一韶の俳句ブログ

俳句を詠うのは自然・私・家族・夢や希望・社会など。読む時はどんな解釈が浮かぶか読み手の経験や生活によって様々

308   火取虫快気祝いの師を囲む

2011年07月16日 | 

(ひとりむし/かいきいわいのしをかこむ)

 

火取虫とは、夏の灯火に集まって来る蛾などのことである。この句を直訳すると、火取虫が快気祝いの師を囲んでいる。つまり師が火取虫を集める電灯であり、生徒達が火取虫なのである。

 

時を経てもことあるごとに集い、今日は先生の快気祝いの席である。その集まりの実に和やかな雰囲気が感じられる。御高齢になった今でも慕われ続ける先生の人間性や表情、その昔先生を困らせた生徒達の悪童振りまで想像される。

 

自分達生徒を火取虫に例えた諧謔が、絶妙な季語の斡旋。

 

クチナシ(梔子)

 

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307   耳鳴りと紛うにいにい鳴き出だす

2011年07月15日 | 

(みみなりとまごうニイニイなきいだす)

 

ヒグラシと共に、ニイニイ蝉も鳴き出した。蝉は、臭くはないが、カメムシ属だそうだ。最近ニイニイ蝉は、少し減ったような気がする。

 

 たまにだが、静けさの中にいると、ニイニイ蝉の声のような耳鳴りがする。決して不愉快なものではないから、これを耳鳴りと言っていいのか・・・・・・・・そこで調べてみたら、生理的耳鳴りであり病気ではないそうだ。

 

 夏以外は、耳鳴りと断定できるが、夏はニイニイ蝉かどうか確かめに屋外に出ねばならない。そして、ニイニイが鳴いているのを確認したのだ。

 

 深夜だが、また耳鳴りのニイニイが鳴き出した。

 

セージ、薬用サルビアとも

 

 

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306   涼しさや鐘をはなるるかねの声

2011年07月14日 | 

(すずしさやかねをはなるるかねのこえ)

 

「鐘をはなるる鐘の声」とは、よく気付いたものだ。音は発生源の鐘を離れ、空気を媒体として移動し、人の耳に届く。秒速340メートルの音の世界。

 

音が鐘を離れるのは、一瞬である。蕪村に聞こえているのは鐘を離れた音だ。つまり、「鐘をはなれし」と過去形にするべきなのだが、現在形にしたということは、鐘を直に見ている、つまり鐘を撞いていたか、又は至近にいたのであろう。

 

音とは言わず、鐘の声と言っているのは、平家物語の「祇園精舎の鐘の声」を踏まえているのだろうか。とするとこの句のテーマは「諸行無常」かもしれない。

 

さて、もう一つ問題になるのは、「涼しさや」である。たまたま夏の涼しい時間帯だったのであろうが、春夏秋冬どのような季語でも合ってしまうから蕪村は困ったはずだ。そんな蕪村の困った顔が浮かんで、更にこの句が味わい深く感じてしまう。

 

キョウチクトウ(夾竹桃)

 

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305   ひぐらしが一番好きなり窯火燃ゆ

2011年07月13日 | 

(ひぐらしが いちばんすきなり かまびもゆ)

 

 

今日は、ヒグラシの初鳴きの日だ。345分。

 

 我が家周辺で、一番早く鳴く蝉は、ヒグラシ(蜩)である。秋の季語になっているが、今鳴き始めるのだからしょうがない。

 

  ヒグラシは、「日暮」とも書かれるが、早朝や夕暮れによく鳴き、日を暮れさせることからの表記のようだ。又、鳴き声から「カナカナ」とも言われる。

 

  休みなく続ける窯焚きは、ヒグラシを聞くには絶好の機会。近くに、遠くに、美しく、物悲しく、そして涼しげに鳴くのである。

鳴き止みし初蜩に耳澄ます

 

 

  しかしながら、この時期の窯焚きは、実は暑くて最悪なのである。

 カンナ、花カンナとも

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304   一六七未央柳の蕊の数

2011年07月12日 | 

(167 びようやなぎの しべのかず)

 

初めて未央柳(美容柳)を見た時の感動は、忘れられない。長い雄蕊が特に印象的だった。そこで、当然思うのが、雄蕊の数。「一体、何本あるのだろうか」そして、数えたら167本あったのだ。

