」「半沢直樹」「リーガルハイ」と続けざまに見て、堺雅人という役者は、確かにうまい役者ではあるけれども(それはおそらく誰も否定できない)、それ以上に不思議な役者だとつくづく。うまく説明できないが、人間っぽくないというか。

特にこの「リーガルハイ」にそれは顕著。

特徴的な横分けの髪型、速射砲のような悪口雑言、身の回りのことはなにもできないので執事(里見浩太朗)にいつも「服部さーん」と甘える……まるでマリオネットのように見えないですか。操っているのは服部さん(彼もまた某人物にあやつられてもいる)。あるいはアニメキャラのようにも見える。これほど濃い演技で破綻しない役者って、他になかなか思いつかない。

主人公の古美門(こみかど)研介は、無敗を誇る悪徳弁護士。すんごく悪いです。勝つためなら反則すれすれの、というかはっきりと反則技も平気で使う。

彼と反目しながらもタッグを組むのは、純粋で、その純粋さの暴力に無意識なものだから「朝ドラ」と揶揄される黛真知子。演じているのは今をときめく新垣結衣。こんなに脚が長い女性だったのか。ま、古美門からは「ガニ股」と切り捨てられているんですが。

反則技を使いながら、しかし見終わったあとに残るのは一種の爽快感。視聴者の予想を常にちょっとだけ上回るエンディングを用意している。脚本はすべて「キサラギ」や「ALWAYS」の古沢良太。これはおみごとだと思う。

特に素晴らしかったのは江守徹が悪徳政治家をやった回で、悪らつと悪らつが手を組むと社会正義が達成できてしまうあたりの仕掛けにはうなった。

里見浩太朗が出ているというそれだけで、伊吹吾郎、高橋元太郎、大和田伸也、野村将希などの水戸黄門メンバーが続々ゲスト出演するのがおかしい。わたしはいつ由美かおるの入浴シーンがおがめるのかと期待してしまいました。

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ぼくのわたしの2016 キネ旬個人賞篇

2017-01-18 | 映画

洋画篇はこちら

さて個人賞はこうなっている。

監督賞 片渕須直(この世界の片隅に

脚本賞 庵野秀明(シン・ゴジラ

主演女優賞 宮沢りえ(湯を沸かすほどの熱い愛

主演男優賞 柳楽優弥(ディストラクション・ベイビーズ

助演女優賞 杉咲花(湯を沸かすほどの熱い愛)

助演男優賞 竹原ピストル(永い言い訳

新人女優賞 小松菜奈(溺れるナイフ)

新人男優賞 村上虹郎(ディストラクション・ベイビーズ)

外国映画監督賞 クリント・イーストウッド(ハドソン川の奇跡

……作品がベストワンになったからといって監督賞がとれるわけではないのだが、邦画洋画ともに今回は一致している。アニメの監督が監督賞をとったのは史上初。あの宮崎駿もとっていないのでこれは快挙。

宮沢りえは「紙の月」でも受賞しているので、名女優への道を着々と歩んでいるということか。若尾文子の3回にぜひ並んでほしい。狂気の美貌はいまもなお健在。

誰も知らない」で史上最年少カンヌ主演男優賞をとった柳楽優弥が、12年後にキネ旬男優賞とは。映画の神様に愛されているとしか言いようがない。「ディストラクション・ベイビーズ」の、暴力そのものと化した演技は確かにすごかった。同じ作品の村上虹郎は、村上淳とUAの子ということで血筋は文句なし。これからが期待できます。

助演男優の竹原ピストルは、イメージそのまんまの演技。イメージそのまんまの歌を絶唱しております。いいですねこの人。

あっ、それからうれしかったのは、文化映画のベストワンが「ふたりの桃源郷」だったことですっ!

