三無主義

 ~ディスパレートな日々~   耶馬英彦

食の安全は国民のレベルから

2008年11月07日 | 政治・社会・会社

1月の冷凍餃子のメタミドホス、ジクロルボスに始まって、最近はメラミン、シアンなど、食品に添加または混入された化学物質がニュースになっています。殺虫剤や消毒剤が入っているのがニュースになるのはわかるとしても、いまひとつわからないのが、メラミンです。これは食器などに使われているメラミン樹脂のメラミンと同じで、樹脂の方はメラミンとホルムアルデヒドの化合物で、メラミンが溶け出すなどの危険性はないそうですが、メラミン単独だと人体に害があるとのこと。

疑問なのは、何故メラミンを添加するのかということです。ニュースを読んでも窒素の含有量を増やすためとしか書かれておらず、窒素の含有量を増やすとどうなるのか、どんな機関が食品の窒素の含有量を調べているのか、どのように公表されて、それによってどういう影響があるのか、そこら辺がよくわかりません。メラミン添加を企業や国家のモラルに帰するのではなく食品管理に係わる政策や管理システムなどの構造にまで踏み込まなければ、再発防止はできないでしょう。

と、そうこうしている内に、今度は日本の醤油からトルエンやヒ素が検出されたと中国政府が発表しました。事態は政治的な思惑も絡んで、食の安全という命題から逸れ、国家間や企業間の自己正当化合戦の様相を呈してきました。なんとも浅ましい限りですが、科学が無駄に進歩しなければ、こんな事態に陥ることはなかったかもしれません。消費者が食品に求めるレベルはずっと右肩上がりで高くなり、同時に消費者の食品に関する知識も右肩上がりに増加してきました。業者はコストを抑制して尚且つ消費者の要望に応える必要に迫られ、食品添加物を使うようになりました。腐らない食品の誕生です。そして消費者の方は添加物や遺伝子組み換えの危険性をマスコミから煽られ、無農薬や有機栽培の食品に走る人、遺伝子組み換えの原料を避ける人などが出現して、企業もその要望に応えたりしています。

生鮮食品は腐るものであること、乾物なども経年劣化するものであることを知って、食品自体を自分で確認してから使用したり食べたりする人が少なくなったと思います。食品添加物はどのような種類があって、どのような目的で使われているのか、何が危険で何が危険でないのかなど、誰も自分で調べようとはしません。面倒臭いことは他人任せで、食の安全も金で買おうとする風潮。そのくせ、値上げは困るという。そして何か事が起こるたびに、メーカーが悪い、政府や役所の管理が悪いと、何かにつけて他者を責めてばっかりです。それは仕方のないことかもしれませんが、テレビで「私たちには何が危険かわかりませんから、専門家にきちんと管理していただかないと」というおばちゃんは、専門家にきちんと管理させるためにはどうすればいいのか、どのような税金の使い方をしたら食の安全が守られるのか、よく考えるべきです。

杜撰な食品管理は自民党政権が代々行なってきたものです。安全性が高いと思われる食品は例外なく値段も高く、それを買える所得層ととても買えない所得層を作ったのも自民党コイズミ政権です。つまり貧乏人は危険な食品を食べて死ねばいいという社会を作ったのが自民党なのです。その自民党に投票したのはほかならぬ私たち日本国民です。

面倒くさいことは他人任せというのは選挙の投票でも一緒で、候補者の主張や背景、所属の政党やマニフェストなどを真剣に考えて投票する人は本当にごく一部でしょう。前回の総選挙で、ムードやイメージ、その場のノリでコイズミ自民党に投票した人たちは、結果的には貧乏人は危険な食品を食べて死ぬしかない社会を作った人たちです。そんな人たちに、食の安全を求めたり、メーカーや政府や役所を非難する権利はありません。国民が自分で調べたり勉強したり考えたりして選挙で投票するようにならない限りは、食の安全などいつまでたっても実現することはありません。