波の音にうたた寝せんや砂日傘 洋子
苧殻焚くひと刷毛の雲流れゆく
口中に味無きガムや蝉の羽化 薪
海原やカーソルのごと白帆立つ
浪江町野性化の豚蝉しぐれ 炎火
立葵大きな雲の下に海
豊穣の稲のうねりや風走る 鼓夢
人絶えし高原の駅秋茜
虫一つ闇夜の底の底に啼く 遊石
流れ星君が微笑の一刹那
秋の虹明治の色の赤煉瓦 章子
稲妻に万丈の闇あばかるる
切っ先のような月ある夕べかな 稱子
撫子や年取ることは屁でもなし
捨てられた串に群がり蟻生きる 空白
炎昼や説明つかぬ一瞬の静
酔っぱらいと猫と豚に月下美人 雲水
撫子や一家揃って深夜族