映画「The Lost King」(邦題「ロスト・キング 500年越しの運命」)を観た。
フィリッパ・ラングレーという主人公の名前が洒落ている。フィリッパの男性形フィリップはエディンバラ公(エリザベス二世の夫)の名前だし、ラングレーはCIA(アメリカ中央情報局)本部の所在地だ。名前そのものに物語を引っ張るベクトルがある気がする。実名だと知って驚いた。
サリー・ホーキンスは素晴らしい。フィリッパの人となりが伝わる演技をする。病気にめげずに働いて息子二人を育て、別れた夫とも良好な関係を続ける。病気のことで差別されたくないから、自分も他人を差別しない。
差別に敏感なフィリッパが、瘤があって足を引きずって歩いたと言われているリチャード三世に、病気で苦しんでいる自分と相通じるような親近感を抱いたのは自然なことだ。自分が病気を言い訳にしないで人並みに仕事をしているように、リチャード三世も病気に関わらず立派な仕事をしたのではないか。それはフィリッパの直感である。
調べれば調べるほど、自分の直感の正しさに確信が持てるようになる。リチャード三世は立派な王だったのだ。しかし現王朝の500年前の先祖たちによって、不当に貶められた。なんとしてもリチャード三世の名誉を挽回しなければならない。本人は気づいていないが、それはフィリッパ自身の救済でもある。
この話が実話だというところが凄い。こういう話があったこと自体、本作品ではじめて知った。エピローグでは、フィリッパ・ラングレーにエリザベス二世が大英帝国勲章を授与したと報告されている。現イギリス王朝の寛容さが垣間見えたし、最期まで生真面目に仕事をしたエリザベス女王に相応しいエピソードだと思った。いい話だ。