 

 

「なんだ、それだけのこと?」

 

そう、それだけのことなんです。俳句と言えないような俳句ですが、しかし、私にとっては、かけがえのない経験として、死ぬまで脳裏に記憶されていることでしょう。そして、この句を見るたびに、鮮明な映像が彷彿としてくることでしょう。

 

ノブドウ(野葡萄)の花

 

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303   今年また咲かざる合歓を脅しけり

2011年07月11日 | 

(ことしまた さかざるねむを おどしけり)

 

10年ほど前、草刈りをしていて、高さ1メートル足らずのかわいい合歓(ねむ)の木に気付いた。それ以来毎年、絡む蔦を取ったり、肥料を撒いたりしていたが、なかなか咲かずにいた。3年ほど前には、高さ4メートル、直径10センチにもなったので、「咲かないと切るぞ」と脅したのだ。

 

 そして、ようやくわずかだったがその合歓の花が咲いた。「たまたま。そういう時期が来ただけ」と冷ややかに言う人もいるが、私は「脅しが効いた」と確信している。

 

 「来年は、もっと沢山咲いてくれよ」と語りかけるのだが、合歓にとっては迷惑千万かもしれない。という訳で10年越しの合歓問題は一件落着であるが、枇杷や富士桜、箱根山椒バラなど脅さねばならない草木はまだあり、楽しみは尽きない。

 

合歓の花脅しが効きて咲きにけり

 

 

ネムノキ(合歓の木) 

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302   ほうたるや肩に乗る手のあたたかし

2011年07月10日 | 

(ほうたるや かたにのるての あたたかし)

 

俳句を詠う句材には、自然・社会・人間・自分・人生観など様々ありますが、たまには恋愛の句も作ったらいかがですか。

 

もう、そんな齢ではない?

 

「俳句は、過去のことでもいいんですよ。若かりし頃を懐かしみ、さも今あるように作ったらいいのです。」などと、日頃皆さんに言っている手前、作ってみました。

 

さあ、皆さんも恋愛の句を作ってみて下さい。中には現在進行形の方もいるかもしれませんね。そうなら、なお結構です。

 

ヒメヒオウギスイセン(姫檜扇水仙)

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301   姫沙羅やピカソツグジに辟易す

2011年07月09日 | 

(ひめしゃらや ピカソツグジに へきえきす)

 

 箱根のポーラ美術館は、オープンして9年経つ比較的新しい美術館である。そこで、パブロ・ピカソとフジタ・ツグジの絵を見たのであるが、この句の「辟易」には、展示の絵画だけではなく、美術館の建築物など全体から受けた印象が含まれている。

 

 超近代的ともいえるガラス張りの建物に、不安や違和感を感じるのは、私だけだろうか?全く落ち着かないのだ。

 

 ピカソの歪んだ顔や、ツグジの病的な顔にしても、過去に一度もいいと思ったことがない。唯一良かったのは、建物を囲んでいる、大木の姫沙羅林だった。ああ、この美術館のために何十本切られたのだろう。

 

ヤマユリ(山百合)

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300   おわかれはえきのベンチでアイスクリーム   さくら   

2011年07月08日 | 

このく、ひらがなとカタカナだけにしたのは、たぶんおわかれしたおあいては、かわいいおまごさんだったからでしょう。たぶんようちえんか、ほいくえんくらいのにゅうがくまえのおまごさんなのでしょう。

 

そんなこと、ひとこともいっていないのに、そう、そうぞうさせるところが、うまいですね。しもごの「アイスクリーム」のじあまりもすてきです。

 

おばあちゃまのところへ、あそびにきたおまごさんを、えきまでおみおくりしたのでしょうね。ないしん、ちょっぴりほっとして、ちょっぴりさみしい、おわかれのアイスクリームのおあじは、いかがでしたか?

