尾道は「日本遺産」の町である。地域の歴史的魅力や特色を通じ、日本の文化・伝統を語るストーリーがあるということで認定されている。尾道は魅力あふれる有形・無形の数々の文化遺産があるというのが大きな理由である。
数々の文化遺産を形成する土台はやはり「地形」にあると思われる。船に乗って尾道水道を進むと、両岸が近くに見える。川をさかのぼっているかのような感覚になる。対岸の向島に挟まれた川のような水道で、いわば「海の川」と呼ばれている。
その海の川を山空の千光寺から眺めるたびに想像が膨らむ。数年前に訪ねた際、海の川は架空の守護神として親しまれている「龍」が棲んでいるかのような想いを抱き、いまにも水の中から飛び出し天空に昇る姿を想像した。
今回も同じような想いを抱いた。龍は天空から舞い降りるのではなく、海に棲む神様がこの海の川のどこかを棲み処に生きているような錯覚を覚える。それは島々からなる瀬戸内海の地形がそう思わせるのだろう。また、龍が水の神様として崇められているから尚さらだろう。そして、もう一つの決定的な理由として、筆者の龍好きが空想をより膨らませ楽しんでいるのである。
私の想像する龍は、京都建仁寺の襖絵に描かれているものがイメージされている。安土桃山時代の建仁寺復興にからんで海北友松(かいほうゆうしょう)が画いた日本を代表する水墨画で、礼の間を飾る八面の襖絵。この画は雲間から出現する龍が雲を従えながら飛び出している。この圧倒的な迫力をもつ龍と尾道水道がマッチングするのである。海から飛びだし尾道三山を取り巻きながら天空へ翔け昇る勇姿が目に映るのである。
令和四年の元旦の夜明けにかような空想ストーリーを描いてみた。新しい時代の始まりである。
そんな尾道を歴史と文化を切り口に紹介していきます。拙い文章ではあるがご愛読いただければ嬉しい限りです。
本年もよろしくお願い申し上げます。
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