三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

有馬記念 反省

2006年12月27日 | 競馬
 有馬記念は「お手馬」のドリームパスポートが4着に負けて私の馬券も外れました。決して20万円負けたからといって悔し紛れで言うわけではありませんが、内田騎手の乗り方には少し疑問があります。それはコース取りで、ディープインパクトが外外を回ったのは馬の力からして当然で、下手に内を突いて進路をなくす危険を犯すよりも他の馬を邪魔しないし、他の馬から邪魔されない外を回るのは馬の力を信じていれば当然のことです。かつてシンボリルドルフが必ず外を回ったのと同じです。
 ではドリームパスポートはどうでしょうか? 内を突かねばならないほど弱い馬ではないと私は思っていますが、内田騎手は内を回って直線も内を突きました。そして外に出そうとして出せず仕方なく内に突っ込もうとすると前が詰まり、それでも最後はいい脚を使いましたが4着が精一杯でした。贔屓目かもしれませんが、脚を余して負けたように見えました。残念です。年間500勝を達成した内田騎手ですから、乗り代わりがプラスにこそなれ、マイナスにはならないと思っていたんですが、どう考えても馬を信用せずに自分の騎乗で力づくに上位に持ってこようとする乗り方で、好きになれません。馬を壊してしまいそうな気もします。
 岡部幸雄さんは「ルドルフの背」の中で究極の騎乗法は実は何もしないことだと書いています。それから宮本輝さんは「優駿」の中で主戦騎手にインタビューで「僕は何もしなかった」と言わせ、その台詞を聞いた調教師だか馬主だかが、この騎手への信頼を強めた、といったようなことが書いてあったと記憶しています。
 もちろん実際に何もしないわけではなく、それどころか、時速60キロで走る馬の上にあんな危ない乗り方で乗っているだけでも神業に近いのですが、その他に馬に話しかけたり口笛を吹いたり撫でたりして馬を落ち着かせたり奮い立たせたり、それからムチや手で合図して手前を替えさせたりと、短いレースの中でやることは山ほどあります。そしてもちろん必要なことは全部やりますが、必要でないことは極力やらないようにすることが「何もしないこと」なんでしょう、多分。それは要するに馬が走るのに邪魔なことは「何もしない」ということでもあると思います。
 ドリームパスポートの内田騎手が向正面で外に出していれば、同馬の切れ味からして4着に負けることはなかったでしょう。何とかして上位を狙った結果が裏目に出たのは、内田騎手の同馬に対する評価が低かったためだと考えられて、そこが残念です。源義経ではありませんが、同じ4本脚のサラブレッドだと達観して、正攻法でディープインパクトに挑んでほしかったと思います。
 来年は別の騎手に乗ってほしいドリームパスポートです。皐月賞の2着馬でその後活躍した馬はほとんどいませんが、初の例外になってほしいと思っています。悔し紛れの有馬記念の感想でした。