映画「ACIDE/アシッド」を観た。
身も蓋もない言い方をすれば、暴力的で教育のなさそうな男が、同じく暴力的で教育のなさそうな娘と、被害者ヅラの妻を連れて、迫りくる酸性雨から逃げる話である。
はっきり言って、この家族は最低だ。これからの行動は相手まかせするくせに、悪いことはすべてお互いのせいにする。我儘な娘は、利己的な行動をして、窮地に陥ると臆面もなく助けを求める。
男は娘を大事に思ってはいるが、それよりも大事な恋人がいる。取り敢えず自分たちさえ助かればいい。世の中は蹴落とし合いで、弱い者が死んで強い者が生き延びるという人生観だ。
タイトルと予告編から、酸性雨に襲われた世界で人々がどのように振る舞い、指導者や科学者たちがどのような選択をするのか、グローバルで哲学的な展開を予想していたのに、クズみたいな家族の逃避行の顛末に終わってしまって、はっきり拍子抜けだった。
パニックホラーなら、主人公の人格を感情移入できる程度には整えておくべきで、本作品の身勝手で愚かな家族に危機が迫っても、ハラハラもドキドキもしない。何かの譬喩なのかもしれないが、思い当たるものが何もなかった。