「ボタン(牡丹)」という和名は、中国の花名「牡丹(ボウタン)」をほぼそのまま使用している。中国語読みの「牡(ボウ)」を日本語読みにしたものである。
牡丹は、絹のような花びらが幾重にも重なる優雅でふくよかな花姿が特徴で、中国では「花王」「花神」「富貴花」とも称されている。日本でも「富貴花」「百花王」「花王」「花神」「花中の王」「百花の王」などと呼ばれ、花の中でもこれほど多くの別称をもつ花も珍しいのでないだろうか。
桜が終わるころに色とりどりの大輪の花が咲き始める。牡丹と言えば美人の比喩に使われるほど彩り豊かで、花王の風格を感じさせる花である。その牡丹がモノトーンのイメージをもつ寺院などでよく見かけ、その取り合わせがなんとも絶妙な感がある。仏心に出会える寺院にこそ、この時季の風景には「牡丹」が花仏としてなくてはならないものかもしれない。
先日紹介した佛日寺の路地や建仁寺の法堂の周りには多種多様の牡丹が植えられている。法堂の窓や白壁を背景にした大輪が見事に映える。本尊である釈迦如来立像や天井画の双龍図がある法堂を百花の王が見守っているかのようだ。
リポート&写真/ 渡邉雄二
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