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明細書を見ろ!2017年1月号 源泉徴収票を見ろ!2017

2017-01-17 | 明細書を見ろ!(事務だより)

2016年12月差額号はこちら

1月の給料袋には、例によって源泉徴収票を同封しています。これは、去年の1月1日から12月31日まで、雇用主である吉村美栄子さんからわたしたちがいくらもらったか、税金をいくら払ったかなどを示す書類。確定申告や、金融機関からお金を借りるときなどに必要になります。

少なくとも一年間はなくさないでくれ、と毎年言っていますが毎年必ず誰かはなくす。もちろん、事務室にコピーは保存していますけれども(異動するときには異動先に送付します)。

さて、今年はこの源泉徴収票、ちょっと変わっているのにお気づきでしょうか。別にそんなに深刻に考えなくてもいいです。物理的に大きくなっているでしょう?これまでのA6からA5判に変更されました。これは、ご想像のとおりマイナンバー制度の影響を受けたため。

「でもどこにもマイナンバーは載ってないじゃないか」

そのとおりです。

実は、当初の予定では記載されるはずだったんです。でも、そうなるとさまざまな人にあなたの個人番号があからさまになってしまう、ということで載せないことになりました。

徴収票のいちばん右上に「(受給者番号)」という欄があります。そして一段あけて「(役職名)」の欄がある。この、一段あいて斜線がひいてあるところにマイナンバーが記載される予定だったのです。

「なんだよ、あのマイナンバー騒ぎってじゃあ何のためだったんだよ」

もっともです。しかしこの源泉徴収票のいちばん下を見てください。

「(交付用)」

となっているのにお気づきでしょうか。実は源泉徴収票はもう一部作成され、税務署にも提出されるのです。そちらには、先ほど説明した場所にマイナンバーが記載され、下の方の「支払者」のところに法人の番号も記載されるという仕組み(各法人にもすべてナンバーが割り振られ、“山形県”もそれは例外ではありません)。

さてそれでは項目ごとにチェックしてみましょう。

【支払金額】

総収入。自営業者なら“売り上げ”にあたる額。

【給与所得控除後の金額】

売り上げにそのまま課税されたのではたまらない。給与所得者にだって必要経費はあるはずだ。ということでサラリーマンの必要経費はこれくらいだろうという額を税務署が定め、その額を差し引いた額がこの欄に記載されています。つまり、自営業者で言うところの“利益”にあたります。

【所得控除の額の合計額】

利益が算定されたところで、今度は個々人の“都合”を考えます。扶養控除や社会保険料控除、そして年末調整のときに申告してもらった生命保険料などの控除額(掛金の額ではなく)の合計の額が載っています。都合の部分は利益ではないと見立てて(=控除して)もらうわけ。

【源泉徴収税額】

で、“利益”から“都合”を引いた額に対して税金がかかり、その結果がこれ。あなたが一年間に支払った所得税はこの額です。

……つまりこの紙っきれには“売り上げ”“利益”“都合”“税額”など、個人情報がみっちりつまっているのです。だからこそつくづく思います。いっそこの機会に、A4判にしてくれた方が事務屋としては助かったのになあと。それだとみんな、なくさない気が……やっぱりなくすんだろうな。

画像は「この世界の片隅に」(2016 東京テアトル)
監督:片渕須直 主演:のん(能年玲奈)

戦時中に、世界の片隅でその若妻はどう生きたか。もう日本のアニメに描けない世界はないと思い知る。監督は、声優は絶対にのんでなければならないと主張したそうで、さすが慧眼の士というのはいるものだ。いろんな事情で芸能界を干されていた彼女の逆襲が始まる。キネマ旬報誌本年度ベストワン。アニメの1位は「となりのトトロ」以来。傑作。

2017年2月号「魔が差した。」につづく

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極私的大河ドラマ史PART4 太閤記

2017-01-16 | 大河ドラマ

PART3「赤穂浪士」はこちら

大河第三作目の「太閤記」は逸話の多いドラマだった。「赤穂浪士」が大成功だったので、その次は大変だろうと誰だって思う。ところが、60年代のNHKはまだ牧歌的だったのか

