初夏の旅赤旗を読む老夫婦 炎火
半世紀経てクラス会山笑う
薔薇の呼気重たく深く匂うなり 薪
蚕豆や優しき女の塩加減
万緑やこの仮の世の仮の今 章子
生に飽き世にも飽いたり五月富士
夏近しふくらみ初めし孫の胸 稱子
母の日の吾がために買う花の束
志なくて老いたり蟇眠る 正太
夕ざくら散り急がずに散っている
訳知りの犬の眼差し新樹光 鼓夢
緑陰に薄目あけそな地蔵かな
この大気朝、午、夜無く五月なり 侠心
花に酔ひ香に惑わされ薔薇の庭
病むバラを切る決意らしきもの 遊石
赤き口青空に向け時鳥
ふわふわのうぶ毛残して巣立ちけり 歩智
雲間より金環日食若葉寒
休み窯早く来い来いホトトギス 洋子
新緑のうねりが登る頂きへ
代掻き田小鷺たたずむお昼時 空白
薄墨の雲に守られ陽のリング
湯上がりの香に切々とほととぎす 雲水
会う人のみな美しき晶子の忌