三軒茶屋の駅前のシアタートラムで舞台「クレシダ」を観た。
http://www.cressida-stage.com/
「からだすこやか茶」のCMでおなじみの29歳の浅利陽介をはじめとする若手俳優を向こうに回して、82歳の平幹二郎は、唾が飛ぶのが何度も見えるほどの熱演だった。まだまだ枯れていないのだ。
さて、事前にシェークスピアの劇「トロイラスとクレシダ」を予習して行ったのが見事に裏切られ、芝居はシェークスピアが亡くなった後のロンドンの劇団が舞台だった。ルネサンス期の演劇では、女性が舞台に上がることはなく、若い男性が胸に詰め物を入れて女性を演じていたらしい。子供の人身売買や誘拐も普通に行なわれていた模様。面食らう設定だが、わかりやすい演技なのでそのあたりの事情は芝居を観ているうちに自然に飲み込める。
平幹二郎が演じるジョン・シャンクが主役である。シェークスピアやベン・ジョンソンなどの台本に対する思い入れは並大抵ではなく、演劇に対する考え方も一本筋が通っている。しかしルネサンスの変革の波は演劇についても例外ではなく、ジョン・シャンクの考え方は徐々に時代遅れになろうとしている。しかし、演劇人として芝居の歴史に足跡を残したのは確かだ。シャンクはその自信をもとに、女性が登場するであろう未来の舞台に思いを馳せる。
劇団はひとつの家族のようで、それぞれの期待と気遣いと愛と親しみと憎しみが錯綜するのが見事に表現されていた。なかなかに気持ちのいい演出だ。
今日が2日目。初日のたどたどしさはなく、慣れてダレることもないちょうどいい日だったのかもしれない。兎に角、平幹二郎の溢れんばかりのエネルギーとパワーに圧倒されたのだった。
ちなみに当時の1ポンドは約24万円で、橋本淳演じるジョン・ハニーマンが人妻からもらったペンダントは20ポンドで約480万円、ジョン・シャンクが使い込んだ劇団の金100ポンド、および浅利陽介演じるスティーヴン・ハマートンが人身売買で値をつけられた100ポンドは2400万円ということになる。この金額を踏まえてから観ると、さらにわかりやすい。
おすすめの芝居である。