「夫23回忌」と前書きのあるこの句、確かに20余年も経つと、夫への思いや感情は変わってくるだろう。問題は、「捨てられしや」と思うようになるその前は、どう思っていたのだろう、ということ。
何歳くらいだったか、事故か病気か、闘病生活の長さなどによっても、死者に対する思いは様々なはずで、作者にしか分からない。
あえて想像すれば、妻子を残して先に逝かざるをえない夫は、無念を抱えていたのかもしれない。つまり、愛された記憶、又は愛されていたという確証が、20余年の時間の経過と共に、次第に薄れていったのではないか。
「全くしょうがない人ねえ。あなた、あの世で遊び呆けているんじゃないの」などと呟きながら、悲しみも可笑しさに変わり、達観の境地に辿り着いたとも言えるだろう。
クサギ(臭木) シソ科 落葉小高木