三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「スイート・マイホーム」

2023年09月07日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「スイート・マイホーム」を観た。
映画『スイート・マイホーム』 | 絶賛公開中!

映画『スイート・マイホーム』 | 絶賛公開中!

小説現代新人賞受賞の注目作家・神津凛子のデビュー作『スイート・マイホーム』が遂に実写映画化。監督 齊藤工×主演 窪田正孝が描く幸せな家族を襲う「家」を取り巻く恐怖の...

映画『スイート・マイホーム』 | 絶賛公開中!

 ホラー映画である。しかし少し動機が弱い。序盤を観たら、大体その後の展開が予想できる作品で、予想通りに進むのだが、動機が弱いからあまり怖くない。むしろミステリーとして鑑賞すると、よくまとまっているし、終わり方もなかなかいい。原作は未読だが、本作品を観る限り、原作もしっかりまとまっているのだろうと思える。
 ジャンプスケア(大きな音や衝撃的な映像)をほとんど使っていないのは好感が持てる。本作品のいいところは、出演者の態度や表情で怖さを醸し出しているところだと思う。同じ斎藤工監督の2017年の映画「blank 13」の演出に似ているところがある。誰もが小さな幸せに縋りつくようにして不幸な人生を生きるのだ。
 その演出に応えた役者陣は、いずれもよかった。特にほぼ出ずっぱりの窪田正孝は、鍛え上げられた肉体で、役柄は全く異なるが、昨年の映画「ある男」と同じくらいの冴えた演技だったと思う。松角洋平が演じた甘利の気持ち悪い役柄が途中まで観客をミスリードするのも洒落ている。同じ苗字の政治家はもっと気持ち悪い。
 ミステリーとしてはかなり不気味で、それなりに面白かった。

映画「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん」

2023年09月07日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ちょっと北朝鮮まで行ってくるけん」を観た。

 リバイバル上映を鑑賞した。上映後のトークタイムに島田陽磨監督と、フォトジャーナリストの安田菜津紀さんが登壇。TBSのサンデーモーニングのコメンテーターとして時々テレビでも見かけるが、この人が間違ったことを言うのを聞いたことがない。テレビでは冷静に発言しているが、人権侵害や差別に対する怒りを抑えているのがありありと分かる。
 しかし聴衆相手に話すときは、テレビと違って気持ちに余裕があるようで、ときどき笑顔を浮かべながら、分析と批判を上手に語る。頭がよくて早口だから、耳をそばだてて聞いていないと、話が印象に残らないところがある。そこが玉に瑕だと思っていたが、こちらの理解力が追いついていないだけなのかもしれない。

 島田監督と安田さんの話は、概ね次のようだった。1959年に北朝鮮への帰還事業が始まった当時は、李承晩による軍事独裁政権だった韓国よりも、北朝鮮のほうが景気がよかった。日本政府は、在日朝鮮人に支給する生活保護費や環境整備費などを節約するために、北朝鮮に帰れば幸せに暮らせると喧伝し、3~4年もすれば日本に戻ってこれると口約束までして、多くの在日朝鮮人を新潟発の船で北朝鮮に送った。帰還といっても、実際の在日朝鮮人の99%は南朝鮮出身者だったから、北朝鮮に行っても何もあてがなかったのである。日本政府は今も昔も無責任だ。

 安田さんは、そんな日本政府の政権を握る政治家たちが、嘘を吐いても約束を破っても、何をしても選挙に当選しつづけている現状を嘆く。しかし決して悲観はしていないようだ。当方なら日本はもうおしまいだと思ってしまうが、安田さんは人類に希望を持っている。中学生のときに自分が在日韓国人だと知ったときから、アイデンティティを求めて必然的にフォトジャーナリストになり、世界中の悲惨な状況を見てきたからこそ、逆に希望が持てるのだろうか。