この句は、実体が希薄だから、現実的な想像がしにくい。例えば虫は、どんな虫だろうか。底の底とは、一体どんな所だろうか。
曖昧だからであろうか、私は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」の中の地獄を想像してしまった。闇は、地獄に落ちた罪人が犇めく血の海地獄である。罪人たちは、疲れ果てて声を出す気力もない中で、一人わめいているのが犍陀多(けんだた)である。句の実体が希薄だからこそ、こういう非現実な想像がしやすくなるのだろう。
そして「底の底」という繰り返しによって、作者の憂鬱な悲観的な気分からこの句が生まれたであろうことも、容易に想像される。
キバナコスモス(キク科コスモス属の 多年草または一年草)