尾道取材で楽しみにしていたのが「尾道三山」を巡ることだった。
JR山陽本線の北側に大宝山、愛宕山、そして浄土寺山が連なっている。その山々に真言宗系の本山である千光寺、西國寺、浄土寺の三山を中心に数キロ範囲に25カ寺が密集している。狭い地域にこれほどの寺院が密集しているのも珍しい。その昔は倍以上の寺院があったといわれている。
ここ尾道は昔から商業が栄え、貿易船や北前船などの瀬戸内海の一大荷受港として発展してきた。商業地として人が集まり、信仰心の篤い当時の人たち信仰の拠点になり、それに比例するかのごとく寺社が多かったといわれている。
尾道の町並み
千光寺の取材を終え、次に向かったのが「摩尼山 西國寺」。山裾の細いくねくねした路地を30分ほど歩いた。見えてきたのが西國寺の山門(仁王門)。ご存じの方も多いだろうが、この山門は西國寺のシンボルであるが、尾道観光では外せないスポットになっている。それは、2mほどの巨大な草鞋をはじめ数々の草鞋が仁王門を覆うかのごとく吊り下げられている。
この仁王門は江戸初期の1648年に建立されたもので、県の重要文化財に指定されている。
西國寺の仁王門と巨大草鞋
千光寺と同じように西國寺も「伝説」が多い寺院ある。仁王門の中に安置される阿吽の仁王像はその昔、真夜中にこの巨大な草鞋をはいて門の外に出て、悪さをする子どもを懲らしめて回る、という親にとっては都合のよい「草鞋伝説」が伝えられている。 “悪いことすると仁王さんがくるよ” という母の戒めの言葉になっていた。それが今でもまことしやかに伝わっているから不思議だ。実際は、寺院巡りの健脚を祈願して奉納されていることのようだ。
そんな話を聞くと、格子と金網で厳重に安置されている仁王様が今にも草鞋を履いて出てきそう気がしてくる。この仁王門をくぐり境内に入っていく。そして帰りにもまた格子の中を覗いて、どんな顔なのかを改めて確認した。
振り向きざまに仁王様の “気をつけて!” という声が聞こえたような気がした。
リポート&写真/ 渡邉雄二 Reported & Photos by Yuji Watanabe
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