一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

ゐもり捕る少年つかみ慣れてをり

2011年05月14日 | 

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ゐもり捕る少年つかみ慣れてをり

                                  

十国峠から芦ノ湖へ向かう途中に、小さな池がある。浅瀬で少年が何かを捕っていた。私も靴を脱いで池に入ってみた。石がごろごろしていたが、ここの石はやや小粒で歩き易かった。

 

少年の手元を見ると、イモリがいた。イモリは、背がまっ黒、腹がまっ赤、動きが鈍重な両生類だ。その数が結構いる。少年がイモリを掴んでバケツへ投げ入れる。その迷いのない手つきが見事だった。

 

後で調べて分かったことだが、イモリの雄雌を焼いて粉末にしたものを「イモリの黒焼き」という。好きな相手にこっそり振りかけたり、食べ物や酒に入れて飲ませると、「惚れ薬」として効果があるらしい。こんな話は聞いたことがないから、きっと江戸時代以前の話だろうが、もしかすると少年は、小遣い稼ぎにイモリを捕っていたのかもしれない。ある筋では、漢方として珍重されているらしい。

 

あれから、もう二十年以上経った。よく考えてみると、その時の少年は、既に三十歳を越えているはずで、その少年が父親となり、再び子供を連れて池を訪れる年齢になっている。そう思うと私はうきうき楽しくなってきて、近いうちその池を訪ねてみようと思っている。

 

コメント
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