 

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299   七夕竹乱筆乱文誤字脱字  薪

2011年07月07日 | 

(たなばただけ/らんぴつらんぶん/ごじだつじ)

 

 七夕は、五節句の一つだが、本来は旧暦で行うべきものだ。新暦では梅雨の真っ最中であり、織姫様と牽牛君の逢引も雲に隠れてほとんど見ることができない。

 

 旧暦ならば、ほぼ一月遅れの八月初旬だから、梅雨が明けていて晴天が多い。ちなみに今年の七夕は、新暦の8月6日である。

 

掲句、漢字だけの句だが、これは幼稚園の七夕だろうか。それともお宅の七夕?いづれにしても、大人数のようだ。

 

笹に吊るされた短冊の文字が、どんなに出鱈目でも「気にしない、気にしない」まず、書くことが大事、書く楽しさが大事なんですよね。

 

 

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298   日傘して汽笛の音の次を待つ

2011年07月06日 | 

日傘して汽笛の音の次を待つ    湘子 

 

 藤田湘子は、小田原生まれ。小田原文学館に句碑がある。秋桜子に師事し、後に[]を主宰し、一日十句を提唱した。

 

掲句、なんとも読者に想像を膨らませる句ではないか。日傘だから、待っているのは当然女性だろう。もしかすると、その傘に作者(男)も入っているのだろうか。

 

汽笛は、船かそれとも汽車か・・・・・どうして、次の音を待つのか?何のために?・・・・・これは、さっぱり分からない。・・・・・分からないから面白い。

 

 

ムラサキシキブ(紫式部)

 

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297   源平を今に語れる蔓かな

2011年07月05日 | 

(げんぺいを いまにかたれる かずらかな) 

 

 源平木(げんぺいぼく)別名源平蔓(げんぺいかずら)という西アフリカ原産の、常緑つる性小低木がある。白い萼に赤い花冠が美しい。

 

紅白歌合戦とか運動会でも紅白戦などと言うが、これは源氏と平氏(平家)の合戦が由来らしい。しかし、紅白のどちらが源氏で、どちらが平家か、知らなかった。きっと降参する時に白旗を上げるから、滅ぼされた平家が白ではないの・・・・とんでもない、逆でした。

 

 白い萼(源氏)が、赤い花(平家)を包み込んでいるのです。源平木とは、誰がいつ頃命名したのだろうか。

 

シモツケ(下野)

 

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296   義援箱少女の胸に初つばめ   正太  

2011年07月04日 | 

 

この句、義援箱少女の胸に / 初つばめ、 / )で切れば意味は分かるけど、どうして上下をひっくり返したの。初つばめ少女の胸に義援箱でいいんじゃないの。

 

ええ、最初はそうだったんだけど、ひっくり返した方が面白い、と思ったんです。(作者)

 

それはそれとして、「初燕」と「義援箱」の取り合わせは、とてもいい。東日本震災の復興が希望に溢れている感じがするし、「少女」からは若人の活躍が想像される。

 

 

コマツナギ(駒繋ぎ)

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295   蟻走る週休二日の人の世を   野里女

2011年07月03日 | 

 イソップ寓話のキリギリスではないが、人間は蟻に忠告されているんです。蟻が言うには、

 

ほら、言ったこっちゃない。人間の文明だ、知恵だ、科学だと傲慢になって、便利だ快適だなどと様々なものを作ったはいいが、結局ゴミや毒物に囲まれてしまい、生きていけなくなりそうじゃないか。

 

『風の谷のナウシカ』のように、大量のゴミだらけの世界で暮らすようになりたいの?今のように贅沢で自分勝手な生活は、早くお止めなさい。

 

石油やガスも有限だし、鉄などの金属だって有限、大体あんた達人間の使っている物の原料は、ほとんど有限だよ。いつか必ず枯渇する。今のことばかりでなく、未来を生きる生き物のことも考えなさいよ、お願いだから。

 

本当の暮らしがどんなものか、ようく考えて御覧なさい。つい、150年ほど前まであなたたちは、毒物やゴミのない理想的な暮らしをしていたんですよ。

 

 

 オオバギボシ(大葉擬宝珠)

 

 

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294   待たされて日傘くるくる待たされて  稱子

2011年07月02日 | 

 

「上下の「待たされて」が、ちょっとくどいんじゃない?なんか、待ちくたびれてイライラしている感じがするんだけど・・・・・

 

 例えば、愛されて日傘くるくる待たされて

なんてすると、嬉しくて待っている感じになるんじゃないか。・・・・・

 

そうかなあ、私は「愛されて」と言ってしまう方が芸がないと思います。「待たされての繰り返し」には、愛されてが内蔵されていると、読んで欲しいのですが・・・・・(作者)

 

 さて、あなたはどう思いますか?

 

ハンゲショウ(半夏生)

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