日々好日・いちよう

ちょっとした日々の一コマです

池井戸潤著「鉄の骨」

2012-01-18 | 読書
昨夜読み終えた長編小説の文庫本
池井戸潤「鉄の骨」講談社文庫

会社がヤバい。彼女とヤバい。
次の地下鉄工事・・
「談合」してもいいんですか?



年末ゼネコン談合の小説なので、つい買っておいた一冊。

中堅ゼネコンの若手現場監督が本社の業務課に引っ張られる。
現場でやりがいを見いだし、尊敬する所長にも巡り会えて
やる気満々ながら、不本意なこの転属
「談合」はやってはならないと知りつつ引きづり込まれ、
「天皇」と呼ばれる談合のトップに気に入られる。
恋人の銀行員に危ない橋を指摘されても
サラリーマンの身ではどうしようもなく誠心誠意対応をしてしまう。

恋人に疎まれ、会社の資金繰りはまずいらしいし
「談合」破りに仕事は持って行かれ
恋人とは疎遠になってしまう。
それでも不平不満は言わず、一生懸命に働く。

恋人の銀行のエリート同僚
ゼネコンの業務課の仲間達
田舎の両親
追い続ける東京地検

4つの場面が転がって、突き落とされる寸前に四方丸く納まる。

それにしても作者の女性達を見る目は暖かい。
同僚は心配してくれ
母親は病に倒れながらも子を気遣い
天皇の妻はやさしく
もう一人の母親も思慮深い

男どもにはシニカルな視線を投げ掛けつつも、女を粗末にしない
小説の向こうに作家の視線が見える。
初めて読む作家ながら好感度抜群!

もう20年も前の事だが
大手5社の1社で働く友人は「談合はなくてはならない」と言っていた。
工事費の叩きあいで、工事の質が落ちる、と
まさにこの物語そのままの言い分だった。
工事はなれ合いで高止まりしていたが
公共工事が激減し、このところは「談合」の噂も聞かれなくなった。

都内区役所の近くの喫茶店で打合せをしていたら
隣で公然と「談合」している現場にブチ当たった事があった。

民間では「適正な価格」で「適正工事」がず~~と前から当たり前の事。
価格が安いだけで仕事が取れるなんて不思議な世界だ。

業界、業界以外の人達にも読んでもらいたい1册でした。

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