三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

映画「The Lost King」(邦題「ロスト・キング 500年越しの運命」)

2023年09月25日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「The Lost King」(邦題「ロスト・キング 500年越しの運命」)を観た。

 フィリッパ・ラングレーという主人公の名前が洒落ている。フィリッパの男性形フィリップはエディンバラ公(エリザベス二世の夫)の名前だし、ラングレーはCIA(アメリカ中央情報局)本部の所在地だ。名前そのものに物語を引っ張るベクトルがある気がする。実名だと知って驚いた。

 サリー・ホーキンスは素晴らしい。フィリッパの人となりが伝わる演技をする。病気にめげずに働いて息子二人を育て、別れた夫とも良好な関係を続ける。病気のことで差別されたくないから、自分も他人を差別しない。
 差別に敏感なフィリッパが、瘤があって足を引きずって歩いたと言われているリチャード三世に、病気で苦しんでいる自分と相通じるような親近感を抱いたのは自然なことだ。自分が病気を言い訳にしないで人並みに仕事をしているように、リチャード三世も病気に関わらず立派な仕事をしたのではないか。それはフィリッパの直感である。
 調べれば調べるほど、自分の直感の正しさに確信が持てるようになる。リチャード三世は立派な王だったのだ。しかし現王朝の500年前の先祖たちによって、不当に貶められた。なんとしてもリチャード三世の名誉を挽回しなければならない。本人は気づいていないが、それはフィリッパ自身の救済でもある。

 この話が実話だというところが凄い。こういう話があったこと自体、本作品ではじめて知った。エピローグでは、フィリッパ・ラングレーにエリザベス二世が大英帝国勲章を授与したと報告されている。現イギリス王朝の寛容さが垣間見えたし、最期まで生真面目に仕事をしたエリザベス女王に相応しいエピソードだと思った。いい話だ。

映画「ジョン・ウィック コンセクエンス」

2023年09月25日 | 映画・舞台・コンサート
 映画「ジョン・ウィック コンセクエンス」を観た。
映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』オフィシャルサイト

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』オフィシャルサイト

報いを受ける時がきた—伝説の殺し屋は、決着に立ち上がる 映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』2023年9月22日公開

映画『ジョン・ウィック:コンセクエンス』オフィシャルサイト

 キアヌ・リーヴスは質素な生活をしていることで有名だ。ケチなのではなく、収入の多くを他人への施しに使っているかららしい。ホームレスと話し込んだりすることもあるようで、キアヌの世界観の深さが窺い知れる。俳優としてよりも、人間としてとても興味深い人物である。

 さて本作品はアクションを楽しむ娯楽作である。主席と主席連合と侯爵という悪役の組織に理解し難い部分はあるが、要は権威と権威のせめぎあいである。
 真理の前には権威など意味を成さないのだが、それは精神世界の話で、現実の利益の奪い合いでは、権威が物を言う。黒を白と言い張っても、そこに権威が伴っていれば、いとも簡単に道理が引っ込んで無理が通る。まさに理不尽だ。
 その理不尽に立ち向かう孤高の存在として、ジョナサン・ウィックが設定されている。キアヌ・リーヴスにピッタリの役柄だ。持ち前の戦闘能力と、タフな精神と肉体を駆使して、権威と対決する。

 本作品はアクションとカメラワークが工夫されている。戦闘の場所や戦い方、撮影の仕方に様々なバリエーションがあって、飽きさせない。ジョナサンは得意の拳銃の他に、ナイフ、ヌンチャク、敵のアサルトライフル、そして体術と、状況と相手によって様々な技を駆使する。トレードマークはローレンス・フィッシュバーンのキングから提供されたスーツで、ジョナサンの不死身の秘密もそこにある。
 馬と自動車とオートバイ。どれに乗っても様になるが、トム・クルーズのネイサンのような能天気さはなく、どことなく悲壮感が感じられる。それがジョナサン・ウィックだ。

 娘の伏線が気になるが、最後の最後できっちりと回収される。くれぐれもエンドロールで席を立たないことだ。