映画「Race」(邦題「栄光のランナー1936ベルリン」)を観た。
http://eiko-runner-movie.jp/
オリンピックイヤーに日本で公開されるというタイムリーな映画ではあるが、アメリカ映画とは違って、世界の問題と正面から向き合う真摯な姿勢がある。
主人公は貧困と公的な人種差別の厳しい状況の中で、ささやかな幸せのために陸上競技に打ち込む。一方、アメリカのオリンピック委員会はナチスが主催するベルリンオリンピックの出場について紛糾する。オリンピックは政治と切り離されるべきだという説について、ナチが国威発揚のためにオリンピックを政治利用しているから参加すべきではないという議論があり、対して、主催国の政治状況がどうあろうと、アスリートは政治と無関係だから参加すべきだという議論もある。
僅差の投票でアメリカはベルリンオリンピックに参加することになり、オーエンスが大活躍するありさまが主なストーリーとして描かれてはいるが、アメリカ代表で現地に行ったユダヤ人選手が出走できなかったり、ドイツ選手が専制政治に苦悩していたり、ドイツのジャーナリストが権力者から脅されたりと、サイドストーリーに当時の問題が散りばめられていて、英雄の活躍物語だけではないことがわかる。観客はそこのところをきちんと観なければならない。オリンピックのありようについて警鐘を発している映画でもあるのだ。さすがにフランスとドイツの映画である。ハリウッドのお手軽B級映画とは一線を画している。
NHKの解説者がオリンピックの意義を国威発揚だと解説する日本も、ナチス時代のドイツとあまり変わらない。さすがにアベ政権の大本営放送である。政治と切り離されなけえればならないというオリンピックの精神を全く理解していない解説者だ。穿った見方をすれば、アベ政権はベルリンと同様に東京も国威発揚の場にしようとしているということをそのまま解説しているのかもしれない。だとすれば、2020年の東京オリンピックはナチスドイツのベルリンオリンピックと同じになる。そういえば、アホウ太郎が「ナチスに見習えばいい」と言っていたっけ。