煎茶の稽古に登場したのが「本草学」なるもの。
耳にしたことのない学問に躊躇しながらも興味を覚えた。
ひと言でいうなら「中国古来の植物を中心とする薬物学」となる。
西暦500年ごろ中国では、陶弘景のまとめた「神農本草」が初期文献ということである。
それを明の時代に、李時珍が「本草綱目」という題目で集大成し確立された学問のようである。
日本には平安時代に伝わり、江戸時代に全盛となり中国の薬物を日本産のもので当てる研究が行われ、
動物・鉱物にまでおよび、それが博物学・物産学に発展していった。
稽古に鹿のお軸が掛けてあった。茶席では、鹿といえば秋によく見かけ、
この時期になぜだろうというという疑問がわいていた。
鹿の画の上に文字(写真)が書かれてあった。鹿の種類や角の解説文がお軸の賛に。
鹿の角は、不老長寿の薬としては周知の事実である。この解説が、明の時代の「本草綱目」に記されてあるという。
こんな話を聞きながら、一茶庵に伝わる「沃茶法(よくちゃほう)」で春の夜を堪能した。
ちなみに沃茶法とは、急須に茶葉を入れ、急須の外側に湯をかけ急須を温め、茶葉を蒸らす。
そして急須の蓋を開け茶葉に湯を注ぐ。
喉を潤すほど飲むわけではないが、味の変化を楽しむお茶として五感を刺激する。
この感覚が体や心によき変化をもたらすのであろう。