「そう当てなくてもいい。変化球でもいい」

と上層部は考えていたそうだ。

「スターを集めなくてもいいが、美空ひばりだけは使え。くの一(女忍者)なんかにすれば、絶対にうけるぞ」

長沢芸能局長はのん気です(笑)。これが実現していたら、はたして太閤記は成功しただろうか。なにしろ配役は

秀吉役については、「サル顔」の俳優を探し回り、田中邦衛やジェリー藤尾らが候補に挙がった。吉田(演出)と同期生で、制作担当の広江均が演劇評論家の安藤鶴夫から「新国劇にサル顔の有望な若手がいる」と聞き、京都の撮影所にいた緒形(拳)を訪ねた。理由は伏せて「笑ってください」と写真を撮り、東京に持ち帰ったところ、吉田たちは「笑い顔がいいじゃないか」と主役に決めた。

織田信長にいたっては

高橋幸治の場合、俳優の宮口精二の付き人に立派な顔をした男がいるという話を聞き、吉田が会うと、実に堂々としている。吉田が「信長によさそうだ」と話すと、高橋は「ああ、そうですか。やってみたいですね」と答えた。正式に決定したわけではないが、吉田らが局内の部長会に連れて行った。高橋が歯切れよく「信長です。よろしくお願いします。」と一礼したところ、その場で拍手が起き、信長役に決まった。

……のん気な時代。新国劇のホープと文学座の研究生の抜擢はこのようにして決定。石田三成役の石坂浩二については、「頭がよさそうに見えるから」と写真だけで決めたという。まだ慶応の学生だったのに!以下次号

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おんな城主直虎 第2回 崖っぷちの少女

2017-01-15 | 大河ドラマ

第1回「井伊谷の少女」はこちら

初回の視聴率は16.9%。これを健闘と報ずるメディアもあれば、「花燃ゆ」の悪夢再来とするところもある。わたしは、予想を下回ったとはいえ、とった方だと思う。

というのも、大河ドラマは(数々のオリジナルキャラもいたけれど)視聴者のほとんどが知っているネタを、どんな役者が、どんな味付けで見せてくれるかという歌舞伎っぽい見方がやっぱり主流。

井伊直虎という、ほとんど誰も知らない、誰とも結婚しない女性を主人公にもってきたのだから、前半は苦しい。そのあたりを森下佳子さんがどうしのぐかが見どころかと……

うー、必死で冷静ぶってますが、あの子役(と乳母)はしかしなんとかなんないですか(笑)。男の子ふたりは、まあわかる。しかし肝心の主役があれでは。

「なんかこの子、世良公則に似てない?」

日本中でこんなことを言っているのはうちだけでしょうか。将来ステージでマイクふりまわすんでしょうか直虎。

でも世間的には好評なんですよね彼女の演技って。こちらは成人の日に「湯を沸かすほどの熱い愛」を見て、驚異的な子役演技を見せつけられたので(あの妹役はすごい)、大河との差には考えこまされました。

「わたし的にはよかったなあ。と言っても、ドラマではなく、山城の感じが。この辺だと、来生氏の観音寺城とか池田氏の朝日山城くらいなんだろうなあ。」

おなじみ、城マニア読者はこういう観点で見ています。このあたりにもけっこうあったんだね。

ムロツヨシ登場。変な魔法を使うこともなく、こすい男として。村人のほどこしによって生きている彼に、どうして村人が衣食を与えているかは戦国っぽい残酷さ。

主役(と乳母)を代表として、わかりやすい書き割りのような演技が基調のこのドラマで、悪辣な筆頭家老の吹越満だけが渋い。自分の息子とも不仲であるあたり、いいですな。視聴率は微妙。15%台ということで。

第3回「おとわ危機一髪」につづく

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「オール・ユー・ニード・イズ・キル」Edge of Tomorrow (2014 WB)

2017-01-14 | 洋画

トム・クルーズが日本のSFライトノベルを映画化。ほう。

ストーリーはなかなかこみいっている。ざっくり紹介すると、宇宙から侵略者(マトリックスの化け物に近い)がやってきて、地球人が団結(内輪揉めもあり)して対抗。トムは地球防衛軍の広報係なのに、戦闘に強引に参加させられる。でも弱いのであっという間に死亡してしまい……しかしすぐに戦闘開始直前まで戻ってしまう。

