日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

乃南アサ「火のみち」

2008-09-27 | 読書
先週買った期待の本・乃南アサ著「火のみち」
土曜日に上巻を読み終え
日曜日「さあ・一気読み」
腰を据えて読み進んだものの、途中で怖くなり休憩
少し読んでは休憩、気を取り直してページをくり、また休憩。
1週間後の先ほどようやく読み終えた。



決して「怖い」ストーリーではない
30代のころ愛読していた高橋和巳の一連の著作を思い出して勝手に怖がっていただけ。
若くして亡くなった、当時人気作家の高橋和巳のストーリーは
上昇気流に乗った主人公がスッタモンダの揚げ句大成功し
その後ちょっとしたほころびから、一気に凋落していく決まった運び。

「火のみち」は文体も物語も似て非なものだが、ハラハラドキドキしながら読んだ。
戦後の引き揚げ者家族が貧乏のどん底から殺人を犯し
10年の刑期を終え、陶芸家として成功する。
恐れおののく心情の中、さあこれから一気挽回という時に
魔物に取り憑かれる。

中国の「汝窯」
滅びて無くなってしまった独特の青磁にはまりこみ再現の研究に没頭する。
青磁はかっての陶芸教室の仲間が展覧会を開いているが
手に取ると「青磁は魔物」と強く感じる。
透明で引き込まれそうな青に取り憑かれたら引き返せそうもない、と感じ入っていた。

そんな主観を抱えながら読むと
カッとなったら前後不覚になる主人公が
何時再度の「殺人」を犯すか?怖くなって進まなくなっていた。
読み終えると二度の殺人はなし・
もめ事も、暴力もなし(少しあり)

戦後の混乱と貧困のなかから、兄弟愛と自己愛
失意から成功へと続き
心の中の葛藤から開放される(?)ごくまっとうなストーリー展開。
今までの乃南アサ作品の少し軽めとは違った
ズッシリと重い作品だった。

時間を空けてもう一度読んでみたい1冊だ。

「汝窯」台北故宮博物館
コメント (2)
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