ホタルの独り言 Part 2

ホタルの生態と環境を52年研究し保全活動してます。ホタルだけでなく、様々な昆虫の生態写真や自然風景の写真も掲載しています

ムラサキシジミ属

2015-12-02 18:33:27 | チョウ/シジミチョウ科

 ムラサキシジミ属(Arhopala Boisduval, 1832)は、世界に約200種類生息するグループで、日本には現在3種が知られている。尚、本記事では、離島において採集されたラマムラサキシジミ Arhopala rama ssp.は含めていない。また、ムラサキシジミ属は、研究者による分類が定まっておらず、 Narathura属という別の属に扱われることもあるが、ここでは Arhopala属として表記している。

  1. ムラサキシジミ Arhopala japonica (Murray, 1875)
  2. ムラサキツバメ Arhopala bazalus turbata (Butler, [1882])
  3. ルーミスシジミ Arhopala ganesa loomisi (H. Pryer, 1886)

 いずれも成虫で越冬し、6月頃から翌年3月頃まで見ることができるが、夏は翅を開くことがなく、翅表を撮影できるのは、秋、もしくは春である。綺麗に撮ろうと思えば、比較的、翅が傷んでいない晩秋から初冬にかけての暖かく穏やかな晴天、いわゆる小春日和の日中が狙い目だろう。
 以下に、3種の解説と写真をまとめてみた。

ムラサキシジミ

 ムラサキシジミ(Arhopala japonica)は、雌雄とも黒色の広い帯で縁どられた濃い紫藍色の美しいシジミチョウ。
 幼虫は、蜜を分泌して数種のアリを誘引することで知られているが、この分泌物を口にしたアリの脳内では、ドーパミンレベルが低下することを神戸大学の北條賢博士らが発見した。脳のドーパミンシグナルを改変することで、アリは幼虫に夢中になり、幼虫が触覚を引っ込める等の危険信号を発した時は、幼虫に危害を加えようとする外敵に対して攻撃を加えるようになるという。
 これまで、守ってもらう代わりに報酬を与えているという互恵的関係と考えられていたが、実際はそうではなく、幼虫が一方的にボディーガードとして操っていることが分かった。

ムラサキツバメ

 ムラサキツバメ(Arhopala bazalus)は、ムラサキシジミに似ているが、本種がわずかに大型であること、後翅に尾状突起があることで区別できる。
 もともとは西南日本でしか見ることができなかったが、1990年代頃から生息域が北上し、関東でも普通に見られるようになってきた。これは、温暖化の原因の他に、食草であるマテバシイが街路樹や庭木として盛んに植樹されていることが関係していると考えられる。本来は照葉樹林に生息するものだが、関東では、マテバシイが植えてある都市公園でも見ることができる。
 翅の裏面は、オスメスとも薄い褐色で、色の濃い斑紋が数個並ぶが、オスの翅の表側は、見る角度によっては翅全体が暗紫色に見え、 メスは鮮やかな紫藍色の模様があり、周囲を黒褐色で縁取られている美しいシジミチョウである。
 ムラサキツバメは、集団越冬することでも知られている。何匹ものムラサキツバメが葉の上に集まり越冬するのだが、寒さが厳しくなると散らばって個々に越冬するようである。
 (2018年11月21日、東京都国分寺市の自宅庭で1頭のムラサキツバメのオスを発見。)

ルーミスシジミ

 ルーミスシジミ(Arhopala ganesa loomisi)は、1877年アメリカの宣教師ヘンリー・ルーミスが千葉県君津市鹿野山で最初に発見したシジミチョウ科のチョウで、和名は発見者の名前に由来している。
 ムラサキシジミに似るが、より小型で翅の輝きが強い。前・後翅とも外縁に沿って幅広い黒褐色部があり、その内方は美しい青色である。
 ルーミスシジミは、開発などによる生息に適した照葉樹林の減少や採集者による乱獲のため絶滅のおそれがあり、環境省レッドリストおよび撮影した千葉県のレッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に選定されている。かつて多産し、1932年(昭和7)に国の天然記念物に指定された奈良県の春日山では昭和40年代に絶滅している。
 尚、本種に関する解説は、前ページ「ルーミスシジミ」を参照いただきたい。

ムラサキシジミ

ムラサキシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/800秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2010.11.03)

ムラサキシジミ

ムラサキシジミ(オス)
Canon EOS 5D Mark2 / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F6.3 1/400秒 ISO 200 -1EV(撮影地:東京都多摩市 2010.12.04)

ムラサキシジミ

ムラサキシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F5.0 1/500秒 ISO 200(撮影地:東京都あきる野市 2010.11.03)

ムラサキツバメ

ムラサキツバメ(集団越冬)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/250秒 ISO 3200(撮影地:千葉県習志野市 2010.11.13)

ムラサキツバメ

ムラサキツバメ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 1000(撮影地:千葉県習志野市 2010.12.11)

ムラサキツバメ

ムラサキツバメ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 200 -2/3EV(撮影地:千葉県習志野市 2010.12.11)

ルーミスシジミ

ルーミスシジミ
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F7.1 1/200秒 ISO 200(撮影地:千葉県夷隅郡 2013.03.09)

ルーミスシジミ

ルーミスシジミ(オス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF70-200mm F/2.8 Di LD (IF) MACRO
絞り優先AE F8.0 1/320秒 ISO 3200(撮影地:千葉県鴨川市 2015.11.29)

ルーミスシジミ

ルーミスシジミ(メス)
Canon EOS 7D / TAMRON SP AF90mmF/2.8 Di MACRO1:1
絞り優先AE F7.1 1/320秒 ISO 200(撮影地:千葉県夷隅郡 2013.03.09)

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