ということで、理屈はいろいろついているけれど、ゲームと同じで

キャラの死亡→リセットして再開

というパターン。しかしプレイヤーはダンジョンを記憶しているし、スキルも獲得しているので、弱っちいチキン野郎(経営していた広告代理店が倒産したので軍に参加した)が、次第に古参兵のように成長していくあたりが役者としてのトムの見せ場。金をかける価値があるとこのあたりで判断したんだろう。

かつてケン・グリムウッドが「リプレイ」という傑作小説で、人生を何度もやりなおす男の数奇な物語を絶妙に描いたが、リセットできるということはそんなにいいことばかりではなくて、前の人生で得た娘を喪失して立ち直れなくなるなど、なるほどと唸った。

こちらのトムはひたすら強くなっていく。同じ能力をかつてもっていた戦場のヒロインであるエミリー・ブラントフルメタル・ビッチという称号が笑える)を次第に凌駕し、世界を救う。これはこれでありだと思う。

オープニングの、というか何度も繰り返される戦闘シーンは確実に「プライベート・ライアン」だし、ビル・パクストンが出ているからだけではなくて、パワードスーツや戦闘員たちは「エイリアン2」そのまんま。

宇宙生物が単一の有機体だからクイーンを倒せばみんな滅ぶというのもエイリアン2だ。いいのか、こんなにまんまで。いいんだろうな、トムだから。だってどんなストーリーでも、結局はトム・クルーズの映画になっているんだし。

画面の迫力は圧倒的。そりゃ、欠点はかなりあるけれどもわたしはこの映画が好き。トムの映画は、やっぱり何か持っている。

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ぼくのわたしの2016 キネ旬洋画篇

2017-01-13 | 洋画

2015年版はこちら

2016年邦画篇はこちら

さあ今日は洋画篇。映画サイトでは『順当な結果』と評されている。

1 「ハドソン川の奇跡」(クリント・イーストウッド/WB)

2 「キャロル」(トッド・ヘインズ/ファントムフィルム)

3 「ブリッジ・オブ・スパイ」(スティーブン・スピルバーグ/FOX)

4 「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」(ジェイ・ローチ/東北新社)

5 「山河ノスタルジア」(ジャ・ジャンクー/ビターズ・エンド)

6 「サウルの息子」(ネメシュ・ラースロー/ファインフィルムズ)

7 「スポットライト 世紀のスクープ」(トーマス・マッカーシー/ロングライド)

8 「イレブン・ミニッツ」(イエジー・スコリモフスキ/コピアポア・フィルム)

9 「ブルックリン」(ジョン・クローリー/FOX)

10 「ルーム」(レニー・エイブラハムソン/ギャガ)

……順当ですね(笑)。特にイーストウッドはこれで何度目のベストワンなんだろう。確かにキネマ旬報は“イーストウッド寄りとまで言われる雑誌。しかしわたしは同じ時代に彼が映画をつくり続け、肩に力を入れずに(少なくともそのように見える)巨匠としての作法を守ってくれていることは幸福だと思う。

「許されざる者」「スペース・カウボーイ」「ミスティック・リバー」「ミリオンダラー・ベイビー」「父親たちの星条旗」「グラン・トリノ」「ジャージー・ボーイズ」……文句あるかって(笑)。

「ブリッジ・オブ・スパイ」のマーク・ライランスは予想どおりオスカーをゲット。そのアカデミーの作品賞を受賞した「スポットライト」よりも「トランボ」が上にあるのはとてもうれしい。ハリウッドこそが、この映画をもっと評価しなければならなかったはずだけどなあ。いや、赤狩り問題は彼らにとってまだまだそんなに単純なものではなかったということか。

このなかでは「ブルックリン」を見逃したのがちょっとくやしいかも。次回は個人賞関係

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