本日の深海魚は、私のブログには初登場となるアシロ科魚類、その中のウミドジョウSirembo imberbis (Temminck and Schlegel)を紹介いたします。
ウミドジョウと呼ばれるのだから、鬚があるのかと思われるのですが、この魚には鬚がありません。では下顎から出ている細いのはなにか、と申しますと、これは腹鰭です。
この腹鰭は魚種の同定に使われる形質で、本種の場合1軟条しかないことで、よく似たヨロイイタチウオと区別可能です。ウミドジョウ属は日本産は1属1種、世界でも2種しか知られていない小さなグループです。いずれの種も西部太平洋の産です。
アシロ科魚類は世界で240種以上が知られ、世界中の亜寒帯、温帯、熱帯、亜熱帯の深い海に生息し、種によっては浅海に見られるものもいます。日本ではそのうちの33種が報告されています。その中には水深8000mと世界で最も深い場所から採集された魚種であるヨミノアシロAbyssobrotula galatheae Nielsenや、人間と同じくらい巨大化する(最大で200cm!)リング(もしくはキング)Genipterus blacodes (Foster) など、興味が尽きないものも多く含まれます。
もちろん食して美味なものも多く、ヨロイイタチウオは底曳網の主要対象ですし、先述したリングやその近縁種も重要な食用魚です。本種の場合は多く漁獲される種でありながら、小型種のためあまり利用価値は高いとはいえず、専ら練り製品の材料となっています。